012 2度目の強さ
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。実家は大企業の財閥グループ。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。父親は大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部の頃から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹。
○斉藤豊子・華蔵家女中頭。
「そこまでやってやれるか!!」
正火斗は乱雑にコーヒーカップを戻した。ガシャン!とソーサーとぶつかり合う音が響く。
「なら自分は涼しい顔をして、妹さんに演じさせるのか? ──僕ならそうさせないね。
水樹さんに告白したい男はいるだろうが、白吹の者は"呪い"を知っている。行方不明になる恐れをなして告白はないか、それでも良いほどの強い気持ちかのどちらかだ。
そう言う真剣な愛情に偽りで応えた方が──妹さんもその彼氏も後々面倒なことになるんじゃないか?」
正火斗と理人は睨み合って──どちらも目を逸らさない。
だが正火斗は反論出来なかった。理人は言葉を続ける。
「仮に君が君の恋人──浅倉さんに告白しても僕は別に構わない。是非ツリーの前で盛大に愛を誓ってくれ。
だが"白吹の呪い"になぞらえるなら消えるのは浅倉さんだ。その危険性を大事な恋人に負わせるのか?」
理人は真っ直ぐ正火斗を見て言った。
「それで本当に好きな人と言えるのか?」
浅倉は正火斗を目で追った。──彼は何も言わない。
「理人さん、正火斗に告白させるのは待ってやって下さい」
浅倉のさらに後ろから、声がした。
理人は正火斗から視線を外して声の方を見る。
正火斗も振り返って見た。
────桜田風晴を
「理人さんの言っていることは分かります。分かるんですが……そのやり方だとクリスマス・イヴに正火斗も、浅倉さんも、正火斗に告白される女の子だって……大なり小なりみんな傷つくと……思います」
華蔵理人は あからさまに、その整った顔に険しい表情を浮かべた。
風晴は怯まなかった。
「子供っぽいかもしれないけれど、オレ達はここにクリスマス・パーティーを楽しみに来たんです。
理人さんと透子さんの力にもなりたいです。だけどそのために正火斗や正火斗の大事な人が辛い想いをするのは
…………オレは嫌です」
理人は瞳を細めた。
「それで? ここまで進んだ話を君は子供の駄々で崩す気かな? 明日の朝1番で帰るなら拓眞に車は出させよう」
風晴は退かない。脅しだと分かっている。
「考えさせて下さい。ギリギリまで。──必ずあるはずです。何か違った……全員が救われる方法が」
そこに声が加わる。
「みんなで力を合わせたら……きっと!」
聖だった。風晴が驚いて聖を見ると、彼はニコニコしていた。
「聖……」
水樹の声だ。秀一も眼鏡に手を当てて
「僕も何か考えてみる。一晩あれば何か浮かびそうだ」
と言った。
「クリスマスはみんながハッピーエンドが良いよな」
「私もアイデアをきっと絞り出します!」
「僕は告白してみたいです!」
桂木と椎名も付け加えた。神宮寺は……個人の希望だが。
「桜田くん……」
呼ばれた方を向くと浅倉が微笑んでいた。
「ありがとう」
初めて話しかけられた言葉だった。風晴はただ彼女にうなずく。
誰からともなく──1人、また1人と立ち上がった。
食事の時間は終わりだった。水樹は立ち上がり、豊子の元に行った。
食堂を出るときだった──
「桜田風晴くん」
理人に呼び止められて、風晴は立ち止まった。聖やミステリー同好会メンバーも止まってくれた。
華蔵理人は、風晴に思いもかけないことを聞いた。
「君は心から好きな人はいるの?」
風晴は単純に驚いて返事が遅れた。
正火斗はその沈黙をひどく長く感じた。
「いえ、全然。そんな機会全くなくて……」
そう言う返答しかない自分が風晴は恥ずかしかった。
理人は
「ふぅん……。君って変にとても強いから、何かあるのかと思ったんだけどね。──ご両親の愛情かなぁ」
と真剣に考察しているようだった。
風晴は理人に教えた。
「母はシングルマザーなんです。でも、父のことを凄く想っていたことは分かります。────だけどさっきの……聖の言葉を合わせた"みんなで力を合わせたら全員が救われる"というのは、そう言うんじゃないんです」
理人は風晴を改めて見つめている。
風晴は、正火斗の前で 理人を見て言った。
「オレ達は今年の夏休みにそれを見つけたんです。だからきっと見つけます──また」




