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【現代推理完結済】炎と白銀と〜聖夜の洋館の悲劇〜僕達の推理2  作者: シロクマシロウ子
第15章 その出口を探して 

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121 ねだる人

ー登場人物紹介ー

大道正火斗だいどうまさひと・3年生。大企業財閥御曹司。


桜田風晴さくらだかぜはる・田舎の農業高校2年生。


山原海(やまはらかい)・華蔵家料理人。生。

赤沢幸太郎(あかざわこうたろう)・新しい華蔵家運転手。


左河曜子(さがわようこ)・正火斗の会社の部下。

高井戸勝己たかいどかつみ・正火斗の秘書。

 




 午後13時30分からイベント開始で、16時からはレセプションパーティーの予定だった。全体は18時で終了の見通しだ。


 風晴達の昼は11時半と早めだった。

 カルボナーラスパゲッティを食べて、風晴は山原さんが厨房(ちゅうぼう)に来ているんだなと分かった。

 それから──当然(とうぜん)のように正火斗の姿は無い。


 飲み物くらいは飲んでるんだろうか、あいつ……


 思って 自分が心配することではないと気付く。周りに秘書やら部下やらが沢山(たくさん)いるのだから。

 食事を進めていると左河(さがわ)さんがまた食堂に現れて、そして風晴に声をかけた。


「桜田……風晴くん? あなたの食事が終わってからでいいんだけれど……」








 正火斗はその頃 自室にいた。社員達との最終チェックは大方(おおかた)が済んでいた。

 今日、彼は館内の3人の人物を呼び出していた。

 ()()()()()()()()()()特に忙しい1人は朝のうちに来て、すでに去った。

 もう1人は、こちらの聞きたい話をしてもらっている最中だった。────最後の1人は……

 彼の駆けてくる足音がして、正火斗は視線をドアに移した。


 コンコン 


 と音がして


「どうぞ」


 と こちらが言い終わる前に扉が少し開いた。


「正火斗? オレに用事って何!?」


 風晴は自分は場違(ばちが)いだとでも言うように、顔だけ(のぞ)かせて尋ねてきた。


「何か作ってほしくて」


「は?」


 風晴は聞き返す。


「大一番前だから、口にするものを選びたい。山原(やまはら)さんは忙しいだろうから 風晴に何か作ってほしい」


 カチンとくるものはあるが ()える


「リクエストは?」


「できれば、甘味があって塩味があって酸味もあって、匂いが少なくて 食べやすくて(うま)いと良い」


 注文(ちゅうもん) 多いな!


「あと、なるべく早く」


 この野郎!


「風晴」


「まだ何かあるのか?」


 人使いが荒い!


「飲み物も一緒に」


 …………スレスレ許せなくも無い


「りょーかい!」


 扉を閉めて厨房に向かう。

 階段を降りながら もう頭の中を(めぐ)らせていた。


 "甘味があって塩味があって酸味もあって、匂いが少なくて 食べやすくて旨い"ものって何だ!!??









「へー、何だかこれまでとは違ったタイプのご友人ですね。純朴(じゅんぼく)な感じの。……白吹村(しらぶきむら)の学生ですか? お名前は?」


 正火斗は秘書である高井戸(たかいど)に首を振った。


(おぼ)える必要は無い、高井戸。彼は友人でも……何でもない」


「……そうですか…………」


 高井戸は不思議そうな表情で言ったが、それ以上は何も言わなかった。

 正火斗は話に来ていた人物に視線を戻した。










 厨房にいる山原に風晴は(ことわ)って入り──1人分の食材を使うことを許してもらった。

 急いで借りたエプロンを着け、手を洗う。

 最早(もはや)正しい調理法にこだわる時ではなく、時短(じたん)が求められていた。


 ボールに卵2つと牛乳、多めの砂糖を入れて手早く混ぜる。出来上(できあ)がった液を天板(てんぱん)に移して、食パンを2枚()く。

 それからブロッコリーを一口大にカットして洗い、水を切って耐熱(たいねつ)ボールに入れてラップし、電子レンジで熱する。取り出しておき(さら)に予熱を通す。

 その間にミニトマト3つを四つ切りにする。


 ここで天板の食パンをひっくり返す──全体にくまなく()み込むように。


 フライパンにサラダ油を敷いて強火にする。

 ベーコンの固まりから薄めに4枚切り取り、熱したフライパンに入れて両面がカリッとなるまで焼く。


 (ビネガー)胡椒(こしょう)、塩、砂糖少々、レモンピール、オリーブオイルを混ぜてドレッシングにし、トマトとブロッコリーを()えた。完全にオリジナルの味付けだった。でもトマトの酸味が合わさって……うん、悪くない。


 ベーコンを焼いたフライパンの油をキッチンペーパーで()き取り、次はバターを溶かす。そこに天板から出した卵の染み込んだ食パンを一枚ずつ焼く。────どんどんと12時が過ぎていく。

 じっくり焼いて()げ目を少しつけたいが 時間が無いので中火にする。

 ようやく2枚食パンが焼けると食べやすいように簡単な切り込みは入れた。あとはベーコン、サラダを盛り付ける。────急げ!


 焼きあがったばかりの温かいフレンチトーストには追いバターも つけた。

 トレイに乗せてナプキン、ナイフとフォークをつけて料理にはドームカバー((ふた))をつける。冷蔵庫を開けると──ペットボトルのミルクティーが入っていた──これだ!とグラスに(そそ)いだ。


「洗い物、戻って来たらやります!」


 山原さんに声をかけて厨房を出た。階段を上がりながら"20分はかかって無いはず"と思い返す。

 正火斗の部屋の扉をノックしたら、すぐに中から開けてもらえた。


「持って来たけれど」


 と言うと彼は


「ありがとう」


 とトレイを受け取った。

 風晴はうなずいて今度は彼に代わって扉を閉めた。 そのまま廊下を戻って行った。

 








 正火斗はトレイを(そな)え付けのテーブルに置いた。


 彼は1人だった。

 呼び出していた人間も仕事に戻り、社員達には広間でのスタンバイをお願いし、先に行ってもらった。


 テーブル前のイスに座りドームカバーを外すと──確かに"甘味があって塩味があって酸味もあって、匂いが少なくて 食べやすくて旨い"ものがそこに並んでいた。


 微笑(ほほえ)み、彼は残さず(すべ)てを味わった。








ゆっくりとですが、確実に事件は終盤に進んでいます……

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