028 それぞれの相手1
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。父親は大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部の頃から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹。
水樹と浅倉、椎名と聖が2階から1階への階段を降りて来たとき──それは起こった。
着物の裾を踏んだ聖がバランスを崩して階段から落ちた!
3段ほどの高さだったが、聖は踊り場に叩きつけられた。
「聖!!」
「大丈夫ですか!?」
周りには他の女の子達もいてザワザワと騒然としている。
横たわったまま聖は足首を抑えた。ぶつけた肩よりもそっちがズキズキとやんだ。裾を踏んだ時にひねっていた。
「動かさない方がいい」
落ち着いた声がして、水樹や浅倉が下を見ると緑のプレゼントの箱を持った正火斗が上がって来るところだった。
「兄さん……!」
と呼んだ口調が、気が動転した"水樹"のものであると 正火斗はすぐに気づいた。
「"透子"、大丈夫だから。落ち着きなさい」
妹にわざとそう声をかけ聖の足首を触って確かめる。
骨には異常はなさそうだ。
正火斗は気づいていなかったが、彼が聖の足首に触った時点で周囲から女性達の溜め息は もれていた。
彼が聖の背中と膝の裏に両手を回して抱き上げた時には キャアと短い悲鳴が上がったが、無論そのまま聖を かかえて降りる。
振袖の聖は痛みで縮こまっていて胸板に寄り添う形におさまり、彼はすぐ近くにある苦しんでいる少女の顔に労わる眼差しを送っている。
──という絵面が完璧に完成されていた!!
もはや誰も立ち入ることの出来ないビジュアルの世界!!
正火斗は一度だけ振り返ると
「プレゼントの箱を頼むよ」
と水樹に言った。
水樹はうなずいた。
椎名が聖の落としたプレゼントは拾ってくれて、正火斗の後をもう ついていっていた。
水樹は正火斗の置いて行ったプレゼントを手に取る。
正火斗と聖がいなくなると、集まっていた人々もほとんど消えていた。みんな大広間に向かっていた。(もしくは正火斗&聖を追ったものと思われる)
大広間入り口ではプレゼントを一つ持っていることが確認され、服に貼れるネームシートを渡される。
いよいよ、誰が誰のプレゼントを手にしたのか、誰にプレゼントを受けとられたのかが──判明する!!
安西秀一が手にしたプレゼントは、正火斗が持っていったプレゼントの横にあったものだ。つまり真淵聖からの可能性がある。
慎重に包装紙をといて長方形の箱を開けると、秀一には名前を見なくても誰が誰に受け取って欲しくて置いたプレゼントなのかが察しがついた。
考えてみると、聖のプレゼントの横にあった事情も理由すらも見当はつく。
──プレゼントの中身は手編みの手袋だ。
彼は自分のすべきことを決めた。
秀一の持ってきたプレゼントはツリー形のアロマキャンドルだった。水樹と秀一はクリスマス・イヴに会えることがお互いへのプレゼントだと話し合っていた。
キャンドルは本当は久しぶりに会う風晴と聖へという形で2個持って来ていたのだ。
その中の一つをゲームに出していた。
受け取ったのは白吹村の女子高生だった。奇跡的に同学年。だが会う時間を書かれた包装紙を渡されても、自分の気持ちは決まっていた。
彼はただ白吹村の女子高生の背中に心の中で謝った────"会いに行く気がなくてすみません"と。
神宮寺清雅は落ち込んでいた。
自分の獲得したプレゼントはなんと大道水樹のものだった。可愛いらしい星形スタンドに乗った電池式キャンドル。スイッチを入れると灯りがつき、7色に変わる。
最悪、水樹がシングルの時ならまだ嬉しかっただろう。今 毎日安西部長との夫婦漫才みたいなのを見せられているのに、なんで僕はよりにもよってそんな女性のプレゼントを獲得したのか……。
しかし、包装紙を届けに来てくれた女性に舞い上がった!!
20才の秋月未来さん──背が低めで愛らしいくて、言葉使いが丁寧で──大丈夫です!4歳年上は全然ストライクゾーンです!待ってて下さい!! 聖夜を共に過ごしましょう!!
桂木慎のワイヤレスイヤホンは白吹村の聖歌隊の一員の女子高生に貰われていた。
会いたい時間を書いた包装紙を渡しに来た時には 友達5人も一緒で、かなりキャーキャー騒がれた──人気者!!!
桂木自身のとった小さな長方形のクリスマスプレゼントは腕時計だった。シンプルなデザインだが質が良いのはなんとなく分かる。
残念だったのは、時計の針が止まっていることだった。 まあ、後で電池を入れてもらったら動くだろう。
名前を探すと、包装紙の端にあった。
────"林有里子"




