↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王女殿下の幸せを守る会と彼女にだけ甘い氷帝陛下  作者: 凛桜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/13

王女殿下の一言は会議を動かす

 その日の午後。

 皇宮の応接室に、一人の女性が訪れていた。


「本日はお時間をいただき、ありがとうございます」


「こちらこそ」


 アリアは嬉しそうに微笑んだ。

 目の前にいるのは、帝国でも有数の名門貴族の令嬢。

 名を、エレノア・フェルナンデスという。年齢はアリアより少し上。

 社交界では物静かで知られているが、実は非常に面倒見のよい人物だった。


「以前、殿下がお好きだと仰っていた菓子をお持ちしました」


「まあ……!」


 アリアの目が輝く。


「ありがとうございます!」


「お気に召すとよいのですが」


「絶対に好きです!」


 アリアは箱を受け取ると、嬉しそうに微笑んだ。


「あとで一緒にいただきませんか?」


「……私も?」


「はい!」


 エレノアは一瞬驚いた。

 そして、


「……では、ぜひ」


 小さく笑った。



 その様子を、少し離れた場所から見ていた人物がいる。

 セドリックだった。


「……」


 アリアが嬉しそうに笑っている。

 そして、その笑顔を見たエレノアも嬉しそうにしている。

 セドリックは静かに目を細めた。


 ――なるほど。

 これは少し気になる人物だ。



 その日の夜、秘密の会議室。


「では、定例会議を始めます」


 セドリックが書類を並べる。

 会議室には、今日も帝国と王国の重鎮たちが集まっている。


「まず、現在の正式会員数は?」


「二十五名です」


「よし」


 帝国宰相が頷く。


「では次に、殿下の近況について」


「本日は午後、エレノア・フェルナンデス嬢とお茶をされました」


「……」


「……」


「……」


 会議室の空気が変わった。


「誰だ?」


「フェルナンデス家の令嬢です」


「どのような人物だ?」


「身辺に問題はありません」


「殿下との関係は?」


「本日が初めての正式な交流です」


「……」


 数人が顔を見合わせる。


「候補に入れるか?」


「早すぎる」


「しかし――」


「待て」


 セドリックが止めた。


「まだ判断するには情報が少なすぎます」


「……確かに」


「まずは様子を見ましょう」


「異議なし」


 会議は次の議題へ移った。


 ――だが、数分後。


「ところで」


 王国側の貴族が口を開く。


「本日の菓子は?」


「……」


「殿下がお気に召したと?」


「はい」


「どこの菓子だ?」


「エレノア嬢が持参したものです」


「店は?」


「調査しましょう」


「……」


 セドリックは額を押さえた。


「皆様」


「何だ?」


「我々は菓子の調査をする会ではありません」


「分かっている」


「ならば――」


「殿下がお好きなら重要事項だろう」


「……」


 セドリックは何も言えなくなった。

 確かにそれはそうなのだ。



 翌日。

 アリアはレオンハルトと昼食を共にしていた。


「陛下」


「何だ?」


「昨日いただいたお菓子、とても美味しかったんです」


「そうか」


「エレノア様が持ってきてくださったんですよ」


「……」


「また食べたいなぁ」


 レオンハルトの手が止まる。


「気に入ったのか?」


「はい!」


「……分かった」


「?」


 アリアは首を傾げる。


「どうしたんですか?」


「何でもない」


 レオンハルトは再び食事を始めた。

 だが、その日の午後。

 帝国の王室御用達菓子職人のもとへ、皇帝から直接注文が入った。


「同じものを作れ」


「……は?」


「アリアが気に入った」


「……承知いたしました」



 そして、その日の夜。

 秘密の会議室。


「報告があります」


 侍従が入ってくる。


「陛下が昨日の菓子を、王室御用達の職人へ注文されたそうです」


「……」


「……」


「……」


 会議室が静まり返る。

 やがて、


「さすが陛下だ」


 誰かが呟いた。


「我々より先に動いたぞ」


「皇帝陛下ですから」


「いや、そこではない」


「では?」


「殿下の『また食べたい』を聞いただけで動いたことだ」


「……」


 全員が頷く。


 ――恐るべし、氷帝。



 その頃。

 アリアは自室で、昨日のお菓子を思い出していた。


「また食べられたらいいな」


 その一言が帝国の菓子職人を動かし、皇帝を動かし、そして秘密の会議まで動かしているとは。

 もちろん本人は何も知らない。



 翌朝。

 エレノア・フェルナンデスのもとへ、一通の手紙が届いた。

 差出人は――セドリック・ヴァルモン。

 エレノアは不思議そうに封を開く。

 そこに書かれていたのは、たった一文。


 『少し、お話を伺いたいことがございます』


「……?」


 エレノアは首を傾げる。


 まさか自分がこれから――


 アリアの知らない場所で始まる、秘密の会の審査対象になっているとは。まだ知る由もなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。