020 パーティーの陰で
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。父親は大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部の頃から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹。
聖歌隊は『きよしこの夜』や『もろびとこぞりて』『あわてんぼうのサンタクロース』もクリスマスソングらしく歌ったが『N県県民歌』──そして『白吹村童謡』なるものも歌われた。
雪よ ふれふれ
雪よ ふれ
道は消えゆく
木々には積もる
音無く静かに
天より落ちよ
あの子もジロウも
雪まみれ
ジロウの黒毛も
雪まみれ
雪は ふるふる
雪は ふる
道は見えず
木の枝しなる
音無く静かに
天より落ちよ
あの子もジロウも
真白き中に
あの子もジロウも
消えてゆく
雪よ ふれふれ
雪よ ふれ
道は無くなり
木の枝折れる
音無く静かに
天より落ちよ
あの子とジロウは
もういない
あの子とジロウは
どこ行った
これが終わると高校生達も手伝う段取りの大型紙芝居だった。
有名小説の『クリスマスキャロル』でもやるのかと思っていたら『かさじぞう』と『マッチ売りの少女』だった。
母親達が机の下から、指人形の登場人物達を動かしながらやるのだ。低い位置で中腰で動き回る──お母さん達は子供のために狭いところでも頑張っていた。
風晴や桂木達は読み役だった。椎名と聖は左右で紙芝居を抑えてめくる──声を出さなくていい役だ。
自分の読む分は終わった風晴は『マッチ売りの少女』のラストが可哀想で、子供達が泣いてしまうのではないかと心配して見守っていた。
すると最後には、お母さんが迎えに来て家に帰ると言う結末だったので、安堵した!
お母さんのセリフには
"お母さんの売っていたキャンドルは、クリスマスだからってみんなが買ってくれたの。沢山お金があるから私達もパーティーをしましょう!"
と言うものがあり、少女は喜ぶのだ。
拍手が子供達からおこる中、隣にいた桂木は風晴に耳うちしてきた。
「キャンドルはマッチとセットで売れば良いのに、人騒がせな親子だよなぁ……全く!」
そう言って大きく息を吐いていたので、風晴は抑えきれず笑った。桂木はラストを物凄く心配していたのだろう──風晴以上に。こいつは優しいから。
小休憩には、個包装のジンジャークッキーが大広間にいるみんなに配られた。お茶はホットとアイスが紙コップでフリードリンクとしてもらうことができる。
子供に限り──テーブルにあるペットボトルジュースを2本までもらえることになっていて、それは持ち帰っていいそうだ。
「高校生って子供かな大人……かな?」
と秀一がふと口にする。
「それ前にも話題にしたことあったよな!」
と思い出して笑い合った。
ペットボトルジュースには惹かれるものはあるが、小さい子供の前では流石に涼しい顔で冷茶にした。
そうしてジンジャークッキーを食べながら壁際にいると、正火斗が紙コップに麦茶を2つ入れて持っていくのが見えた。彼は一つを浅倉奏衣に渡し──もう一つを聖に渡している。
「ああいうところソツが無いよな」
風晴は感心して、秀一に言った。
「正火斗はパーティーのマナーも身につけているから女の子に飲みものを持っていってるんだろうけれど。──仕掛けてるんだと思う。なんだかんだで役割を果たす気なんだろう。"華蔵理人"として」
なるほど。もう周りへのアピールなんだ。
"藤色の振袖の少女"を特別扱いしていると。
風晴は改めて気付かされた。
楽しい雰囲気の中──
駆け引きはすでに始まっているのだ
聖も含めた──女性達に飲みものを届けて正火斗は席に戻った。
すると、それを待っていたかのように赤い毛糸の帽子を被ったサングラスの中年女性が近づいてきた。
正火斗は少し身構えた。"理人"の知り合いかもしれない。
「華蔵理人様、ハッピークリスマス。今年は戻られて喜ばしいことです」
「ありがとうございます」
と彼は答えた。
それから その人は身を寄せてきて囁いた。
「風の噂にあなたが館を売りにだし白吹を去るとも聞きました。ご英断だと思います。──ですが、どうか周囲にお気をつけて」
そうして彼女は素早く去って行った。
正火斗は目で女性を追っていたが、やがてその姿は来る人の波に飲まれて消えた。




