030 それぞれの相手3
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。父親は大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部の頃から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹。
○斉藤豊子・華蔵家女中頭。
○山原海・華蔵家料理人。
大道正火斗は聖を大広間の椅子に下ろしてからも、彼の傍にいて豊子が捻挫の治療をしてくれるのを見守った。やがて正火斗も椅子に腰を下ろすと、すぐにも1人の30代くらいの女性が駆け寄ってきた。
「華蔵様、今夜は私は大当たりでした。素敵なものをありがとうございます。もう、最高のクリスマスです!!」
すぐにも浅倉奏衣に用意したブレスレットを獲得したんだと分かる。華美ではないが人気ブランドにしたから、女性は価値があると見抜いたのだろう。
理人として正火斗もただお辞儀をし、女性も会う時間を指定した包装紙などは渡していかなかった。
しかしスキップしそうな足取りで戻っていく。──女性は賢い生き物だと正火斗は思った。
目の前のテーブルには椎名が置いていってくれた真淵聖からのクリスマスプレゼントがある。包装紙を解いていると彼が向かい側から
「箱だけ大きくて……ごめんなさい。……正火斗に渡るってことになったから……中身を変えた……」
と言ってきた。正火斗は興味が湧いた。そうやってまで彼が贈ってくれるものは何だろう?
中はクリスマスカードだった。カードを開くと冬の街が立ち上がり、切り抜かれた窓から家の中の飾られたツリーと幸せな4人家族が見える──しかけの付いたクリスマスカード。
上部に電話番号と住所が書かれていた。
────聖の?そう思って彼に向くと──
「風晴の番号と……新しい住所」
目を合わせない彼のその言葉は──予測不可能の打撃を正火斗に与えた。彼は確かに無防備に殴られたような衝撃を受けた。
聖は目を合わせて、慌てたような早口で言葉を発した。聖にしては珍しい。
「僕の番号は水樹さんが知ってるから……風晴のは正火斗が知っていたらいいかなぁって……それだけ……」
正火斗が反応する前に、別方向から声がかかった。
「聖、足の具合はどう?」
水樹だった。聖は
「……あまり歩けない」
と小さく答えた。
「そっか。……ね? プレゼント開けて見ようよ」
言われて聖はクリスマスプレゼントを開封したが、中身に彼はキョトンとしていた。
いわゆるアクリルスタンドだった──水樹はいくらかは見覚えがあった。多分有名バーチャルアイドルのペットのキャラクターだ。
だが、幻獣でアルパカとボルゾイとシフゾウをたして無理やり可愛い感じにしたような外見なのだ。
聖は多分何をもらったのかすら分からず、困惑している。
水樹は聖が気の毒になった。
足は怪我しちゃうし、プレゼントは わけのわからないもの。みんなのために振袖だって着たのに、こんな聖夜ってある!?
────そうだ!!
せめてもと思って水樹はさっきのプレゼントの箱から果物ナイフを取り出した。
「聖、良かったらコレを受け取ってくれない? 柄がとってもキレイだし。──ホラ! 前にナイフを私があげた時には無くしちゃったって言ってたじゃない。だから……」
水樹はここで"山原海"からのアンティーク果物ナイフを聖に譲るのは全く悪くない気がした。
聖にとって、理解できるプレゼントができる。
それから、後で山原海が自分のプレゼントは聖が取ったのだと思うことも──残酷なことではないはずだ。
山原は聖が男の子だと知っている。だから、当然会いたい時間指定の包装紙は無かったのだと納得もしてくれるだろう。
山原海の姿が傍に無いことだけは確認して、聖に"折りたたみ果物ナイフ"を渡した。柄は彫り物とブラックパールが埋め込まれている。カッコイイ感じもあるからか、聖もすんなり受け取り
「ありがとう」
と微笑んだ。水樹も嬉しくなった。
そこに
「あ、ありがとう……。僕のプレゼントを受け取ってくれて……」
と、黒のトレーナーにベージュのチノパンのスタイル。頭頂部は髪が薄く、やや太り気味で背は低い男性が現れた。
水樹は本能的に警戒した。正火斗は見覚えがある気がした。どこで?
「君、足を怪我して動けなそうだから僕が来るよ。9時50分に──お願いします!」
彼はそう1人で言い切り、頭を下げる。薄くなった頭頂部の地肌が見えた。それから、顔を赤らめながら去っていった。
足を怪我して動けなそうな聖は多分状況をまだ分かっていない。
風晴があの男性を目で追いながら大広間を突っ切って駆けて来たが──時すでに遅し。男性の姿は人混みに消えていた。
風晴は正火斗に言った。
「あの男性、応接室に来たヤツだ……!!」
正火斗は応接室の廊下ですれ違ったことを思い出した。その前には中で 叫んでいたようだった。
「モテ無いこといろいろオレ達に わめいていたんだ。女の子と話す機会は……このゲームしかないって。引きこもり気味なのか"家から少しは出て働け"って母親にも心配されてるって……」
「そういう人に聖狙われちゃったの!?」
水樹は取り乱している。正火斗は理人として
「"透子"落ちついて。まずはちゃんと事態を把握をしよう。────彼の名前は?」
全員がアクリルスタンドの箱を包んでいた赤い包装紙に書かれた名前を見る。
風晴、正火斗、水樹は驚愕した…………!
天羽生 颯 27歳
結構若い!そして無駄にカッコイイ名前……!!!!!!
正火斗は心底思った。
──────ややっこしい!




