099 明かされる聖夜3
ー登場人物紹介ー
※◆は鳳翔院学園高等部ミステリー同好会メンバー
◆大道正火斗・3年生。大企業財閥御曹司。
◆大道水樹・正火斗の妹。2年生。
◆安西秀一・部長2年生。親が大道グループ傘下企業役員。
◆浅倉奏衣・副部長2年生。中等部から正火斗に片想い。
◆桂木慎・2年生。明るくフレンドリー。
◆神宮寺清雅・1年生。ややお調子者?
◆椎名美鈴・1年生。真面目でしっかり者。
◇桜田風晴・田舎の農業高校2年生。
○冴木拓眞・華蔵家運転手。理人の同級生。
○赤沢幸太郎・新しい華蔵家運転手。
○林有里子・白吹村役場職員。
アサクラ&teaダイトーでは、正火斗、桂木、風晴が、林有里子の口から冴木拓眞について聞いていた。
「クリスマスパーティーにはご両親も来ていたんですか?」
正火斗が尋ねた。
「はい。私は聖歌隊もやっていますし父は指揮者ですから。それを母は撮影するってこともあって3人で行きました。
まぁ、イヴの夜に誰かを家に1人残すのもなんだか寂しいですし」
「聖歌隊……お父さんは指揮者もなさっていたんですね。撮影していたなら 映像はありますか?」
有里子は
「母が送ってくれたので……ちょっと待って下さいね」
そう言って、スマートフォンを操作した。
動画を再生すると聖歌隊の歌が始まる。『あわてんぼうのサンタクロース』を歌っているところだった。
カメラが動いて並んでいる隊列を右から左になぞっていく。だが途中でピアノが誤り、大きく振られる白い指揮棒が画面の中で揺れた。
『新藤さんダメダメ!! 今 楽譜飛んだよ』
60歳くらいだろうか。男性の指揮者の声がして、笑い声が起こる。笑っている林有里子の顔がアップになった。
『お父さん、時間なりますよー』
中年の女性の声がして、画像は止まった。
「ごめんなさい。コレ、リハーサルのだわ。母の声まで入ってる」
有里子は慌てて、また一つの動画を再生した。今度は『きよしこの夜』からスタートして問題無く進んでいく。
すると突然に
ガタン
と椅子の音がした。風晴が
「本当にすみません。……ちょっとトイレに……」
と立ち上がると手洗いに駆けて行った。
正火斗と桂木は顔を見合わせた。
顔色が悪かった……?
正火斗は桂木に
「様子を見てくる。──林さん、少しすみません」
と有里子を任せて風晴の後を追った。
正火斗が行った時、風晴は洗面台に両手をついて肩で息をしていた。
「風晴、大丈夫か?」
近づこうとすると彼は片手を上げた。
「……大丈夫。タピオカ出したりはしないと思うけど……凄く……気分が悪い」
「我慢しないで吐いた方がいいんじゃないか?」
正火斗は風晴の背をさすろうとしたが、彼は首を振った。
「そういうんじゃない。…………正火斗、あの声だった……。あの中にいた……」
風晴の言い方で 正火斗はすぐに気づいた。
「洞窟の中で聞いた声だな? 風晴や……冴木さんの死体を置いて行った連中の……」
体も顔も向きは洗面台の方だったが、彼は確かに うなずいた。
「林さんのお父さんだな? 指揮者の?」
すると風晴は小さく首を振った。
「お父さんだけじゃない…………お母さんの方も……あそこにいた……」
"生っ白い東京の子達では、すぐにも死んでしまうだろうな"
"朝は最低気温はマイナスだって。ここなら本当に冷凍庫になるから──仮に目が覚めて体を動かしたって……助からない。入り口には私達が鍵をかけるし出口は山だから。あの格好じゃ、そっちでも無理だろうね……"
彼らの声だ
あの闇の中で確かに響いていた声
冷たい石の上で聞いた──
風晴は息を整えた。
大丈夫
ここは洞窟じゃない
死体もない
寒くもない
1人でもない
だから──
「…………戻ろう」
正火斗に声をかけると──その彼に立ち塞がられた。
「風晴、このまま洋館に戻れ。車で行って、赤沢さんと車だけまたここに戻って来てもらえばいい」
「大丈夫だと思う」
なんで?
「証拠は固まったようなものだ。僕は林さんの家にも行くつもりだ。行けば──両親にも会える可能性は高い。顔を合わせることになる」
「多分、大丈夫」
大丈夫じゃないだろ、全然
「もう大丈夫だと思う」
理由もない彼の強がりに腹が立ってくる
「声だけで気分悪くなってるだろ。大丈夫じゃない」
「思いがけなかったから びっくりした。……もう大丈夫だ」
風晴は背の高い正火斗を避けて 脇をすり抜けた。
通り過ぎざま 彼は さらに言った。
「 今は お前がいるんだから」




