031 男用も女用も無理
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。父親は大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部の頃から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹。
応接室のモテない薄毛の男性が27歳天羽生颯だという速報は高校生男子を震撼させた。(なんだこの文章は/作者)
「オレ、カラーリングやめようかな……。毛根が心配になってきた」
風晴から話を聞いた桂木は 頭の天辺を確認している。
「人生って華やかな時間は儚いものなんですね……」
神宮寺は1秒でも早く彼女が欲しいと願った。
「学校に入り直すとか植毛するとか、若いならまだやり直しだって…………。いや、でも……もう夢や希望が絶えているんだろうな…………」
秀一はおいそれと彼の人生を評することを控えた。
頭が良くて生活が安定していて美人の彼女がいる僕が、彼に何が言えるだろう。超絶美人の女神みたいな彼女のいるこの僕が…………!!
聖のことは正火斗と水樹がほぼトークタイムが無いので見てくれることになっていると風晴は説明した。
そして、時刻は夜9時となり──10分間のトークタイムがそれぞれに始まる────!
正火斗は聖についていたが、ここで小さな問題が起こっていた。
聖はトイレに行きたくなったのだ。が、一階の大型トイレはイベント来客用の作りで男用と女用が明確に分かれている。今の女装して振袖姿の彼は、どちらにも入れない。
階段を上がる必要がある──正火斗は聖をまた抱き上げたが
「きゃっ♡」「まぁ!」
とあちこちから声が上がった。そこで慌てて、座っていた水樹にも声をかける──
「一緒に来てくれ、"透子"」
と。
水樹はすぐに状況を察してついて来た。
3人は大広間を出て、廊下を進み二階への階段を上がる。その頃にはもう人はいなかった。水樹はクスクスと笑い出した。
「ああして2人だけで居なくなったら、もう恋人も婚約も超えて結婚させられそう──この村なら」
水樹の言葉に正火斗は
「やめてくれ。シャレにならない」
と真剣にゾッとして言った。
そうして2階の自分の部屋の前まで行き、鍵で扉を開けた。扉を開け放した時、自分の部屋に思わぬものがいて正火斗はギョッとした。
水樹が声を上げる。
「ラブッキーくん!」
そう、そこには明らかに白吹村ゆるキャラの着ぐるみが置かれていた。
頭部と胴部が少し外れて角度がヤバいので、基本可愛くてもドキリとさせられる。
そこで正火斗は気がついた。
「そうだ。今日と明日はこの部屋は理人さんが使うんだった」
彼の方が、今は着ぐるみから出てシャワーやトイレを使っているのかもしれない。
正火斗は扉を閉めて鍵をかけた。
「3階に行こうか……」
彼は聖に尋ねたが、水樹が
「私の部屋のトイレ貸すわよ。どうぞ、聖」
と言ってすでに隣の自分の部屋を解錠してくれていた。
トイレに聖は入って行き、兄妹は廊下で待った。
待つ間に水樹は、透子から聞いた──透子の曽祖父と曽祖母のそれぞれ好きになった者が、吹雪の翌朝 消えていた話を兄にした。そして透子の母親の高校の時の恋人はいまだに行方不明なのだと。
正火斗は黙って聞いていたが最後に言った。
「曽祖父と曽祖母についてはかなり昔だから無理かも知れないが……透子さんのお母さんの高校時代なら25年経っていないんじゃないか? 調べたら誰かに話は聞けるかもしれないな」
その時──隣の部屋の扉が開いてラブッキーくんが丸い顔を出したので、正火斗と水樹はギョッとした。
「君達、下に行くとき一緒に行こう。少し休みに来たんだが、階段降りるのが1人だと命がけだと気づいた」
理人の声が言った。正火斗は呆れ気味だ。
「さっきみたいに脱いでいたら良かったのに。持って降りるのを手伝いますから」
だが理人は
「さっきも脱いではいない。ああして少し頭をずらして休むと楽なんだ。でもあの姿で休んでいるのは、ラブッキーとしては見られてはいけなかったんだ。なのに……」
とブツブツと言い
「さっき君達見てしまっただろう────!!」
と怒った。
「くだらないこと言っていると階段で放置しますよ」
正火斗もやり返す。
水樹はやり取りが馬鹿らしくてどうしたものかと思っていた。すると、背後の部屋の中で音が聞こえた。
「聖?」
水樹は扉を開けた。
聖は部屋の方に出て来ていて、着崩れた着物と格闘していた。
「聖、聖、いいよ、やってあげる。黙って立っていて」
水樹は慌てて部屋に入る。そして、正火斗も呼ぶ。
「兄さんも手伝って。私よりは詳しいでしょう?──着物が着崩れた聖と大広間に戻ったら、本当に結婚話になっちゃうんじゃないの?」
青くなった正火斗を見ても、妹は更に付け足した。
「私は結構……良いけど。ゆくゆく聖と秀一と家族っていうのも……!!!」
「冗談じゃない!! どっちもだ!!」
兄の胸中は果てしなく複雑だった。
聖の着物を直した後は、なんだかんだとラブッキーくんをフォローしつつ 4人は1階に降りた。




