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黒歴史(最強設定)で目覚めた俺の異世界デバッグ生活 〜最強の能力は魔素係数研究の肥やしです〜  作者: じゃろうし
人との関わり

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第29話:安全第一の引きこもり街生活と、不具合(悩める人間)の受付ポート

第7話と第10話に☆が付きました!!

頂いた挿絵ありのマークとなります。

女神がいなくなってから、俺は一晩考えた結果を二人に共有した。


「……というわけで、女神(トップ管理者)の要件を論理的に詳細分析した結果、俺たちが取るべき最適解が導き出された」


観測拠点サーバーハブのメインモニター前。

俺──ジェイ・ロンこと黒木勉は、腕を組んでホログラム画面に映し出されたフローチャートを指し示した。


「要件1:『生身で街に行き、人間の営みや感情のログを直接収集すること』。

要件2:『本番環境(社会構造)に余計なバグや大規模なコンフリクトを起こさないこと』。

……この二つを両立させるシステム運用、それこそが『街の中に潜伏ステルスし、引きこもりながら情報が集まる受付ポートを構築する』ことだ!」


「あー……☆ 要するにさー、街には行くけど自分からは一歩も外に出ないで、向こうから勝手に人間模様ログが舞い込んだら最高じゃん☆ っていう極論の引きこもりロジックだよねー☆」


ソファでくつろぐルリが、ポテトチップスをかじりながらジト目で手厳しいツッコミを入れてくる。


「屁理屈じゃない、インターフェースの最適化だ。女神様も『街に行って人間を観察しろ』とは言ったが、『街の中を走り回って冒険者になれ』とは一言も言っていない。……さて、問題はエリシアさんの扱いだ」


俺は隣で神妙な顔をして立つ彼女に向き直った。


「エリシアさん。あなたのパーティは全滅したことになっているはずだ。すなわち『ダンジョン内で死亡または行方不明』として処理されている。君がそのままの姿で街を歩けば、社会的なコンセンサスに重大な不整合が生じる」


「はい……。本来ならば、命を落としていたはずの身。私が街に姿を現せば、余計な混乱を招いてしまいます……」


「だから、あなたには『まったくの別人』になってもらう。そのための専用アセット(小道具)をビルドした」


俺は『凡者の小道具』の権能を発動し、手のひらの上に二つのオブジェクトを生成した。

一つは、細やかな銀細工が施されたシンプルな『片眼鏡モノクル』。

もう一つは、しなやかな黒革の『フード付きハーフケープ』だ。


「これは……新たな神器ですか?」


「いやただのアセットですが……。機能はシンプルです。モノクルを装着すると、周囲の人間ノードの認知プロトコルに割り込み(インサイト干渉)をかけ、あなたの印象や特徴を物理エンジンレベルで『ただのNPCモブ』として処理させます。顔の造形や声の帯域、魔力の波長まで、認識のプライオリティを極限まで印象に残らないようにします」


「つまり……誰も私の正体に気づかない、と?」


「ハーフケープの方は、着用していると私と念話リモートチャットが使えます。そして、そのフードをかぶると、存在自体もまるでないように感じさせます。」


「素晴らしい……! ジェイ様の叡智、まさに神技です……!」


エリシアは感銘を受けた様子で片眼鏡を装着し、ハーフケープを羽織った。瞬間、彼女の持つ圧倒的な美貌と高位の魔術師としての凛とした存在感が、まるで背景の壁紙と同化したかのように希薄になる。認識阻害パッチの適用確認、コンパイル成功だ。


「よし。次は街での活動拠点と『情報収集のインターフェース』の決定だ」


俺はリモートダッシュボードを操作し、過去1ヶ月のデータ・パイプラインから抽出した「街の地図」と「物件データ」を展開した。


「1ヶ月の監視ログから、一番目立たず、かつ人間の生の感情や不具合ログが集まる場所を選定した。商業区の路地裏にある、二階建ての古びた空き店舗だ。一階を『店舗空間』、二階を俺たちの『居住・監視スペース』とする。……そして、一階で行う商売は『占い師』、裏の顔として『情報屋』だ」


「……う、占い師と情報屋!?」


「そうです。街の一般市民から冒険者、果ては裏社会の人間まで、悩みやトラブルを抱えた人間(バグの発生源)が自ら足を運び、勝手に情報を吐き出していく最高のデータ収集ポート(窓口)。占いは『愚者の眼』と『賢者の石』によるリアルタイム解析・確率予測を行えば、100%当たる『神占い』として機能するはず。……俺は二階のモニター室に引きこもり、一階の対面接客は認識阻害を纏ったエリシアさんに『店主』として対応してもらおうと。実際の鑑定結果は二階から念話で伝えて喋ってください」


完璧な遠隔オペレーション計画に満足して頷く俺に対し、ポテトチップスをかじっていたルリが呆れたように「はぁー」と深い溜息をついた。


「ねぇジェイくん☆ それ、明らかにアウトだからねー☆」


「……なにがアウトなんだ?」


「だってさー☆ 女神様が怒ったのって、ジェイくんが『直接人間と関わらずにリモートで済ませてるから』でしょー?☆ なのに、一階にエリシアお姉さんを置いて自分は二階からマペットみたいに遠隔操作するとか、それエリシアお姉さんを『神の端末ジェイの端末』にしてるだけじゃんー☆」


「……ッ!?」


「むしろ端末階層が増えているから、速攻で女神様が激怒してブチ切れられるよー☆ 下手したら、この観測拠点ごと今度こそ初期化ロールバックされちゃうかもねー☆」


胃のあたりがズキリと痛む。……確かにその通りだ。トップ管理者の直々監査を舐めてはいけない。「人間と直接対面してログを取れ」という命令を言葉通り回避しようとしたら、より苛烈なペナルティが下る可能性が高い。


「う……じゃ、じゃあどうすればいいんだ? 生身で表に出るのはリスクが大きすぎるぞ」


「だからさー☆ 役割を逆にすればいいんだよー☆」


ルリは指を立て、名案と言わんばかりにニカンと笑った。


「エリシアお姉さんは、『受付・案内&ボディガード』を担当してもらって、奥の小部屋でジェイ君自身は『対面で直接占い(ログ収集)』をするの! これなら最低限の接触で『生身で人間と直接対面して対話してる』っていう実績ができるから、女神様も文句言えないでしょー☆」


(というか、あんたに何かあった時には世界が5回くらい滅びているんだけれど……)

相変わらずの度を越えた臆病チキンさに、ルリは内心苦笑しつつ楽しんでいる。


「なるほど……! エリシアさんの高い魔導知識と戦闘力を受付・防衛ファイアウォールに回し、俺自身はそこを抜けてきた安全なパケットだけ対応するのか……!」


これなら正体を隠したまま、安全圏を確保しつつ女神の要件を満たせる。完璧な代替案だ。


「ルリ、手厳しいツッコミだったが助かった。エリシアさん、受付と店舗のセキュリティを頼めますか?」


「はい! ジェイ様のご指示とあらば、この身に代えても『館』の安全をお守りいたします!」


「よし……送還で移動しよう。送還対象:俺とエリシアさん、ターゲット:街の裏路地、物件No.042の近辺。……これより、人間の街への『現地デプロイ』を開始する!」



街についた。空に手を振ってみる。


《ジェイ君☆ちゃんと見えてるよ…頑張ってねぇ☆》

一番最初に出会って以来久々の脳内会話だ。

話している口調で慣れたせいか、脳内ギャル語も不快感はない。


「さて……エリシアさん。開店準備にとりかかりましょう…」

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