103 予期せぬ容疑者
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。大企業財閥御曹司。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。親が大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹
○冴木拓眞・華蔵家運転手。理人の同級生。
○林有里子・白吹村役場職員。
○葉崎達哉・25年前からの行方不明者。
○金森香世・葉崎達哉の実姉
桂木と正火斗は、それぞれクリスマスプレゼントの腕時計と"華蔵透子を連れ去る時間"と書かれた用紙を警察に提出した。
そして、風晴は洞窟で聞いた声と、林有里子の両親の声がとても似ていたことを証言した。
2人の人間が殺害されたことは大きかった。隠したり誤魔化したりすれば捜査の妨げになると判断した正火斗の指示だった。
聴取は一人一人行われていたが、正火斗を担当した刑事は見覚えがあった。病院で風晴から聴き取りをしに来た刑事だった。
正火斗は"華蔵透子を連れ去る時間"の用紙を渡す際に さりげなく
「桜田風晴の洞窟で使った折りたたみナイフからは何か出ましたか?
あれは真淵聖のもので、彼らは明後日には自宅に戻る予定なんです。できれば……返してやって下さい」
と聞いてみた。中年の刑事は
「何にも出てないよ。間もなく返せると思う。2人共住所は聞いているから、どうしても間に合わなければ郵送されるはずだよ」
と教えてくれた。
正火斗は胸内で安堵した。
警察車両内で行われていた聴取だったが、その時 力強く窓ガラスを叩く音がした。制服姿の警察官だった。
刑事が気づくや否や警察官は車のドアを開け
「恩田さん!! 本当に出ました!! 倉庫の中から血がついた包丁と冬靴が!!
金森香世を連行するそうです!!」
と叫んだ。
"金森香世"────洞窟所有者であり葉崎達哉の姉だ。
思わぬ名前が出てきて正火斗は驚いた。
「本当に出たか。こりゃ本当に3人やってるかもな。とにかく署で事情を聞け。オレも行く」
目の前で進む事態に、正火斗は思わず口を挟んだ。
「何故こんなに早く分かったんです? 金森香世さんと林有里子の両親の接点は!?」
正火斗の剣幕に、若い警察官が しどろもどろで説明をする。
「今朝 匿名で情報提供があったんです。"金森家の倉庫を探せば、証拠が隠されている"──と。その話では"彼女は失った弟の復讐をしていて、当主の妹を守ろうとしたのだろう"って内容だったはずです」
────やられた!!!
正火斗は唇を噛んだ。
完全に持っていかれた。
こちらの腕時計と用紙すらも──
利用されている。
金森香世に 冴木拓眞、林有里子の両親の殺害容疑がかかってる!!!
「コラ!! 学生にポンポン喋るな!!」
刑事は若い警官を はたいた。正火斗は彼らのやりとりに構わず尋ねた。
「情報提供は公衆電話からですか? 誰だか分からない方法ですよね?
金森香世は洞窟所有者だから鍵を隠し持っていても不思議はない……と。だが、金森さんは本当に鍵を所持していなかったはずです。
それに桜田風晴と真淵聖まで連れ去る動機が彼女にはない」
「それが、倉庫から鍵は出てきたんだよ。確認はこれからだけど、古いタイプの錠前の鍵で洞窟の扉のものだろうって見方が強い。
高校生達の連れ去りは──あれだろう? 当主から公開告白があったって聞いてる。"白吹の呪い"になぞらえるための偽装工作じゃないか? そうしたら"白吹の呪い"に反するために殺害した冴木拓眞への動機が隠れるから」
正火斗は穴だらけの若い警官の憶測に 頭が痛くなった。
「金森香世が3人の人間を一晩で運んで歩くのは無理だ。それに"白吹の呪い"を実行しようとした冴木拓眞から華蔵透子を守ろうとしたことが動機だったのなら、高校生2人を殺害しようとする動機もおかしい!!」
だが正火斗の言葉に警官は笑った。
「殺害まではするつもりは無かったんだろう。実際 高校生達は助かっているんだし」
正火斗は本気で殴りたくなった。
死ぬ思いだった風晴や自分達を、何も知らないで──
「だから外部にポンポン話すな!」
刑事が警官の頭を はたいているのを見て、とりあえず気持ちを落ち付かせる。
でも確信した。
警察に全てを任せていたらこの事件は酷いことになる──と。




