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母方の祖父の死
1年生の冬、母方の祖父が六十代という若さで亡くなった。
祖父は私が生まれる前から心の病で長く入院していて、私にとっては「ときどき面会に行く人」という存在だった。だから、訃報を聞いても実感はどこか遠く、学校を休めることを少し嬉しく思った自分を、今でも覚えている。
葬式の情景はほとんど霧がかかったように曖昧だ。ただ、焼き場で兄と並んで待っていたとき、「葬式まんじゅう美味しそうだ。ソーダー会社のソーダ息子がソーダ飲んで死んだそうだ」と無邪気に歌ってしまい、母に鋭く叱られた場面だけははっきり覚えている。
その直後、骨になった祖父と向き合う時間が訪れた。
——人は亡くなれば、骨になる。
その当たり前のことが、幼い私には雷のように胸へ落ちてきた。
「死ぬ」とはどういうことなのか。それを初めて体の奥で理解した瞬間だったのだと思う。
その時に受けた衝撃は深く、そしてその余韻が長く続くとは、あの頃の私はまだ知らなかった。




