026 ふたつ あるもの
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。父親は大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部の頃から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹。
○橘信蔵・華蔵家執事。
○冴木拓眞・華蔵家運転手。理人の同級生。
応接室に無事に正火斗が到着し、風晴達はホッとした。
聖は戸棚の上の段の奥に隠すと言っていた。──だが応接室に戸棚や棚は5つもあって、正火斗を始め全員がそれぞれ棚の引き戸や引き出しをガタガタと開けだした。
「……あった!!」
声を上げたのは秀一だ。
するとすぐに──
「じゃ、僕も自分のプレゼント探します!!」
と言うが早いか神宮寺は応接室を出て行った。
「オレはこれにしよっかな……」
桂木はテーブルの上にあった細長いプレゼントの箱を素早く もう手にしている。
迷ったが 風晴も応接室を出て行くことを選んだ。
正火斗は手を伸ばして、戸棚の奥の紺色の包装紙に黄色のリボンのかかったプレゼントを取ろうとした。──そこで手が止まる。
彼は横にいた秀一の方を向いて言った。
「隣にもう一つプレゼントがある」
秀一は眉間に皺を寄せた。
2人は……ややこしいことになったと思った。
来ている人達のほとんどが"プレゼント探しゲーム"に参加しているため、大広間はガランとしていた。
残っている人達は巨大ツリーの前で写真を撮ったり、外の天気を見ている人もいた。
今は役割のないラブッキーには、橘が椅子を持ってきてあげている。中が"華蔵理人"だと知っている冴木は思わず笑みが浮かんだ。
「冴木さん、こちらをいかがですか?」
そう声をかけられて振り向き、冴木は驚いた。
トレイにシャンパンを入れて持ってきてくれたのは、今は女中の姿とは言え──"華蔵透子"だったからだ。
「すみません、オレにまで」
彼はお辞儀しそうになったが、透子にとどめられる。
「いけません冴木さん、今は私は女中です」
仕方なく彼は苦笑するだけにした。
「では有り難く頂きます」
そしてトレイにはもう1つグラスがあったので、冴木は透子に勧めた。
「一緒にせめて乾杯しませんか?」
透子はまだアルコールが飲めない──そういう意味の言葉だと知りながら、彼女は胸の奥が苦しくなった。
「──では乾杯だけお付き合いします」
そのままの意味の言葉だが、冴木の瞳も細められて翳ったような気がした──気がした…だけだけれど。
透子は片手にトレイを抱いて、片手にグラスを掲げた。
2人は巨大ツリーの後ろにいた。──それは、ある意味前とも言えた。
冴木はそれにほんの軽くだがグラスをぶつけた。
カン……と優しい音が2人の間にだけ響く。
「冴木さんも"プレゼント探しゲーム"に参加したら良かったのに」
彼は当然独身で、見映えも良い男性だ。
「欲しいプレゼントの女性も参加していないし、プレゼントを渡したい女性も参加していないのに?」
と冴木は言って、一気にシャンパンを煽った。
透子はその光景を、少し戸惑って見つめる。
幼い頃から知っているその美しい瞳に────彼は言った。
「でも告白ゲームは参加したいと言ったら、あなたは……どう思う?」




