101 家族の写真たち
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。大企業財閥御曹司。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。親が大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○赤沢幸太郎・新しい華蔵家運転手。
○林有里子・白吹村役場職員。
○金森香世・葉崎達哉の実姉
◾️これまでのあらすじ
鳳翔院学園ミステリー同好会メンバーとN県白吹村の洋館ペンションで再会した風晴と聖。
しかし洋館当主の華蔵家には"白吹の呪い"があり、24日クリスマスパーティーの後、風晴、聖、冴木の3人が洋館から姿を消す。連れて行かれた洞窟から風晴と聖は救助されるが、冴木拓眞は殺されていた。クリスマスパーティーの日の調査を進める中、最も犯行の中心ではないかと思われる林家に正火斗達は向かうが…………
助手席に林有里子を乗せて 赤沢幸太郎は車を走らせた。
「林さんのお宅ですね」
と言ったあと、赤沢が道筋を確かめる様子は無い。
正火斗は
「赤沢さんは林さんのお宅をご存知なんですね」
と聞いた。小さな村落だから不思議でもないが……
「家が近いですし、私は建設会社に勤めてましたから。林さんのお宅を建てる時に携わったんです」
「へー、赤沢さん大工さんだったんですね!」
桂木が言った。
「"左官職人"ってヤツです。床や壁にコンクリートの下地塗りをするのが本職でしたね」
「じゃあ、林さんの家の壁も赤沢さんが塗ったんですね」
風晴も笑顔で言った。
「立派な家を建てて頂いてありがとうございます。……うちの前の家はオンボロでしたから」
助手席で有里子は頬を押さえているようだ。
「いやぁ、みんな家を建て替える時はそんなものですよ。今 快適に暮らされているなら何よりです」
話しているうちに車は林家に着いた。
到着した時に正火斗は言った。
「風晴、車に残っていていいんだ」
「大丈夫」
彼がそう返すのは分かっていた。
だが言わざるを得なかった。
何となくだが……嫌な予感がしている。
助手席の有里子が車から出るのを見てから──正火斗は赤沢に小声で言った。
「赤沢さん、20分して戻らなければ警察に連絡して下さい」
赤沢が目を見張った。正火斗は構わず車を降りた。
車を降りると冷たい風が顔に吹きつけた。今日は陽射しがほとんど無くて 日中も気温が上がらないようだ。
トートバックから鍵を出し有里子は玄関を開けてくれた。
1人ブーツを脱ぎ
「お父さん? お母さん?」
と中に上がって、奥に行く廊下を進んで行った。
金森香世の家のように玄関に家族写真が何枚か飾られている。
白吹村では玄関で写真を飾るのが流行りなのかもなぁと風晴は思った。
新築の家の前で家族3人で撮っている写真がある。
動画ではあまり見えなかった──白黒が混じった短髪のがっしりした男性と、後ろに髪を一つにまとめた中年の女性が笑顔でいた。
彼らだ
洞窟に自分達を置いていったのは
そう思うとなんとも言えない胸の苦しさがあった。
もっと古い写真もある。黒髪が日本人形のように長い小学生くらいの有里子が写っている。この頃に理人に“その髪型 可愛いよね”と声をかけられたのだろう。
車の中で話していた通りに 昔の家はとても小さくて 屋根も壁も剥がれていた。
有里子は奥の部屋に入って、また
「お父さん? お母さん?」
と呼びかけている。やがて
「やだ、何この匂い……」
と声がしてガタガタと音がした。
(匂い……!?)
「入りますよ、林さん!!」
正火斗は返事を待たずに靴を脱いで廊下を駆け出した。
続こうとした風晴と桂木には
「そこにいろ!!!」
と怒鳴った。2人がビクリとした程の声だった。
有里子の入ったドアを開ける前に
「きゃああああああ!」
と悲鳴が上がった。
「林さん!?」
正火斗がドアを開ける。
瞬間、開けたドアから冷たい風と共に 鼻につく灯油の匂いがした。
部屋の中では 窓が開けられていて有里子がガタガタと震えていた。
彼女が寒さに震えているわけではないことは正火斗はすぐに分かった。
驚愕している有里子の視線の先には 倒れている2人の人間がいた。誰なのか問うまでもなく、有里子はそれを叫ぶ。
「……お父さん……お母さん……!」
林有里子の父親と母親は血に塗れて────殺されていた。




