120 当主の決意
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。大企業財閥御曹司。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。親が大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹
華蔵理人は今朝から3階の当主部屋へと戻っていた。大道正火斗は来た時に割り当てられた2階の客室へと戻った。
彼と透子は、そこで正火斗の部下の音谷伸吾から一連の流れを説明されていた。
メディア前とメディア無しの場での振る舞いの仕方もだった。それからプレゼンテーション後の夜について。
それが終わると音谷は部屋を出て行った。透子も行こうとすると 理人は呼び止めた。
「透子」
「はい?」
いつものように妹は兄に振り返る。
「危険な橋は渡るが僕に命の心配はないから。────それでも託しておきたい。これを」
理人は首から下げていたチェーンを外すと、手にして透子に歩み寄った。
透子がチェーンの下部に視線を走らせると、そこには2つの鍵がついていた。
「一つは銀行の鍵だ。不動産関連の書類は皆そちらに揃っている。もう一つは……当主部屋の鍵だ。お前に預かっていてほしい」
透子は鍵を握りしめて兄を見つめた。
「兄様……」
その瞳があまり心配そうだったので 彼はむしろ笑った。
「大丈夫だよ。前にも言ったが……僕より危ないのは正火斗くんだ。だが彼を巻き込んだ責任は僕にある。何かあれば彼を見捨てたりは…………してはいけないと思うんだ。
だけど僕は薄情だからね。"妹が心配だ"とか"妹は僕がいないと"なんてやっていたら、本当にあの小憎らしい男前を見殺しにしてしまいそうだ。
だから透子、お前がそれを持っていてくれたら僕は安心なんだ」
彼は続けた。
「別家達が騒いだりお前に結婚を強いて来ても決して屈してはいけないよ。
"白吹の呪い"は僕と彼で終わらせる。お前は自由に生きていいんだ」
兄に"そんなことはやめて戻って来て"と言いたい自分もいた。だが、華蔵理人が人間として当主としてそうしようとしている気持ちも──痛い程分かった。
確かに 自分達は彼らを巻き込んでしまったのだ。
そして 自分や兄自身のためにも"白吹の呪い"は終わらせるべきだ。
「────お2人共……ご無事で戻って来て下さい」
そう告げると透子は静かな礼をし、部屋を出て行った。
理人はその全てを 優しい眼差しで見送った。
その後彼は窓辺に立ち──大型トラックから洋館へと運び込まれていく機材を見ていた。まるで誰かを待つかのように。
すると扉を叩くノックの音がした。
「どうぞ」
理人が言うと扉は開き その人は素早く入って来た。
「来てくれると思っていた。連絡した通り──"最後の仕事"をお願いするよ」
たたずむ訪問者に理人は微笑み 、最後に付け加えた。
「大道正火斗には気をつけろ。彼はどこまで嗅ぎつけているか分からない」




