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黒歴史(最強設定)で目覚めた俺の異世界デバッグ生活 〜最強の能力は魔素係数研究の肥やしです〜  作者: じゃろうし
人との関わり

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第28話:運営の突撃監査と、強制デプロイ通知

第7話と第10話に☆が付きました!!

頂いた挿絵ありのマークとなります。

ギギギ……ッ、ズズズズズ……!!


観測拠点サーバーハブの中央、空間の断裂ポータルから放たれる極彩色の光芒が、部屋全体を神聖かつ圧倒的な「高密度システム権限」の圧力で満たしていた。


「こ、これは…神よ……! 創世の理を統べし、大いなる女神様……ッ!」


エリシアは何を悟ったか、床に両膝と額を擦り付け、全身を震わせて平伏している。高位の魔術師である彼女だからこそ、この空間を埋め尽くす存在が「世界の根幹を定義する絶対者」であることを皮膚感覚で察知してしまったのだろう。


(やばいやばいやばい……!! 完全になんかすごいの来ちゃったよ……!!)


俺──ジェイ・ロンこと黒木勉くろき つとむは、冷や汗で背中をぐっしょりと濡らしながら、激しい胃痛に耐えていた。

ローカルのサンドボックス(検証環境)で異世界人の魔法バイナリをいじり、未登録パッチ(動的スロットリング)を当てただけで、本番環境のトップ管理者(運営)が直々にガサ入れに来るなんて誰が予想できるか。


光の奔流から、ゆらりと一人の女性が姿を現した。


光輝く長い髪と、世界の物理定数をそのまま織り上げたかのような幻想的な衣装。まさに絵に描いたような「創世の女神」そのものの佇まい──だったのだが。


「あー……女神様おつかれー☆ 今日の監査、急でウケるんだけどー☆」


ソファでポテトチップスをつまみながら、ルリが片手でひょいと軽い挨拶を送る。


「ルリ、あんたねぇ……そこの「神の端末」の設定上書きのせいとはいえ、緊迫感がないわね」


降り立った女神はハァと優雅(?)にため息をつくと、光の輪を背負ったまま、ジト目で俺を凝視してきた。


「で? あんたが、わ・た・し・の『神の端末』としてこの世界にコンパイル(召喚)された、黒木勉ね?」


「ッ……!? は、はい……! ジェイ・ロンこと、黒木勉です……! あの、女神様、今回の件はですね、決して世界システムに対するサイバー攻撃とか不正チートの意図はなく、純粋なローカル環境でのデバッグおよびリファクタリングでして──」


早口で弁明を捲し立てる俺に対し、女神はフンと鼻を鳴らして腕を組んだ。


「そんなことの言い訳はどうでもいいわよ。……はぁー、ほんっと、がっかりだわ」


「がっかり……?」


BAN(アカウント消去)の宣告が下るのかと身構える俺に、女神は信じられないような「心底不満そうなクレーム」をぶちまけてきた。


「あんたさぁ!! 『神の端末』としてこの世界に送られたんだから、現地でアクティブに暴れ回ったり、無双したり、ドラマチックな波乱を起こすと思うじゃない!? なのに何よこれ!! 転移してからずっとこの部屋に引きこもって、リモート監視だのデータ収集だの……! あんたを観察している私まで、『観察している人を観察している』みたいな不毛な気分になるのよ!! 面白くないの!!」


「えぇぇぇぇぇ……っ!?」


あまりにも身も蓋もない「視聴者(運営)目線の不満」に、俺は思わず裏返った声を上げた。


「お、面白くないって……! 俺は安全第一で、システムのバグや魔素係数を慎重に解析していただけで──」


「それがつまらないって言ってるの!」


女神は地抱を踏むように光の絨毯を揺らした。


「そもそもね、この世界に『神の端末』を配置するにあたって、私が事前に提出された要件定義書(設定)をくまなくチェックしたのよ? そうしたら、あんたが大学のノートに書き殴っていた『黒木の設定』が、一番出力リソースも権能も要件を満たしていたから、そのまんま適用して転移させてあげたの!」


(うわぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!??)


俺の脳内で、黒歴史ノートの表紙が爆音とともに爆破された。


「お前かーーーッ!! 俺の中二病ノートを採用してこんな恥ずかしい状況を作った元凶はッ!!」


「感謝しなさいよ! 世界構築のリソースの5倍なんてチート設定、普通通らないんだから!……なのに!」


女神はジト目で俺を指差し、ビシッと命じた。


「安全なサンドボックスでちまちまデバッグしてないで、生身で街に行って、人間模様を観察してきなさい!」


「な……生身で……街に……!?」


「そうよ! 人間目線で人間の営みを観察して、その感情やコンセンサスのログを収集する……それこそが、私が『神の端末』に期待している仕様(要件)なの! わかる!?」


「いや、わかるも何も……いきなり本番環境に生身で飛び出すのはリスクが大きすぎます! リモート監視の方が安全に正確なデータが取れるわけで──」


「嫌なら、そのエリシアとかいう子に渡した魔法パッチも、この観測拠点も、全部『不正アクセスによる改ざん』としてロールバック(初期化)するわよ?」


「うっ……!!」


権力(ルート権限)のカサにかかった、あまりにも凶悪な脅迫!

床で平伏したまま「ジェイ様……私のために申し訳ありません……」と泣きそうになっているエリシアと、彼女のために作った新アセットを見つめ、俺は悔しさに歯を噛みしめた。


「……わかりましたよ。行けばいいんでしょう、街へ……!」


「よろしい!」


女神は満足そうにニヤリと笑うと、背後のポータルへ向かって優雅に背を向けた。


「現地フィールドワークのログ、楽しみに期待してるわね。あ、ルリ! あんたはここにいなさいよ。あれの管理を怠るわけにはいかないからね。」


「えー☆そうだろうと思ったけれど、また面白くない代り映えしない状況じゃん…」


「そうね。それなら、ここの端末はこのまま使っていていいわよ。」


女神がそういうと、周辺の端末が一瞬淡く輝いた。


(うわ、明らかなバージョンアップが実施された。)


「これでジェイ君の観察を続けていていいし、たまにはサポートをしてもいいわよ」


「はーい☆ ガサ入れおつかれさまでーす☆」


ポテトチップスを掲げるルリに見送られ、創世の女神は眩い光とともに次元の彼方へ撤収していった。


静まり返る観測拠点。

警告表示ファタル・レッドが消え、通常の青いインターフェースに戻ったホログラム画面の前で、俺はガックリと両膝を突いた。


「はぁ……なんてこった……。慎重に積み上げてきた在宅リモートワーク生活が……」


「ジェイ様……私の不徳の致すところです……。私などのために、神の命令に従われることになろうとは……ッ!」


エリシアが涙ぐみながら頭を下げてくるが、俺は首を振った。


「いいんです、エリシアさん。……まあ、街の監視データ(対照群)は1ヶ月分溜まっていますからね。事前検証ローカルテストなしの本番適用デプロイではないのが、せめてもの救いです」


俺は立ち上がり、光のキーボードを叩いて「街訪問用・現地調査用プロトコル」のビルドを開始した。


「よし……。デバッガー・ジェイ・ロン、これより本番環境(人間の街)への直接デプロイを開始する!」

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