029 それぞれの相手2
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。父親は大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部の頃から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹。
○山原海・華蔵家料理人。
大道水樹のプレゼントは神宮寺に渡っていて、水樹はなんだか申し訳なくなっていた。だから神宮寺に若い女性が包装紙を渡しに行き、彼が瞳を輝かせているのを見て安心した。
水樹自身は意外な相手のプレゼントを受け取ってしまっていた────"山原海"である。華蔵家の料理長だ!
使用人も事前エントリーすれば独身者は参加できる。まだ独り身だったのだ。
……ごめんなさい
と水樹はそっと包装紙を裏側にしてたたみ、リボンもその中に入れて隠した。会おうとは到底思わない。微妙な距離感での生活が続くのだから、できれば自分がプレゼントを受け取ったとそもそも知られたくもない。
それでもプレゼントの中身を確認すると、なんと中身は柄の装飾された"折りたたみ果物ナイフ"だった。
思わず笑いそうになった。
……だって本当に……もう私にはいらないものばかりだ
浅倉奏衣のプレゼントは────安西秀一に渡っていた。
ホッとした。聖のプレゼントの横に置けば、誰かミステリー同好会メンバーが受け取ってくれるのではないかと期待していたのだ。秀一には後で謝って返してもらおう。
奏衣自身は白吹村の高校生男子のプレゼントをもらっていた。なんとラブッキーくんのぬいぐるみだった!やはり栗を持つ雪だるまのラブッキーくんは可愛らしく、浅倉は普通に嬉しくなった。
会ってみようかな。……お礼を言うだけでも。
彼女は包装紙に書き込む時間を考え込んだ。
椎名美鈴には白吹村の20代の男性から、会いたい時間の書かれた包装紙がすぐに渡された。椎名のプレゼントはスノードームだった。球体の中にツリーやサンタやトナカイがいて、ひっくり返して戻すとキラキラと白い飾りが舞う。
眼鏡をかけたその男性は優しそうで、白吹村で個人経営の喫茶店をしているそうだ。
椎名は冷静に考えていた。
これを機会に会っておいてもいいかもしれない。
喫茶店はいろいろな人が来て話をする──情報の集まる場所だ。もっとこの土地のことを調べる必要があるかもしれないのだから。
椎名自身は桜田風晴の"紅白饅頭"を獲得していた。椎名は嬉しかった。これが欲しかったのだ……!
そして思った──
やっぱり桜田くんにはちゃんと言わないと…………
椎名美鈴は9時から10時までの間に2人の人間に会うことを決めた。
桜田風晴は椎名美鈴と、伊吹村の高校1年生の女子と、そして伊吹村の中年女性の3人から──光栄なことに包装紙を渡された。
3人の指定時間はたまたま、バラバラに分かれていた。
だから風晴は会おうと計画すれば最大で4人もの女性と会って話せることにはなる!!ハッピークリスマス!
自分が取ってきたプレゼントはフェルトで作られたクリスマスケーキだった。
パッと見て華やかで可愛くてセンスが良い。苺やカットしたメロン、生クリームが色鮮やかに作られていて、ピンクや紫のビーズも飾られていた。チョコレートプレートには白い糸でメリークリスマスの刺繍がされている。
いい物をもらったなぁと思ったし、作った人はどんな女の子なんだろうとも思う。
────だが会うことには迷いがあった。
ここでは"鳳翔院学園の生徒"として会うことになる。……偽ることになるのに躊躇いがあった。
風晴はよく考えて、会う人間を決めた。
椎名美鈴には会おうと思っていた。
…………なんとなく……気づいていた。椎名の言動について。彼女の話を自分が聞いた方がいい気がしていた……なんとなく、だが。




