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炎と白銀と〜聖夜の洋館の悲劇〜僕達の推理2  作者: シロクマシロウ子
第13章 迷路の奥へ

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106 忘れていた夏と

ー登場人物紹介ー

※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー

大道正火斗だいどうまさひと・3年生。大企業財閥御曹司。

大道水樹だいどうみずき・正火斗の妹。2年生。

安西秀一あんざいしゅういち・部長2年生。親が大道グループ傘下企業役員。

浅倉奏衣あさくらかなえ・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。

桂木慎かつらぎしん・2年生。明るくフレンドリー。

神宮寺清雅じんぐうじきよまさ・1年生。ややお調子者?

椎名美鈴しいなみすず・1年生。真面目でしっかり者。

桜田風晴さくらだかぜはる・田舎の農業高校2年生。

真淵聖まぶちひじり・風晴の同級生。話すのが苦手。


冴木拓眞(さえきたくま)・華蔵家運転手。理人の同級生。

林有里子はやしゆりこ・白吹村役場職員。

葉崎達哉はざきたつや・25年前からの行方不明者。

金森香世かなもりかよ・葉崎達哉の実姉。洞窟所有者。

 



 洋館に帰って来た風晴は、部屋で鮭おにぎりとシーチキンマヨネーズおにぎりを食べた。


 部屋にいた聖は 風晴達が林有里子(はやしゆりこ)の両親の死体を見つけたなんて全く知らなかった。

 風晴はおにぎりを食べながら教えた。

 金森香世(かなもりかよ)容疑(ようぎ)がかかったことも聖にも話した。()せていても、この先ネットで目にしたりニュースで耳にしたりするかもしれない。

 そして金森については 正火斗が"ひっくり返す"と言ってくれていたこともちゃんと教えた。

 黙って聞いていた聖は最後に


「大丈夫……?」


 と声をかけてくれた。

 風晴は


「オレは大丈夫。だけど……」


 と隣りの部屋に続く扉を見つめた。


 正火斗はコンビニエンスストアでエナジーゼリーのような物しか買っていなかった。

 彼に似合った姿でもあるし無理もない……とも思った。


 自分はあの洞窟の中で冴木拓眞の(さえきたくま)死体と対峙(たいじ)したけれど暗かった。それはそれでまた不気味(ぶきみ)さはあったけれど。


 正火斗が発見した刺殺体(しさつたい)複数箇所(ふくすうかしょ) 刺されていたみたいだ。正火斗は多分それでも見ただろう────でも彼だってまだ何者でもない高校生だ。ショックを受けて当然だった。 


 どうしても隣の部屋への扉に視線(しせん)が向かう。



 部屋を訪ね……たいとは思った。

 けれど1人でいたいかもしれない。



 水樹からLINEがあったのだ。

 報告会は夕食後になる──と。

 だからそれまでは自由時間だった。


 でも水樹にこの指示をしたのが正火斗のような気がした。

 やっぱり……1人で休みたいのかもしれない。


 おにぎりを食べ終わってゴミ箱にゴミを入れた。(そな)え付けの冷蔵庫からミネラルウォーターを出して飲む。そして 大きく息をついた。


 その様子をじっと見つめていた聖は


「風晴……行った方がいいんじゃない……?」


 と隣の部屋への扉を指差した。


「……用事、何も無いし……」


 風晴は頭をかいた。聖は


「渡したいもの……あったんじゃない?」


 と言って風晴の瞳を()()ぐに見つめる。

 そういう聖は貴重(きちょう)なので 風晴も頭の中の記憶を手繰(たぐ)る。

 そして────


「あっ……」


 と小さく息を飲む。

 確かにあった。持って来ていたのに。忘れていた。


 聖がコクコクとうなずいている。


 今度は風晴の方が隣の部屋への扉を指差した。

 それから──自分自身を指差した──聖に問うように。


 聖はひとつ大きくうなずいた。








 小さくノックをしたら返事は返ってきた。

 眠ったりはしていないようだ──いや、(かえ)って眠れないのかもしれない。


「正火斗、いい? 渡したいものがあって来た」


 扉を少し開けてそう言うと


「どうぞ」


 と()げられた。

 入っていくと彼は寝室を抜けた先の居間の方にいた。テレビがついていて、ニュースが流れている。

 わざわざソファから立ち上がってくれている正火斗に、風晴は黄色い表紙カバーの文庫サイズの本を差し出した。


 "心理尺度構成法 実践編 "


 それを見ると正火斗の端正(たんせい)な顔に笑みが()かんだ。

 それはあの夏休みの"忘れ物"だった。


「ありがとう」


 礼を言って彼は受け取った。

 すると風晴はもう一つ紙袋を差し出した。袋にはリボンがついている。


「これは?」


 正火斗は本当に見当もつかなくて風晴に尋ねた。

 風晴は


「誕生日プレゼント」


 と言って


「"よく忘れられる"って言ってたから持ってきてたんだ。で────昨日渡すの忘れてた」


 と物凄(ものすご)くバツが悪そうに説明した。


 正火斗は笑った。

 笑いながら困った。



 彼のような人間を

 一体どうしたらいいのか──







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