105 新たなる展開
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。大企業財閥御曹司。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。親が大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹
○橘信蔵・華蔵家執事。
○斉藤豊子・華蔵家女中頭。
○斉藤美郷・豊子の孫。白吹村女子高生。
○冴木拓眞・華蔵家運転手。理人の同級生。
○戸田広雪・白吹村男子校生。3年。
○林有里子・白吹村役場職員。
○秋月未来・白吹村役場職員。
華蔵家にいた椎名美鈴は、いても立ってもいられなかった。
午前中の間に、真淵聖と一緒にクリスマスパーティーのゲーム参加者については調べることが出来た。女中達や従業員達から、斉藤豊子や美郷についても聞けた。
この間も
桂木先輩は大丈夫かな──
と椎名は気になってはいた。
班分けで正火斗先輩と一緒になってしまっている。
昨夜の場面からすぐで辛くはないだろうか。
応援すると本人にも宣言したのだし と
1通
"それぞれ頑張りましょう!
桂木先輩達も気をつけて
行って来て下さい!"
と言うLINEも送ってしまった。
その後、お昼には洋館に水樹先輩と浅倉先輩が帰って来た。理人さんも出かけていたので昼は4人で食べていた。
チャーハンと卵スープだった。
水樹が椎名に
「聞いて聞いて! 浅倉は兄さんとは別れることになったけれど、今日 早速 告白されたの」
と言って来た。浅倉は水樹を遮ろうとしたが
「やめて水樹。あれはそんなんじゃ……」
と言葉は途切れ 結局 否定とまではいかなかった。
「会ってきた高校生に告白されたんですか?」
椎名が聞くと 2人は首を振った。
話を聞いてきた冴木拓眞と秋月未来の目撃者である高校生に──戸田広雪もついて来ていたのだ。
目撃者の高校生2人はカップルになった男女だったために 恋話で盛り上がった。その中で浅倉は昨夜 恋人と別れたことを話したのだ。
すると帰りに橘の運転する車に乗るときに──
「浅倉さん!」
戸田広雪が呼びかけて駆けて来た。
「戸田くん……」
戸田は息を整えると
「またLINEしてもいい? オレは浅倉さんが寂しい時に支えたい。やめたい時は いつでもそう書いてくれたらいいから。──LINEしたらだめかな?」
と浅倉に言った。
浅倉は胸がいっぱいになった。
好きな人は正火斗だ。嫌と言うほど分かっている。
でも寂しくて苦しいこの時に
自分にこの言葉をくれる彼が
とても有り難くて……嬉しかった。
それでも言葉は出てこなかった。
迷っていると戸田が
「じゃあ、1通だけ送るから。それで断って。──ね?」
と言ってくれた。
優しい人だ。涙が出そうになった。
「ありがとう。本当に」
詰まったような声で言うと戸田は笑顔になって
「オレすげー勉強するから!! 関東の大学入って──絶対寂しくなんかさせない!!」
と でっかい声で宣言して、走って帰って行った。
浅倉は真っ赤で
水樹は大笑いした。
橘は雪の舞う中 走り去る戸田を見て
「青春ですね……」
と しみじみ言った。
水樹はこの話を椎名も喜ぶと思って報せていた。
椎名は桂木に片想いで
桂木は浅倉に片想いだ。
浅倉が正火斗と別れてフリーになると、桂木と上手くいく可能性が上がるが──
浅倉に他の恋人ができれば桂木は いつかは諦めるかもしれない。
そうすれば 椎名は桂木と両思いになれるかもしれない。
だから喜ぶだろう───そう思っていた。
ところがどっこい、椎名は喜んではいなかった。
戸田広雪には恨みも無いし 彼には好印象だった。
けれどもパッと出てきてタイミングよく浅倉先輩の心をさらっていく彼が……なんだか腹立たしかったのだ。
椎名は大道水樹も浅倉奏衣も好きだ。桂木がどちらかを好きになっても当然だと思って生きてきた。
少しばかり……最近は夢や希望を大きくしてしまっていたけれど。
それでも桂木が長く強く浅倉奏衣に片想いをしてきたことが明確になって とても納得したし、私の方を向くことは無いのだと諦めた。
それどころか……長く想い続けてしまう彼の姿は自分の片想いとも重なった。
今は心から思ってる。
自分の分まで彼の想いが通じて、浅倉先輩と上手くいって……幸せになってくれたらいい と。
だから戸田の出現は 全く嬉しくなかった。
嬉しくなかったんだ────
桂木先輩、また落ち込んでしまうんじゃないだろうか
沈んだ気持ちで時折繋がらなくなるスマートフォンを自室でいじっていた。
ネットニュースを見ると
林有里子の両親が殺害された──と言う記事が飛び込んできた。
帰宅した娘と訪問客3人が発見とあった。
慌てて
"ニュースを見ました
大丈夫ですか?"
とLINEを送った。
ニュースでは室内で異臭もあったとついていた。
酷い現場を見た? 大丈夫だろうか
体調 悪くしたりしていない?
ドキドキしながらただスマートフォンの画面を見つめる。電波が悪いかもと、部屋の中を移動したりしていた。
立ちっぱなしに疲れてベッドに腰を下ろした時に──LINEの着信音がした。
"オレも桜田も大丈夫
もうすぐ帰れそう"
スマートフォンを握りしめて胸に抱く。
その文章は 心にどうしようもない切なさと 大きすぎる喜びを与える────それは自分では防ぎようもなくて制御などできない。
椎名は思った。
ノートに間違えて書いた文字のように
好きって気持ちも消せる消しゴムがあったらいいのに
そうしてまっさらな白紙に戻せたなら
どんなに… 楽だろう




