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炎と白銀と〜聖夜の洋館の悲劇〜僕達の推理2  作者: シロクマシロウ子
第12章 事件と恋の混迷 

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099 明かされる聖夜3

ー登場人物紹介ー

※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー

大道正火斗だいどうまさひと・3年生。大企業財閥御曹司。

大道水樹だいどうみずき・正火斗の妹。2年生。

安西秀一あんざいしゅういち・部長2年生。親が大道グループ傘下企業役員。

浅倉奏衣あさくらかなえ・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。

桂木慎かつらぎしん・2年生。明るくフレンドリー。

神宮寺清雅じんぐうじきよまさ・1年生。ややお調子者?

椎名美鈴しいなみすず・1年生。真面目でしっかり者。

桜田風晴さくらだかぜはる・田舎の農業高校2年生。


冴木拓眞(さえきたくま)・華蔵家運転手。理人の同級生。

赤沢幸太郎(あかざわこうたろう)・新しい華蔵家運転手。

林有里子はやしゆりこ・白吹村役場職員。

 




 アサクラ&tea(ティー)ダイトーでは、正火斗、桂木、風晴が、林有里子(はやしゆりこ)の口から冴木拓眞(さえきたくま)について聞いていた。


「クリスマスパーティーにはご両親も来ていたんですか?」


 正火斗が尋ねた。


「はい。私は聖歌隊(せいかたい)もやっていますし父は指揮者(しきしゃ)ですから。それを母は撮影(さつえい)するってこともあって3人で行きました。

 まぁ、イヴの夜に誰かを家に1人残すのもなんだか寂しいですし」


「聖歌隊……お父さんは指揮者もなさっていたんですね。撮影していたなら 映像はありますか?」


 有里子は


「母が送ってくれたので……ちょっと待って下さいね」


 そう言って、スマートフォンを操作(そうさ)した。

 動画を再生すると聖歌隊の歌が始まる。『あわてんぼうのサンタクロース』を歌っているところだった。

 カメラが動いて並んでいる隊列(たいれつ)を右から左になぞっていく。だが途中(とちゅう)でピアノが(あやま)り、大きく振られる白い指揮棒(しきぼう)画面(がめん)の中で揺れた。


新藤(しんどう)さんダメダメ!! 今 楽譜(がくふ)飛んだよ』


 60歳くらいだろうか。男性の指揮者の声がして、笑い声が起こる。笑っている林有里子の顔がアップになった。


『お父さん、時間なりますよー』


 中年の女性の声がして、画像は止まった。


「ごめんなさい。コレ、リハーサルのだわ。母の声まで入ってる」


 有里子は(あわ)てて、また一つの動画を再生した。今度は『きよしこの夜』からスタートして問題無く進んでいく。

 すると突然(とつぜん)


 ガタン


 と椅子の音がした。風晴が


「本当にすみません。……ちょっとトイレに……」


 と立ち上がると手洗いに()けて行った。

 正火斗と桂木は顔を見合わせた。


 顔色が悪かった……?


 正火斗は桂木に


「様子を見てくる。──林さん、少しすみません」


 と有里子を任せて風晴の後を追った。









 正火斗が行った時、風晴は洗面台に両手をついて肩で息をしていた。


「風晴、大丈夫か?」


 近づこうとすると彼は片手を上げた。


「……大丈夫。タピオカ出したりはしないと思うけど……凄く……気分が悪い」


我慢(がまん)しないで()いた方がいいんじゃないか?」


 正火斗は風晴の背をさすろうとしたが、彼は首を振った。


「そういうんじゃない。…………正火斗、()()()だった……。あの中にいた……」


 風晴の言い方で 正火斗はすぐに気づいた。


「洞窟の中で聞いた声だな? 風晴や……冴木さんの死体を置いて行った連中(れんちゅう)の……」


 体も顔も向きは洗面台の方だったが、彼は確かに うなずいた。


「林さんのお父さんだな? 指揮者の?」


 すると風晴は小さく首を振った。


「お父さんだけじゃない…………お母さんの方も……あそこにいた……」


 "生っ白い東京の子達では、すぐにも死んでしまうだろうな"


 "朝は最低気温はマイナスだって。ここなら本当に冷凍庫になるから──仮に目が覚めて体を動かしたって……助からない。入り口には私達が鍵をかけるし出口は山だから。あの格好(かっこう)じゃ、そっちでも無理だろうね……"



 彼らの声だ

 あの闇の中で確かに(ひび)いていた声

 冷たい石の上で聞いた──



 風晴は息を(ととの)えた。



 大丈夫

 ここは洞窟じゃない

 死体もない

 寒くもない

 1人でもない

 だから──



「…………戻ろう」



 正火斗に声をかけると──その彼に立ち(ふさ)がられた。


「風晴、このまま洋館に戻れ。車で行って、赤沢(あかざわ)さんと車だけまたここに戻って来てもらえばいい」


「大丈夫だと思う」


 なんで?


「証拠は固まったようなものだ。僕は林さんの家にも行くつもりだ。行けば──両親にも会える可能性(かのうせい)は高い。顔を合わせることになる」


「多分、大丈夫」


 大丈夫じゃないだろ、全然


「もう大丈夫だと思う」


 理由もない彼の強がりに腹が立ってくる


「声だけで気分悪くなってるだろ。大丈夫じゃない」


「思いがけなかったから びっくりした。……もう大丈夫だ」


 風晴は背の高い正火斗を()けて (わき)をすり()けた。



 通り過ぎざま 彼は さらに言った。



「 今は お前がいるんだから」









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