027 厨房にひそむもの
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。父親は大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部の頃から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
「やったぁ!! このプレゼントが獲れました!!」
3階では、椎名美鈴の喜びの声があがっていた。
後輩のその様子に、水樹と浅倉は顔を見合わせた。
「椎名、好きな人いるのかなぁ、やっぱり」
浅倉は言った。水樹は
「前に聞いた時はいないって言ってたけどなぁ……」
と答えた。が、浅倉に
「水樹さん、水樹さん、多分好きな人がいてもね、あなたに教えたい女子はいなかったから──私以外には、そうそう」
言われて水樹は納得した。
「確かに」
水樹は夏休みに幼馴染みの秀一と両想いになる前は、友達の彼氏を奪う女として有名だったのだ。──様々な事情があって。
"魔性のプリンセス"大道水樹がすっかり落ち着いたので、地味でガリ勉メガネの秀一は株を上げている。反対に、すぐに別れるだろうと見なしている者もいる。ちなみに秀一は全く動じていない。
"水樹に別れようと言われたら必ずそうする。──夢でも、見れて良かったから"
なんて言っていた
あのメガネ、どうしたらいいんだろう
頭の良い彼氏が、自分のことになるとどうしようもなく馬鹿になる落差をどうしたらいいものか……。
水樹は幸せな悩みを噛み締める。
私達、多分バカップルなんだよね
1人で考えながら 水樹はニマニマしてしまっている。
「水樹はホントに変わったわよね……」
そんな親友の様子を見て浅倉は呟き、それから思った。
(私はなんで正火斗を変えられないんだろう……?)
水樹と浅倉はそれぞれ、適当なクリスマスプレゼントをすでに取っていた。そこに振袖の聖も赤い包装紙に金のリボンのプレゼントを持ってきた。椎名も合流したため、あとはみんなで一階に降りた。
正火斗は──多分 聖のものと思われるプレゼントを持って大広間へと戻ろうとしていた。
「ご当主」
聞き覚えのある声に呼び止められて 振り返ると──
奥の厨房の入り口から、白くて丸い体の黄色の帽子のラブッキーくんが半分顔を覗かせている。声の主は勿論華蔵理人だ。
「何やってんですか。あなたは……」
正火斗は呆れて言った。
つぶらな瞳のラブッキーくんはLOVEを刻んだ栗を持って──それでも聞こえてくる声は真剣だった。
「君を待っていた。今は厨房は誰も来ない。話しておかなければいけないことがあったから、入ってくれ。手短に終わる」
正火斗は内心"めんどくさい!"と思ったが、肩を落として周囲を確認すると厨房に向かった。
厨房の中は薄暗く、扉を閉めるなりラブッキーくんが首をヤバい角度にしたので、正火斗はかなりビビった。
が、声は出さずに済んだ。
やがてラブッキーくんのズレた顔の下から、レターセットの便箋のようなものが出てきていた──形は……丸……?
理人の声で
「すまない。ラブッキーくんは両手で栗を持っているから、手が使えないんだ。コレをとってくれ」
と言われた。正火斗は
「その頭を外したらどうですか? 僕は中があなただと分かっていますから」
と勧めながら素早く紙を取った。
「正火斗くん……何のことかな。ラブッキーくんはラブッキーくんなんだ」
理人はこだわりを語る。正火斗は話の通じない相手との用事は早く済ませようとして、取った用紙を見た。それは栗イラストが印刷されていて、栗型のものだと気づいた。
「ふざけているならもう行きます」
正火斗が扉まで向かったので、理人は慌ててスポッとラブッキーくんの頭の部分を取った。顔を出して言う。
「待って待って! その栗の裏に書くところがあるんだよ!」
無駄にややこしい!!
理人は説明を続けた。
「客は最後──帰り際にガラポン抽選機を回して帰るけど、3位の景品は"当主のお天気予報"なんだよ。それは君には出来ないだろうから、僕がやっておいた。暗記しておいてくれ」
イラつきから正火斗は手荒く栗デザインの用紙をめくる。
確かに天気予報らしきものはそこに書かれていた。
"12月24日深夜から猛吹雪。
12月25日早朝 吹雪はおさまる見通し。
最低気温氷点下4度。
12月25日 快晴。最高気温5度。
雪崩に警戒"
正火斗は顔を上げた。──視線の先の理人は、すでにラブッキーくんの頭部を再び装着していた。
「これは当たるんですか?」
正火斗の質問に、つぶらな瞳の雪だるまは答えた。
「僕は裏神事を司る巫の末裔だよ。────当たるよ」




