100 思いがけない事実
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。大企業財閥御曹司。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。親が大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
◇真淵聖・風晴の同級生。話すのが苦手。
○華蔵理人・華蔵家現当主。
○華蔵透子・理人の妹
○山原海・華蔵家料理人。
○冴木拓眞・華蔵家運転手。理人の同級生。
○林有里子・白吹村役場職員。
"華蔵透子を連れ去る時間"
仮にこの用紙が"冴木拓眞を連れ去る時間"や、"真淵聖を連れ去る時間"であったなら、すぐ警察に届けることを考えただろう。だがこの文章は不穏ではあるが、起こってはいない出来事だ。
しかも白吹村の駐在員ではアテにならないとは思っていた。用紙を渡しても……揉み消される可能性すらある。
風晴の洞窟で聞いた声に関する証言は有力だが──
「風晴」
手洗いからカフェに戻る彼を呼びとめる。振り返ったところに
「洞窟で声を聞いた話はしない方がいい、今は」
と声をかけた。彼はうなずいた。
彼は洞窟で3人の人間の声を聞いている。洞窟内には、実際にはもっといた気がする──とも。
確実に全員を捕らえられる状態でもなければ風晴の身の危険性が上がるだけだ。不用意には広めるべき情報ではない。
席に戻ると風晴は
「すみません。タピオカが変に詰まった感じになって……慌てました」
と説明した。桂木が
「気をつけてくれよ、戦友」
と言う。有里子も
「直ったなら良かったわよ」
と微笑んだ。
正火斗は本題に向かう。これ以上の引き伸ばしは意味も無い────
「林さん、せっかくお越し頂いたところ心苦しいんですが、僕らはできれば林さんのお父さんに腕時計を直接お返ししたいんです。話を聞きたいこともありまして。
上がらずに玄関先で全く構いませんから、ご自宅に寄らせてはもらえませんか?」
これでも頑なに拒むようなら"華蔵透子を連れ去る時間"の用紙を、この人にも見せるしかない。
正火斗は覚悟していた──なんとしても林有里子の両親に今日会っておきたい──最有力容疑者に。
「分かりました。お客様がみえているかもしれませんが、多分それくらいなら大丈夫でしょうから。
実は私も昨夜から家には帰っておりませんので、両親とは電話やメールをしただけなんです」
なんとなく気になって、正火斗は踏み込んだ。
「では昨夜はどちらに……」
有里子は目線を外して、少し照れたようになった。
「恋人のところに泊まっていました」
ヒュー と桂木が口笛を鳴らす。
「白吹村の方ですか?」
と正火斗が聞くと有里子は
「はい。洋館にお勤めの──山原さんですよ」
と答えた。
「「「え─────────!!!!?」」」
3人は驚き、大声を上げてしまった。
周りの視線に、慌てて口を閉じる。有里子は笑いながら
「私は運転ができませんから、今もここまで送ってきてもらいました」
と言った。
「お、おめでとうございます……」
正火斗はそう言うだけで精一杯だった。
まだまだ 何が起こるかは分からない────
そう思わされているかのようだった。




