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炎と白銀と〜聖夜の洋館の悲劇〜僕達の推理2  作者: シロクマシロウ子
第13章 迷路の奥へ

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102 ゆるい推理

ー登場人物紹介ー

※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー

大道正火斗だいどうまさひと・3年生。大企業財閥御曹司。

大道水樹だいどうみずき・正火斗の妹。2年生。

安西秀一あんざいしゅういち・部長2年生。親が大道グループ傘下企業役員。

浅倉奏衣あさくらかなえ・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。

桂木慎かつらぎしん・2年生。明るくフレンドリー。

神宮寺清雅じんぐうじきよまさ・1年生。ややお調子者?

椎名美鈴しいなみすず・1年生。真面目でしっかり者。

桜田風晴さくらだかぜはる・田舎の農業高校2年生。


山原海(やまはらかい)・華蔵家料理人。

赤沢幸太郎(あかざわこうたろう)・新しい華蔵家運転手。

林有里子はやしゆりこ・白吹村役場職員。

 



 林有里子(はやしゆりこ)の父親と母親は血に(まみ)れて殺されていた。

 リビングダイニングの奥で台所に近い。

 足元の方には戸棚や点灯(てんとう)していないタイマー付きの電気ヒーター、ゴミ箱が置いてあるが、乱れた形跡(けいせき)は無かった。

 母親は背中への刺し傷が2箇所、父親にも背後から腰上付近(ふきん)に2箇所あると正火斗は確認した。

 一つスマートフォンが遺体の(そば)にあった。どちらのものかは決めつけられないものの、位置的には母親の物のような気がした。

 大道正火斗も人の子で──それ以上は見ていられなかった。

 廊下に足音がしたので(あわ)ててそちらに向かう。


「正火斗! 何か……」


 飛び込んで来そうな風晴と桂木を食い止めて


「入るな!!」


 と叫んだ。"そこにいろ"と言ったのに

 自分の腕の隙間(すきま)から風晴は 震える有里子を見つけていた。彼の視線は何があったのかを正火斗に問いかけている。


「林さんのご両親は 殺されている」


 風晴も桂木も言葉が無かった。多分 理解に時間がかかっている。それを待つ余裕(よゆう)も無かった。


「灯油の匂いもしていてここは危険だ。外に出て警察を呼んでくれ」


 2人の向きを強引(ごういん)に変えて声をかけた。

 風晴は振り返って


「お前は……!?」


 と聞いたので、とにかくうなずいて


「有里子さんを連れて出る」


 と彼の背中を押してやった。









 警察の規制線(きせいせん)の黄色いテープが冷たい風に揺れていた。

 桂木が


「半年に一回ペースで見るもんじゃ無いよな、ああいうの」


 とパトロールカーの中で言った。



 通報(つうほう)してすぐに警察はサイレンを鳴らして来た。

 殺害が明らかな死体は2つあるし灯油のような匂いもするともなれば、それはもう大事件だった。

 林有里子の家は 家屋(かおく)がまばらに点在(てんざい)している地域にあった。だから避難(ひなん)を呼びかけたりはしなくて済んだが、赤沢は車を移動し 聴取(ちょうしゅ)は警察車両の中で行われることになった。


 林有里子は警察署まで出向くことになったが、彼女は到着(とうちゃく)した警察に一通(ひととお)り話していた。

 近くに立っていたので正火斗や風晴達もそれを聞くことはできた。



「昨日の夕方お付き合いしている山原海(やまはらかい)さんの家に行くからと両親に連絡をしました。その時には母に『お(なべ)を作ったのに残ってしまう』と少し反対されましたが、結局 許しをもらえました」


有里子は続けた。


「夜中には母とメールをしました。『明日は午前中お客様が来るから あなたが戻って来る頃に いるかもしれない』と言うことが書かれていました。

 私が『お鍋の残りがあるなら帰ってから私が食べるよ』と送ると『お父さんと朝食べるのに丁度(ちょうど)良いから大丈夫』と返信が来ています」


 有里子はスマートフォンを警察に見せている。


「ええっと……夜11時2分に……確かに受信していますね」


 と画面を見て警察官が言った。



「あとは私は……山原海さんのお宅に泊まっていました。

 今朝 華蔵家(かぐらけ)のクリスマスパーティーで知り合った方々から連絡があって、アサクラ書房でお茶をしてから──彼らがプレゼントで当てた腕時計を 直接父に返したいと言うので 一緒に家に来たんです。そうしたら……」


 有里子は込み上げるものを必死に()えて続けた。


「家に入って呼んでも返事が無かったのでおかしいなと思いました。

 うちはリビングダイニングでお客様も大体(だいたい)そちらに通します。だからドアを開けて入ったら、なんだか変な匂いがして……それで私は苦しくて窓を開けました。部屋の中に冷たい風が入ってきましたけど匂いはマシになりました。

 奥のダイニングの方を見たら誰かが倒れていて……それが…………」


 有里子の言葉は続かなかった。

 正火斗は警察官に


「あの匂いはやっぱり灯油だったんですか? 何かを燃やそうとしたあとはあったんですか?」


 と尋ねた。

 警察官の1人が


「何もなかったね。灯油は遺体ではなくて入り口の窓の近くでの匂いが強かった。火事も計画して持ち込んだものの、そこまでを思いとどまって持って帰ったのかもしれない」


 答えた。もう1人は


「もしかしたら……密室(みっしつ)を作りたかったのかもしれないよ」


 と言いだした。


「玄関の鍵はかかっていて リビングダイニングの窓は2箇所。その一つを有里子さんが開けた。

 おそらく殺した後 犯人は窓から出たんだろう。灯油の匂いで換気(かんき)のために窓を開けてもらえれば、鍵がかかっていたかがうやむやになって、密室のようにできるんじゃないかと思ったのかも」


 なんだか……ぼんやりした推理のように聞こえる。風晴はN県警察が少し心配になった。

 桂木も同じようで、2人は無言(むごん)で顔を見合わせた。


 正火斗は1人考え込んでいた。


「窓を開けさせたい理由か…………」


 最後に有里子は一言(ひとこと)付け足した。


「それから捜査員(そうさいん)の方と確認したら 母の冬靴が一つ 無くなっています」








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