013 開けられる扉・閉じられる扉
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。父親は大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部の頃から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
風晴と聖は自分達の部屋へ戻った。
風呂から上がると、グッタリとしている自分がいた。
なんだかんだと……メチャクチャ疲れた……
スマートフォンがあまりアテにならないので、とりあえずテレビをつけてみる。だが、内容は頭に入って来ない。
てっきり今夜は、クリスマス準備でもしながらパジャマパーティーの時のような感じになるかと思っていた。だが水樹は髪を染めているし、正火斗を始めみんな疲れている感じがした。
このペンションには1週間程はいれる予定で来ている。急がなくともみんなと話せる時間はまだまだ沢山あるはずだ。
それにしても今日の正火斗は気にはなった。
キレていたし、落ち込んでいたし、焦っていた。口調や所作が乱暴になる彼を初めてみた。感情的で余裕のない感じだ。何より食事が…………
テレビの前であれこれ考えていると
カチリ
という音が寝室の方から────した。
寝室の扉は開けっぱなしにしていたので、風晴はただ姿勢を変えて暗い寝室の方を向く。
聖はお風呂で、誰もいないはずの寝室から
ガチャガチャ
と音がする。
聞き覚えのある音だ。
風晴は立ち上がって寝室の入り口まで行って立ち止まる。
──やはりあの"開かずの扉"のドアノブがガタガタと音がしているのだ。
音だけでなく、それは動いて──回った。
(誰か入ってくる…………!!!!)
ザワッと恐怖が全身を襲う。一瞬 聖に知らせなくてはと思ったが声が出ない。その間にも扉は動き開かれ、反対側からドアノブに手をかけて押す右手さえも もう見えた。
「……こんばんは」
混乱の中でも、風晴はなんとかその声に聞き覚えがあることに気付いた。すると声は出て、名前を呼ぶことが出来た。風晴は叫んだ──
「理人さん!!」
開かずの扉からは、華蔵理人の姿が現れた。
何もかもがメチャクチャだった。
自分の中の感情が入り乱れて判別も出来ない────いや判別したくない
自室の降り注ぐシャワーの下で正火斗は固く眼を閉じた。
桜田風晴と自分には因縁がある──運命とは決して呼びたくない。
自分達の父親には罪があり、僕はそれを隠した。
彼は何も知らない。これから先も知ることは無い。
同時に 僕はあの夏 自分の中の彼の存在が よく分からないものになった。
怖くなって逃げ出したほどだ。
万が一にも……父と同じ道を進みたくなかった。
────落ち付け
自分自身に言い聞かせる
何も始まっていなかったはずで
今も始まっていない
浅倉奏衣に問題は全く無い。不満も無い。自分を長く想ってくれて性格が良くて可愛い──これ以上望むものもない。
一緒にいたらきっと……好きになれる
いつかは愛せる……はずだ
だから何も恐れる必要も無い
瞳を閉じたまま うつむく。両手でシャワーのお湯を顔から拭う。ただそれは次から次へと流れ落ち、意味は なさない。
正火斗はボディソープを手に取って泡立て身体を洗いだした。
何かに せき立てられるかのように
何かに 追われるかのように
脱衣所で着替えて出てくると、誰かがノックする音がした。
浮かんだのは、今日の自分を心配した水樹や秀一 ──それに浅倉奏衣だった。スマートフォンでやり取りが出来ない状態だし、来たのかもしれない。
ちゃんと向き合わなくては
正火斗は扉を開けた。
「ごめん。休んでいるところに」
そこにいたのは風晴だった。
思いもかけない相手で──しかも彼は何故かカップラーメンを一つ持っている。さらには、予想もしなかった言葉を口にした。
「入れてくれないか? ──理人さんの真意は別にあったんだ、正火斗」
いよいよ自分が何に混乱しているのかも分からなくなってきた。
明日はこれ以上混迷を極めるのだから、もう頭がおかしくなるかもしれない。
正火斗は扉を開け放して風晴を通した。
そうするしか──ない
そして 扉は閉められた。




