014 腹が減っては
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。父親は大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部の頃から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
正火斗の部屋に入った風晴はまず彼に言った。
「腹 減ってないかと思って──コレいらない?」
そう言ってカップラーメンを渡す。定番のコンソメ味のヤツだ。
受け取りはしたが 正火斗は困惑しているようだ。風晴は言葉を加えた。
「夕食──食えてないみたいだったから。下げてもらってただろ?」
確かに食欲は失っていてほとんど残していた。それでも驚いた──風晴とは席は近くなかった。
「民宿に外人さんが来ることもあったんだ。だから母さんに教わってた。
コース料理はフォークとナイフを4時の方向にそろえたら"下げて"という合図だから、それっぽいのを見かけたら"下げていいですか?"って聞けって」
風晴は続けた。
「お前の手元がなんとなく……そういう所作っぽいのが続いてたから気になってた。それで、こういうのの方が入るかもなって」
そして風晴がカップラーメンを指差した時 正火斗の腹は鳴った─── グ〜〜〜〜と。情けなく。
バツが悪いこと このうえ無い。
風晴は笑いを噛み殺して言った。
「食えよ」
保温ポットにお湯はあり、備えつけのボードの引き出しにはグラスや小皿、カトラリーが一通りあった。
風晴と聖の部屋の冷蔵庫と同じように、ペットボトルのミネラルウォーターやスポーツドリンク、オレンジジュースとコーラ、ビール缶が入ってる。
「何 飲む?」
風晴が聞くと、カップラーメンにお湯を注いでいた正火斗からは
「何でも。風晴の飲みたいものでいい」
という答えが帰ってきたのでコーラにしてみた。
桃のムースだけでは糖分が足りてない気がした──その目まぐるしく動いているだろう彼の頭脳には。
サイドボードの上に2つ出したグラスにペットボトルのキャップを開けてコーラを注ぐ。ふと見上げると 大きな窓からは月が見えた。
「風、おさまったんだな。吹雪になるかと思ってた」
外は一面が白い雪で、木々の枝も雪をまとっている。その白さは月光を反射して明るい程だ。
正火斗はただうなずいただけだった。
それを見て…………なんとなく黒竜池で会ったばかりの頃の聖を風晴は思い出した。怯えているような、警戒されているような────まさか! 大道正火斗がそうなるわけがない。
よぎったくだらない想像を消す。風晴はコーラのグラスを2つ持つとカップラーメンのあるテーブルの方に向かった。1つを正火斗に渡す。
受け取った正火斗は椅子に座り、持っているコーラに口をつけた。
風呂上がりの身体に甘い…炭酸の弾ける液体が染み渡る。
うまい──と感じた。喉が渇いていることにも……気づけていなかった。
向かいで風晴もコーラを飲んでいた。が──正火斗のグラスが空に近くなったのを見て、彼は自分のグラスを置いた。
黙って立ち上がってサイドボードの上に置いたままだったコーラのペットボトルを取りに行く。
持って来たコーラの残りを、風晴が全部 正火斗のグラスに注ぎ入れたので、正火斗は
「ありがとう」
と言った。風晴は
「お前の部屋のだから」
と こともなげに返した。
カップラーメンのいい匂いがしてきて、正火斗は蓋を開けた。
冬の部屋に湯気が立ち上がり、嗅覚と視覚が刺激されてか驚くほど空腹を感じる。
正火斗は箸代わりのフォークをカップラーメンに入れて少し底から かき混ぜてから、絡んでいる麺を口に入れてすすった。
────なんでだ?
誰にでもなく頭の中で問いかけるほどに
それは メチャクチャうまかった──




