#36 木戸聖夜VS《静寂の闇》桐生 香織Ⅱ
「どう・・・して・・・・・・どうしてどこにも木戸君が居ないの?」
聖夜は斬られると同時に姿が消えた。
それには桐生をはじめ、観戦している人も驚いている。
だが、それ以上に驚いているのは奏多だった・・・
(どうしてだ・・・どうして、姉ちゃんの技を使える?!・・・・・・)
そう。 それは奏多が一度だけ見たことのある技だった。
奏多は原理を細かくは教えて貰ってはいないが、相手の魔法自体を反射
する技だ。 と前世の姉ちゃんから聞いている。
誰が使えたって可笑しくはない。 と思うだろうが、その技は姉ちゃんが生み出した
固有魔法みたいな物で、使える人は姉ちゃんだけなはずだ。
だが、奏多の前で聖夜は姉ちゃんと同じ技を使っている。
そこで脳裏に一つ思い出した。
(まさか・・・あの日に姉ちゃんの技を盗んだっていうのか?!)
それは正解だった。 聖夜はあの襲撃で両親を殺される寸前、姉ちゃんが使っていた
技を見ていたのだ。
(けれど辻褄が合わない・・・ そもそも小さい頃でも聖夜の洞察力はここまであったのか?
しかも、姉ちゃんから技を盗めるなんてありえない・・・・・)
そうだ。 西山 茜の展開する魔法は動体視力で追いつけるはずも無い展開スピードで
小さい頃の聖夜には到底不可能だ。 奏多はそう思っている。
けれども、聖夜はそれを完璧に使いこなしている。
一応奏多も使えるが、聖夜に見せたことなど勿論ない。 切り札にする予定だったのだから。
(ハハハハハ・・・・・・まさかここまでの観察力を持っているなんて・・・なんてチーター
だよ・・・・・・)
聖夜は消えたのではない。 もともと立っていた場所に殺気を残し、それを具現化していた
だけだ。
聖夜は現在リングの端にいる。
反射 で周りに霧のように散乱する魔力を跳ね返し、自分の体に触れないように
していた。
そして、聖夜は気づいた。
(まさか、この魔力に触れなければ位置が掴めないのかな?)
聖夜の考えていることはドンピシャで当たっていた。
桐生の技は、対象者がその魔力に触れないと魔法を瞬時に起動できない。
そう。 桐生は周りに漂っている魔力霧に麻痺の魔法を乗せて聖夜に直接起動式を
組み込んでいたのだ。
いくら精霊使いであっても、人体に刻まれた魔法式に気付くことが出来ない。
なぜなら、精霊使いそのものが、大きな魔法式みたいな物だからだ。
自分の体に刻まれている魔法式にいちいち反応していたら、まともに戦闘も出来ないだろう。
だから、人体に直接起動式を構築したら、対象者に気づかれる事無く魔法を使うことが
出来る。
それは、メリットでもあり、デメリットでもある行為だ。
幾ら桐生が離れたところから人体に魔法式を構築できるとしても、離れたところからでは
通常の10倍以上の魔力を使うことになるだろう。
桐生は唯でさえリング状に魔力を使い霧をかけているというのに、通常の10倍の魔力を使えば
当然魔力はスッカラカンになる。
そんなデメリットもありながらも、桐生の魔力は減っていないようにも見える。
(まさか・・・・・・)
聖夜がたどり着いた答えは・・・霧を自分の体内で循環させている。
と言うものだ。
当然魔力は"無限"と言うことではないが、桐生の魔力量を3000万Hzとしよう。
そのうち2000万Hzを使い、リング上を覆う。 すると残りの魔力は当然、1000万Hzになる。
だが、使った魔力が消えるのではなく"霧"になるとしたらどうだろうか?
桐生の残りの1000万Hzの内、魔法を構築し100万減ったとしよう。
残りの魔力は900万Hz・・・・・・
けれども、魔力が本当に霧に変わるのだとしたら?
所有魔力は減るが、周りに散乱している霧に+100万Hzされる。
そうしたらどうだろうか?
もし聖夜の考えている説が正しかったらどうだろうか・・・・・・
言うなれば漆黒のベールの効果範囲自体が体内ってことだ。
そうなれば桐生の魔力は実質"無限"ということになる・・・
そんな化け物相手に聖夜の魔力量で足りるのだろうか?
当然答えは"否"だ。
相手は魔力を実質無限に使える化け物。 だけども、聖夜の魔力は決まっている。
持久戦に持ち込まれれば当然聖夜の負けになる。
(この技の突破口が全く見つからない・・・・・・ くっ・・・寝ていないせいで
頭もロクに回ってくれない・・・・・・)
と聖夜は苦笑い交じりに思う。
それをみた精霊、蓮子は
「なに笑ってるの? キモイ。」
「・・・・・・」
苦笑いを見た蓮子は何の躊躇いも無く吐き出す。
暴言を言われた聖夜はと言うと、無言。
時だけが過ぎていく中桐生は
「どこにいるの? 木戸君。 早く決着を着けようよ。 隠れてないでさぁ!」
だが、返答はしない。
返答をしてしまうと瞬時に居場所がばれるだろう。
(何の策も無く、返答をしたら確実に負けるだろうな・・・・・・)
そう思いながら聖夜は自分にかかっている麻痺の魔法の解除を急いでいた・・・・・・




