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黒歴史(最強設定)で目覚めた俺の異世界デバッグ生活 〜最強の能力は魔素係数研究の肥やしです〜  作者: じゃろうし
人との関わり

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第30話:初期資金ゼロの現実と、金鉱山からのダイレクト・インポート

第7話と第10話に☆が付きました!!

頂いた挿絵ありのマークとなります。

街の喧騒から外れた裏路地。その突き当たりに立つ二階建ての古びた空き家(物件No.042)の前で、俺とエリシアは足を止めた。


「イメージ通りだな……さて、いくらくらいなんだ…………あ」


「どうされましたか、ジェイ様?」


認識阻害の片眼鏡モノクルと黒ハーフケープを纏ったエリシアが、不思議そうに首をかしげる。


「エリシアさん……大変なことに気づいた。俺はこの街の貨幣を全く持ってない」


「……あ」


エリシアの動きがピタリと止まった。


観測拠点サーバーハブでの生活は完全な自給自足であり、魚も水もエネルギーも権能と自律システムで完全に内製化(ローカル生成)していた。そのため「お金を払って不動産を買う」という極めて基本的な社会的プロトコル(経済活動)に必要なリソースの準備を、すっかり失念していたのだ。


「エ、エリシアさんは……その、手持ちの現金とかは……?」


「申し訳ありません……。私がダンジョンで救出された際、装備品も所持金もすべて失っておりました……。一応、以前の冒険者名義で冒険者ギルドに預金口座はあるのですが……」


「……あー、今のエリシアさんは『死亡した別人』扱いだから、ギルドの窓口で本人確認(認証)を通したら速攻で正体がバレてコンフリクトを起こすな」


「はい……引き落としは不可能です……」


エリシアが申し訳なさそうに眉をひそめる。完全に資金ショート、初期キャッシュゼロでのスタートだ。


《あー☆ ジェイくん、せっかく現地デプロイしたのに資金調達の事前テスト(見積もり)忘れてたのウケるー☆ 異世界の土地って勝手に不法占拠したら普通に街のガード(セキュリティ)に引っかかって強制排除(BAN)されるよー☆》


(……静かにしてろ。今、工学的解決策を構築中だ)


脳内ギャル通信を軽くスルーし、俺は気を取り直してエリシアに向き直った。


「とりあえず、正確な必要キャッシュ(買い取り金額)を把握しよう。エリシアさん、この空き家の購入価格を調べてきてくれないか?」


「承知いたしました! 神器に慣れるのも兼ねて、行って参ります!」


エリシアはハーフケープのフードを深めにかぶり、すっと気配を殺して路地裏の奥へと消えて行った。


30分後、何事もなかったかのようにすんなりと戻ってきたエリシアが報告する。


「商業ギルドで確認してまいりました。あの空き家は長年放置されているワケあり物件らしく、買い取り価格は金貨500枚とのことです」


「相場からすると安いんですか?」


「相場からするとだいぶ安目ですが」


「金貨500枚か……。よく分からないけれど、一般人が暮らすときの一年間の平均金額ってどのくらいですか?」


「……もちろん幅はありますが、金貨10枚あれば、1人なら何とか暮らせます…」


「!!」

(仮に年間100万円で暮らせるとして、1金貨=10万円…、いずれにせよ50年分……)


「家って高いんですね…」


「この街は冒険者が集まる街ですから、物価は高めですね」


「うーーん。地道に冒険者ギルドで低ランクの依頼をこなして稼ぐ、なんて手動の運用(運用コスト高)は絶対に嫌なぁ。目立つし時間がかかりすぎる」


俺は腕を組み、工学的な代替案チート・バイパスを脳内でコンパイルし始めた。


要するに、物理的に価値のある「貴金属ノード」をこの本番環境にローディング(搬入)し、街の市場で正規の通貨へとフォーマット(換金)すればいいだけの話だ。


「よし……『召喚/送還』の権能を使う」


俺は、一度利用して忌避感がなくなった権能を遠慮なく利用することにした。


(金貨があるということは、金脈があるはず。定義:未発見の金脈から金貨10,000枚相当の金をインゴットで…『召喚』!)


パッと空間が歪み、俺の手のひらに、ズシリとした重みを持つ黄金色の金属塊──【純金のインゴット】が5本、静かに姿を現した。


「なっ……!?明らかに純度が高い金塊を…… 詠唱も魔法陣もなく、どうやって……!?」


エリシアが片眼鏡の奥で目を丸くする。


「ただの物理オブジェクトのダイレクト・インポート(直接呼び出し)ですよ。さて、これを商業ギルドか両替商に持ち込んで換金すれば、初期資金の問題は一瞬で解決(デバッグ完了)だ」



さすがにエリシア一人で大金を扱うのは目立ちすぎる。

二人そろって、金のインゴットの売却と店を買い取りに、商業ギルドを訪れた。


重厚な石造りの商業ギルド本部。その重い扉をくぐると、熱気と活気に満ちた大広間が広がっていた。


受付カウンターで『金塊の買取』をお願いすると、奥の応接室に通された。

応対した職員の目の前に、そっと金のインゴットを置く。


職員は、一目見て目をむくと、慌てて部屋を出て行った。

あれよあれよという間に、さらに奥にある貴賓室に通された。当然のように屈強な警備員が複数いる。


この世界の物理法則に筋力は関係ないと知っていても、目の前で屈強な身体を見ると強そうだなという感想が生まれる。こういう印象がコンセンサスにつながっているのだなぁと認識する。ディスプレイ越しでは分からないものだ…。


さて、現在、通された部屋の重厚な革張りソファの対面に座っているのは、商業ギルド長であり査定責任者──熟練の眼光を持つ老商人ゴルドン・オーヴェイン氏だ。


「……ふむ。まずは拝見しよう」


俺が革袋から取り出し、ベルベットの布の上に置いた【純金のインゴット】。

その瞬間、老商人の目が丸くなり、部屋の空気が凍りついた。


老商人は慌てて単眼鏡を取り出し、震える手で金を鑑別し始める。試薬を垂らし、重量と魔力伝導率を計測する魔法道具をかざすたびに、彼の額から冷や汗が噴き出していった。


「ば、バカな……! 不純物が一切存在しない……! これほどの精錬精度、王立錬金術工房の至宝すら遥かに凌駕しておる……! 一体どこでこれを!?」


「未知の未発見領域から直でインポート……いや、運良く入手したものでして。これで空き家の買い取りと換金をしたいのですが」


「……お客さん。これは一本あたり……優に金貨100,000枚を下らない価値がある逸品だ」


「100,000枚!?」


思わず声が出そうになった。金貨1枚10万円換算とすれば、1本で100億円規模の超絶ハイエンド資産である。それが手元に5本。完全に過剰スペック(オーバースペック)なリソースをデプロイしてしまった。


「だがな……」


老商人は単眼鏡を外し、鋭い眼光で俺とエリシアを凝視してきた。


「これほどの品物を動かすとなれば、……お二人さん、まずは身分証明書の提示を願おうか?」


(ッ……!! 身分証明(認証エラー)だと……!!)


冷や汗が背中を伝う。

俺は転移者なのでこの世界の身分証など持っていない。エリシアさんに至っては「死亡扱い」の元冒険者だ。ここで下手に身元を調べられれば、コンフリクトを起こして速攻で街のガードに身柄を拘束(BAN)される。


《あー☆ ジェイくん大ピンチじゃんー☆ 超高純度なチート金塊出しちゃったから、社会のアンチマネロン(資金洗浄)システムに引っかかっちゃったねー☆》


(……笑ってないで解決策のコンパイルを手伝え!)


俺は並列思考(賢者の石)を最高速で回し、この社会的バリデーション(身元確認)を正常にバイパスする論理回路(提案)を組み立てた。


「……ギルド長。では、こう提案させてください」


俺はテーブルの上に、さらにもう一本の純金インゴットを静かに並べた。


「なっ……もう一本!?」


「このインゴット1本を、身元保証の担保金として、商業ギルドに10年間無償で預けます」


「……なに?」


「俺たちは訳あって身分を明かせない身です。ですが、もしこの金塊が盗品であれば、これほどの超高品質な品です、近いうちにどこかの国家や大貴族から必ず捜索の噂が流れるはずだ。……違いますか?」


老商人が息を呑み、髭を蓄えた顎に手を当てた。


「……確かに。これほどの品が盗まれたとなれば、大陸中のギルドに緊急手配が回るはず。だが、それがないということは……」


「ええ。人知れず眠っていたダンジョン産、あるいは未踏領域の遺産と考えるのが自然でしょう。俺たちは1本を換金し、もう1本を『10年間の保証金』としてギルドに預託する。もし10年間のうちにこの金塊に関する犯罪トラブルが一切起きなければ、俺たちの身元の白さを認めて保証金を返却していただく。……もちろん、預かり手数料は引いていただいて構いません」


プログラミングで言えば、「即時認証(フル認証)」をスキップし、「10年間のサンドボックス観察(猶予期間)」に移行させる例外処理パッチの提案だ。商業ギルド側にとっては、金貨10,000枚相当の超高額資産を10年間ノーリスクで運用・保持できる破格のメリットがある。


老商人は目を閉じ、長考に入った。

部屋に沈黙が流れる。エリシアが緊張した様子で片眼鏡の奥の瞳を揺らしていた。


やがて──老商人が目を開けた。


「……いいだろう。その提案、商業ギルドとして受諾しよう」


老商人は満足気に不敵な笑みを浮かべ、同意の書類を広げた。


「10年間問題が起きなければ、手数料10%を引いて返却する。……フン、得体の知れない客だが、商売のセンスは悪くない。これで商業ギルドの身元保証をと『ギルド登録口座』を開設してやろう。

そうだな、私の遠い親戚とするのが無難だろうな。」


「感謝します、ギルド長」


俺は密かに胸を撫で下ろした。セキュリティ監査の回避、大成功だ。



それから1時間後。


インゴット1本の換金によって得られた天文学的な額の金貨から、空き家(物件No.042)の買い取り資金として金貨500枚を即座に手渡しで支払った。残りの膨大な資金は、商業ギルドの仮口座へと安全にデポジットされた。手元には普段使い用の金貨、銀貨、大銅貨と銅貨も存在する。

(およそ日本換算で、金貨一枚10万円、銀貨1000円、大銅貨100円、銅貨10円といったところか)


こうして、正式に鍵と権利書を手に入れた俺たちは、ついに自分たちの『館』へと足を踏み入れた。


「ふぅ……初期資金ゼロからの資金調達と物件確保、無事にデバッグ完了だな」


《おつかれー☆ 一時はどうなるかと思ったけど、相変わらず屁理屈みたいな例外処理で切り抜けるのうまいねー☆》


(屁理屈じゃない、社会システムへの適切なパッチ適用だ)


「さて……エリシアさん。開店準備に取りかかりましょう」


「はい、ジェイ様! 」


まずは、この古びた館の手入れから始めよう。


---

ステータス

住居:自己所有(金貨500枚相当、訳あり?)

手持ち金額:金貨20枚、銀貨500枚、大銅貨3,000枚、銅貨20,000枚

預入れ金額:金貨 100,000 - 500 - 30 = 99,470枚 (99億4700万円くらい)

身元保証金:金貨 100,000枚分のインゴット(手数料10%)

手持ちインゴット:ルリのところに送還済み3本(300億円相当)


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