#35 木戸聖夜VS《静寂の闇》桐生 香織Ⅰ
奏多が質問攻めをされおよそ20分・・・・・・
質問攻めが終わると直ぐに部屋を後にし
(絶対に怨む。 絶対に愛梨を怨む。)
と走りながらそんな事を奏多は考えていた。
それもそうだろう。 やってもいないことを質問され、奏多は嘘偽りなく答えていたが
愛梨が『嘘言わないでください シクシク』 とウソ泣きをしはじめ、こよみは一層怒っていた。
奏多も奏多で必死に弁解をしようとしていた物の、こよみは愛梨の方を完全に信じ切って
いて、奏多のゆうことはまるで無視。
聞いてもらえないのが判ると、奏多は弁解を諦め素直に嘘偽りしかない話を今まで
されていたのだから・・・・・・
トーナメント戦の会場に着くと、既に聖夜と相手の人がリングへと上がっていた。
奏多は適当な席を見つけ座ろうとした。 それと同時に・・・・・・
『それでは! 木戸聖夜選手VS《静寂の闇》桐生 香織 選手の試合を始めたいと
思います! 実況は私、石田 亜由美と『神無月 桜』でお送りします!』
『『『『オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!』』』』
石田が言った後、開始の合図が出された・・・・・・
「ごめんなさいね、木戸君。 私はこの試合で負けるわけにはいかないの・・・ だから勝たせて
もらうよ」
「ハハハ! それは僕も同じですよ桐生先輩。 僕が勝たせてもらいますよ!!」
両者は軽く挨拶? を交わした。 そして開始の合図が鳴った瞬間・・・・・・
リング上が漆黒の闇へと誘われた。
『おっと!!! 出ました! 学園ランキング第2位! 《静寂の闇》桐生 香織選手の
漆黒のベール! 名前の由来はよく判りませんが、この技は嘗て生徒会長をも苦しませた
技の一つ! ここは神無月さんお願いします。』
『はい。 この技は相手の視覚、聴覚を奪う能力になっています。 私たちからはこの
結界のお陰で中身を見ることが出来ますが、結界の中は暗闇になっています。
桐生選手の二つ名《静寂の闇》はそこから由来して付けられました。』
『《静寂の漆黒》じゃダメだったのですか?』
『それだとニュアンスが可笑しいので"闇"になったのですね。』
『なるほど~!』
実況が解説している中聖夜は第6感のみを頼りにして戦っている。
桐生の気配、足音が完全に消えている。
けれども、時々気配が判るときがある。 だが、そちらに剣を振ると、反対側に
桐生が現れ横に一閃。
それをぎりぎり剣で防ぐ聖夜。 聖夜がはっきりと認識できる距離は僅か1mほど。
相手の振った剣を確認してからでは防ぐことは不可能。
だけど、聖夜はしっかりと反応しその一閃を自分の剣でしっかりと防いでいる。
表情は判らないが、桐生の表情は少し歪んでいるようにも見えた。
桐生は自分の間合いから自ら飛び出し
「結構やるね木戸君。 けれども、これは防ぎきれるかな?」
「なっ???!!!」
そう言い、聖夜は地面に跪いた。 なぜだ? と聖夜は頭の中で思考を巡らせた結果・・・
「麻痺の魔法・・・・・・」
と、誰ともなしに呟いた。 だが・・・・・・
「よくわかったね。」
聖夜の耳元でそういわれた。
それに一瞬で反応し、下から上に向かって一閃・・・ 手応えは無し・・・
「・・・でもどうやって・・・ 魔法の起動はしていないはず・・・」
「いえいえ。 魔法式はしっかりと起動しましたよ。 木戸君が気にしていなかった
からだと思いますよ」
「ハハハ・・・・・・ そうだとしたら・・・注意しなければなりませんね・・・」
聖夜は余裕そうな声で言っているが、体が弱っているのは丸判り。
そして、打つ手がないことも多分桐生は知っているだろう。
『おっと! さっきから木戸選手が一歩も動かない! 跪いたままその場から動かない!
一体どうしたのか?!』
『あれは、麻痺の魔法ですね。』
『ですが、魔法式は一切組まれていないように見えますが・・・』
『すみませんが、そこはノーコメントで・・・ これを言ってしまえば次から戦うときに
桐生選手の不利になりますので・・・・・・』
『そうですか・・・ 気を取り直して・・・・・・ 木戸選手は神無月選手が暴いた弱点に
気付き、見事勝利することが出来るのか?!』
勿論そんな実況の声は一切聖夜には聞こえてはいない。 闇の中、あるものは自分と相手だけ。
桐生の声以外は完全に遮断されている。 ましてや、聖夜の体は絶賛麻痺中だった。
そんな状態で聖夜はどう戦うというのか・・・・・・
(体が・・・思うように動いてくれない・・・・・・ 糞っ!! なんで魔法式を組み立てずに
魔法を使える? どれが、この魔法の弱点だ?)
などの思考を巡らせている。 けれども答えは見つからない。
その前に桐生は動いていた。
聖夜の真上から頭をかち割る様に一閃・・・・・・ だが、聖夜の頭に剣がめり込むと同時に
聖夜の体は霧のようになり、消えていった。
「どうして・・・・・・?」
そう。 それっきり聖夜の気配が完全に消えた。 桐生には漆黒の闇が視界を邪魔する
事は無く、リング上も普通に見渡せる。 だが、リング上には桐生唯一人。
誰ともなしに呟いた。
「どう・・・して・・・・・・
どうしてどこにも木戸君は居ないの・・・?」




