016 洋館開放の日
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。父親は大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部の頃から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹。
○橘信蔵・華蔵家執事。
○斉藤豊子・華蔵家女中頭。
○山原海・華蔵家料理人。
○冴木拓眞・華蔵家運転手。理人の同級生。
◾️これまでのあらすじ
鳳翔院学園ミステリー同好会メンバーとN県白吹村の洋館ペンションで再会することになった風晴と聖。
しかし洋館当主の華蔵家には"白吹の呪い"があり、現当主の理人と透子兄妹から、正火斗と水樹はクリスマスパーティーでの身代わりをお願いされてしまう。そして、和洋折衷、告白ゲームありのクリスマス・パーティーの朝は来た……!!
2025年12月24日──
世間がクリスマス・イヴに湧いているとき、N県白吹村では──着付けが朝から行われていた。
足袋を履き肌襦袢、長襦袢を着る。伊達締めを締めて、いよいよ着物に袖を通す。
男性陣は風晴、秀一、桂木は着付けが終わっていた。
男達の着物はだいたいが紺色や茶色、深緑や灰色の無地で、模様はあっても目立たない感じだ。
神宮寺と聖はついさっき着付けに入ったところで、今朝から"華蔵理人"になった正火斗は別室で当主としての扱いを受けている。
待ちながら風晴は周囲を確認しつつ、昨夜正火斗にもした──理人が実は使用人古株の4人を一番疑っている話をした。
その後には3人の話題は当然、"告白ゲームをどうするか"という内容になった。何しろ今日の夜には本番だ。
「正火斗には適当な感じでいいかと思っていたけれど……理人さん側の事情を知ると、せっかくの機会だから"好きになりました。付き合いましょう"くらいの明確さでいくべき──なのかも……しれないな」
紺色の着物姿の秀一が悩みながら言う。
「でもそこが浅倉にはキッツイだろって話が昨日のだろ?
演技は演技なんだし、浅倉は見ないようにするとか……じゃ、ダメかな?」
桂木は明るい茶色の着物だ。
「いや昨日のはさ、嘘での告白は正火斗も辛いかなってつもりだったんだ。だからできれば……告白のセリフそのものもなんとかしたい。
正火斗に告白されて喜ぶ女の子も気の毒だし……」
風晴は濃いめの水色系だ。
──そこで3人はしばらく沈黙した。
長い長い沈黙を、秀一が破った。
「無理だ風晴。正火斗が明確な告白をしないと、理人さんには意味がないんだと思う。正直言って僕も……それだとこの検証がぼんやりして終わる気はする。
せめて10分間のトークタイムで、正火斗は会う指定にした女の子に見せかけの告白をすることを打ち明けておいたらどうかな?
みんなに期待されてイベントを盛り上げるために告白はするけど、大学で知り合った付き合っている人がいるとかにして……」
「多分それ "なら告白なんかしないで下さい"とか女子に言われるパターンだぞ」
桂木は指を差して言った。
秀一は何も言えなくなった。
風晴にはそもそも案などない。
「あ! ここにいた!」
その時明るい声がして、通路の曲がり角から華やかな振袖姿になった女子達が現れた。
水樹も浅倉も椎名も化粧もしていて髪飾りもつけている。
「お────!」
と高校生男子は歓声をあげる。
3人共可愛いことは確かだが、昨夜髪を漆黒に染めて前髪を切り揃えた水樹は、紅い生地に蝶の柄の艶やかな振袖を選んでいた。クリスマスを意識して、それに緑と黒のデザインの帯を合わせ 金の帯締めをしている。
普段の女王様然・お姫様系とはまた違う── 大和撫子的美人としてスッカリ完成されていた。
「どうかな? 可愛い?」
その水樹に聞かれて秀一は、思い切り首を振り
「可愛いなんてもんじゃない!! 大罪だと思う!! パーティーやめて帰ろう水樹! みんなが君のために消えてもいいと思うから!! 間違いない、世界から男は消える!!」
と手を取って駆け出しそうになったので、みんなは彼を止めなければいけなくなった。
ようやく落ちつかせて、せめて水樹を"透子"と呼ぶように言いきかせる。眼鏡の天才の1人が使い物にならず、クリスマスパーティーは始まる前からいよいよ混沌としてきた。
「"告白ゲーム"のことは難しいですね。私も考えているんですが……難しいです」
桃色系の振袖に兎柄の椎名は愛らしくも悩んでいた。
「もういいよ、みんな。本物の恋人は私だってみんなは分かっていてくれてるんだし……」
黄色系の振袖に扇柄の浅倉はゴージャスなのに……どこか寂しそうだ。
「理人さんも兄さんも見た目の良さが今回は仇よね……」
と和装水樹だ。
「もう当主に全て任せて、"妹"は風邪で寝込んでいることにしよう。
正火斗は後で告白ゲームの相手には平謝り、浅倉にはダイヤモンドでも買うことにしたらいいよ。愛の証に」
秀一は完全にダークサイドへ落ちた。水樹を守ることしか頭に無い。
「僕もできましたー!」
そこに新たなる声が加わった。深緑の着物の神宮寺だ。
風晴は
「聖は?」
と聞いた。すると
「まだみたいです。……なんか、細いから大変だって言われてました!」
と教えてくれた。
続けて神宮寺は女性陣を褒めちぎる。
「先輩方、とっっても素敵です!!……あれ? 椎名は髪まで伸びてる?」
秀一は神宮寺と水樹の間に立ち塞がった。
風晴と桂木は椎名の後ろ髪を見てみた。確かにショートボブのはずなのに、まとまった量の長い髪の部分がある。
「ウィッグなんですよ。女子の着付け室にはカツラとかもありましたよ」
椎名が少し照れながら教えてくれた。
「なんでもあるんだな」
風晴が感心していると、パチン!と音がして桂木が隣で指を鳴らしていた。
桂木は瞳を輝かせて風晴に向いた。
「分かった! 全員ミラクルハッピーエンドのクリスマスは確かにあるぞ!!」




