122 間違いない運命
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。大企業財閥御曹司。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。親が大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹
○ 秋月未来・白吹村役場職員。
●左河曜子・正火斗の会社の部下。
2025年12月29日13時
風晴が洗い物を終えて広間に行くと、広間はすっかりイベント会場へと生まれ変わっていた。
ソファの類いは一切無く 奥の方にはステージやパネルが設営されていて、"巫天気予報"のカラフルな文字が背景に描かれている。床はLAN回線がうねっていた。
13時半開始予定のイベントを前に 関係者はすでに広間に集まっている。
見るからに分かる腕章を着けたマスコミ関係者。スーツ姿の……白吹村村民。白吹村役場職員は10名程も来ているようで、中には秋月未来もいた。──そしてラブッキーくんも。
ステージに近いところには ミステリー同好会メンバーと聖、左河さんも座っていたので、風晴はそちらに行った。
隣りに座ると聖に
「風晴……何して来たの?」
と聞かれたので
「なんか正火斗に昼飯 作ってくれってお願いされた」
と答える。聖はニコニコになって
「良かった」
と言ってくれた。正直言って何が良いか分からないが
「うん」
とだけ言っておいた。その"うん"の微妙過ぎる響きが聞こえたのか、前方にいた秀一が振り返って教えてくれた。
彼も笑っていた。
「風晴、貴重なことだよ。正火斗が"お願い"とか"甘える"とか滅多にないから。
僕は長く彼を知ってるけれど、必須条項を依頼したり礼儀正しく頼むことはあっても────自分のことで"おねだり"する正火斗は記憶にないから」
風晴を見つめて秀一は続けた。
「できれば不快に思わないでやって。そう度々は無いよ。正火斗は基本的には1人で何でもできてしまうんだ」
秀一は姿勢を戻すと、隣の左河さんの始めた──ラブッキーくんの作者がVRアバターとして使う許可をくれたことや、村会議員も呼んだ話を──他のメンバーと聞いていた。
風晴にも話は耳には音として聞こえてはいたが、頭には入って来なかった。
正火斗は確かに何でも出来るし、万能だし、強い
────でもアイツ……
"トマトが食べたい"だの
"腹が 減った"だの
夏休みも言っていたんだ
先日 透子さんに親子丼を作った時の
"カップ麺と差がありすぎないか?"だって
遠回しのおねだりじゃないだろうか
正火斗は外側が完璧過ぎる程に完璧で誰も気づかないけれど──
内側はもっと繊細で崩れ易くてボロボロのような……気さえしてしまう。
でもそういうものを再構築したり治したりするのではなくて、塗り固めて封じ込めた────彼はそうするしか、妹と生き延びる術が無かったから
冷静になって、大道正火斗とは全く異なる環境だった自分が、何故こんなにも共感するのか真剣に考える。
自分にも────あったからなのだろう……
打ち砕かれた感情のカケラを隠して、前に進まなければいけない日々が。
彼の生い立ちのそれとは……比較できないようなものかもしれないけれども。
まあ、だけど……
結局のところは彼からすると自分は
"料理のそれなりにできる友人"
なんじゃないだろうか
そのうち、会わなくなったら多分……
"昔友達だった人"
みたいな認識がリアルだろうな、きっと
まだ本番前だが理人が会場入りして、広間は拍手に湧き立った。正火斗と透子も続く。
スーツを来て眼鏡をかけると、正火斗はもう20代くらいの若手社長のように見えた。身長はあるし、元々の雰囲気が大人っぽくて落ち着いていることもある。
美しさが唯一若々しさを映しているかもしれない。だが彼のその美しさは可憐さや柔和さ等ではなくて、どこか冷ややかさと迫力さえ秘めた危険を感じさせるものだ。
隣りにいる透子は髪は短くなったが、編み込まれ櫛が飾られており 着物姿でやはり艶やかだった。
演技とは言え正火斗と透子は並んでいるだけで絵になるので、2人が近い距離でにこやかに話をしているだけで お似合いだと誰もが思わされる。
風晴も すんなりそう思った。
やはり別世界の人間
お互いに忘れていく運命だ
もう会わなくなれば────きっと
間違いなく




