114 Bチーム対Cチーム……の直前に
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。大企業財閥御曹司。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。親が大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹
○橘信蔵・華蔵家執事。
○赤沢幸太郎・新しい華蔵家運転手。
浅倉奏衣は推理をしていた。
正火斗の"気になる人"が、誰なのかどうしても気になるのだ。
だってあの正火斗が──大道正火斗が"気になる人"なんて………気にしない方が無理だ
私はまだこんなに彼が大好きなんだから!!
手掛かりは無いものの、約3ヶ月間"恋人"という関係でいて唯一彼に感じた違和感がある。
それは──ここに来てから だ。
東京にいる間の彼は 冷静で思いやりがあって安定していた。凄く愛情を感じているわけではなくても、細やかな気遣いをしてくれていた。
この洋館に来てから──だ。彼の意識が全く自分に向いていない気がした。他に気をとられているような
それで思ったのだ。
この洋館に 正火斗の"気になる人"がいるのではないか……と。
となれば ホシは1人しかいない──1人しかいないのだ。
浅倉はCチームに視線を向けた。
Cチームの椎名、正火斗、桂木、神宮寺は陣地に出て行くところだった。雪に不慣れな椎名は 足を踏み出しては埋まるので遅れていた。
正火斗が気付いて手を差し伸べる。
────やっぱり……。
浅倉は物凄く納得した。
私は全てが分かってしまった。
正火斗の"気になる"女の子は椎名美鈴だ。知的で可愛くて性格はピカイチだもの。
正火斗は夏休みの後ミステリー同好会を引退した。
1年の椎名とはもう会わなく──会えなくなっていた。そうなると、かえって人って自分の気持ちに気づいたりするものだ。傍にいた時の楽しさや安らぎ、笑顔を思い出したりする。
彼は私の告白を受け入れてしまったけれど、何か私では埋められない心を感じていたのではないだろうか……
そうして このクリスマスイベントで久しぶりに椎名に再会した。────それで再確認したのだろう。
やっぱりなんだか気になる女の子だなぁ……と。
浅倉は正火斗の手を借りて歩く椎名を 穴があく程 見つめていた。
うらやましくて
うらやましくて
うらやましくて
…………仕方がない……
彼をずっと追ってきて ずっと探ってきたから、分かる。今まで彼の隣りにいた女の子達とは全然違う──
正火斗の中の核心を揺るがして、上っ面を剥がすような存在なんだ────椎名が。
何故 私じゃないんだろう
絶対に私の方が椎名より彼を好きなのに
だけど正火斗は別れを告げにきた
手編みの手袋は受け取れないと返された
私じゃ……何をやっても 彼の心は手に入れられない
浅倉は正火斗の背中を見た。
手に……入れられない?
正火斗は進んでいく。振り返ることは無い。
それじゃあ、この気持ちは一体どこに行けばいいの……?
まだこんなに────こんなに 好きなのに
3人だけのAチームを休ませるようとAチーム対Cチームではなくて、Bチーム対Cチームを先に行うことは決まっていた。
第二試合からは始めにジャンケンをする。
勝った方が好きな陣地を選べる。つまりは、先に作られた防御壁の雪山を選べるということだ。
ジャンケンは桂木が出て、正火斗と椎名のBチームが勝った。Bチームは、風晴達Aチームの陣地を選んだ。こちらの方が雪山が少し高いからだろう。
「ジャンケンご苦労さん」
「桂木先輩、勝ってくれてありがとうございます!」
ジャンケンした中央ライン位置から戻るとき、正火斗と椎名に桂木は声をかけられた。
椎名の手は正火斗の腕につかまっていた。
それを目にして、桂木は正火斗と同じチームであることを呪わしく思った。
────ぶつけてやりだかった。大道正火斗に 雪玉を。
思いっきり。
正火斗に つかまる椎名を浅倉が見ているのを──自分は見ていた。
浅倉は辛そうだった。
恋人なら、なんで彼女の気持ちを分かってやらないんだろう
椎名が遅れているのは オレだって気づいたのに。
育ちの良いこの人は女性達にごく自然に素早く手を貸すから……腹が立つ。同じ男としては
浅倉とも付き合っていて椎名にも優しくする──その結果、もしどちらの女の子も悲しませることになったりしたら……この人はどうするんだろう
浅倉みたいな女子に一途に想われて、誰にでも優しい椎名に つけ込んで もて遊んだりするなら……
「桂木先輩! 早く早く!!」
神宮寺に呼ばれてハッとした。
────自分の許容の狭さと嫉妬深さに辟易する。みっともないこと、この上ない。
慌てて防御壁作りに参加する。
参加しながら 小さな体でスコップを懸命に動かす椎名に目がいく。
オレ、一体何に今…………あんなにもイライラしていたんだろう?
自分がモテないから?
浅倉が可哀想だから?
それとも…………?
なんだかもう……分からなくなってきた
何よりも────自分の気持ちが
分からない
なんで分からなくなってるかも
分からない




