#42 奏多~心の異変~
(俺は毎日のように幸せに包まれながら、楽しい生活をしていていいのだろうか・・・・・・?)
奏多はふと思ってしまう。
今まで復讐心で生きてきてここまで強くなったのに、その心と矛盾して、楽しい人生を
送っている。
そんな複雑な気持ちで一杯だった。
だからこそ考えてしまうのだ。 復讐を忘れて"今の仲間"と楽しく過ごしている未来が・・・・・・
それを、どうしても許せない心もある。
許してしまえば、今まで復讐を目標にして生きてきたのに、自分の存在意義がなくなってしまうの
じゃないだろうか?
そう思ってしまう。
(あー、俺は一体何をしたいんだ・・・・・・?
復讐か? それとも、今の人生を楽しむことか?)
色々考えていると、自分を見失ってしまう。
復讐を成し遂げるために転生した自分・・・・・・
昔までは思っていたことも、すっかりと、変わってしまう自分がいる。
考えていると、ますます判らなくなってくる。
正直言うと、奏多も考えるのがつらくなってくる。
自分を見失いそうで怖い。 それが一番の理由だ。
(俺の心はいつでも矛盾だらけなんだな・・・・・・)
そう。 今現在、奏多の心は揺らいでいる。
このまま、復讐をするか・・・・・・それとも、今の日常を続けたいのか・・・・・・
けれども、思ってしまう。
その思いで、奏多は復讐心に浸らす決定的な一撃。
「ひかり・・・・・・」
それをふと口に出してしまっている。
前世の奏多の妹の名前を。
(そうだったな・・・・・・なんでこんなにも大切なことを忘れていたんだよ・・・・・・
これで、今の日常を続けたい・・・・・・笑わせるな・・・・・・
俺には俺のやるべきことがある。 いや、あったはずだ。
なのにほかの事で心を揺るがされるなんて・・・・・・まだまだ未熟だな。
けれど、これで心の靄が取れた気がする。)
やはり、奏多の中では妹の存在は決定的な一撃を精神に与えることが出来るくらい
影響力が強かった。
前世では、無能な奏多を兄と慕ってくれていて、どこに行くにも付いてくる。
その時、奏多は理由を聞いた。 『どうしてお兄ちゃんの後をずっと付いて来てくれるの?』
『だって、兄さんの近くの方が安全だと思うからだよ。 それだけの理由じゃだめ・・・?』
『いや・・・ だってさ、僕は無能だよ・・・? 僕について来るなら、姉ちゃんに付いて
行ってた方がよっぽど安全だとおもうけど・・・』
『姉さん頼りない・・・・・・だから、兄さんの方が信用できる・・・・・・』
『そ、そうか・・・・・・』
要するにだ・・・ ひかりが言いたかったのは、強さだけがすべてじゃない。
優しさも入れての強さだと。
その言葉の意味を知った奏多は何があっても、自分の傍にいる限り一生守ってやろうと思った。
だけど、その結果がこれだ。
自分に力が無かったせいで、家族が姉ちゃんの手によって殺され、自分も殺された。
その時気付いた。 この世界はすべてが力によって支配できることを。
その力を持っていれば、妹も守れたことも。
『僕は・・・・・・いや、俺は・・・・・・力を手に入れて姉ちゃんの暴走を止める。
そして、守れなかったものを後悔しながら、今、傍にいる人を守る。』
(そう決めたのは俺だったな・・・・・・何時しか、そんな記憶さえ、塗り消されていたん
だな・・・・・・
だけど、もう見失わない。 自分の存在理由を・・・・・・
そして、いつかそれを終わらせて、俺は普通の日常に戻る・・・・・・)
そう思いながら、手を天井に上げゆっくりと眠りにつくのであった・・・・・・




