第六話:中庭の決闘と竜の息吹
第六話:中庭の決闘と竜の息吹
王城の中庭にある広間。
そこは、僕とバイツの決闘の舞台となっていた。
女王アイリーンが第三王女クリスタと心配そうに見つめ、ほかの貴族たちも見物する中、デバット卿は息子に向かって声を張り上げた。
「思いっきりやってしまえ!」
「もちろんです、父上」
バイツはにやけた顔で杖を持つ手を挙げ、自信満々に答えた。
対する僕の側では、父親のガンドルフが苦しそうな顔で見つめ、リエット姉さんは別の意味で青ざめていた。
そんな二人の視線の先で、僕は落ち着いた様子でハンドガンのお尻にある切り替えメモリをいじっていた。
ガンドルフは「無理だけはするなよ……」と祈るように呟き、リエット姉さんは「どうなっちゃうの……?」と顔面蒼白でつぶやいている。
「行きますよ! 火炎魔法・炎の柱!」
バイツが叫び、杖をこちらに突き出した。
彼の杖が赤く輝くと、ゴウゴウと炎の風をまとった大きな炎の竜巻が発生し、まっすぐに僕に向かって伸びてくる。
周囲の貴族たちが「当たればただでは済まないぞ」と息をのんだ。
けれど、僕はハンドガンを右手に持ったまま、静かに左手を前に出した。
やることは単純だ。
僕の前方にある空気から、炎が燃え続けるために必要な酸素を遮断し、燃えない膜を張る。
バイツの放った激しい炎の渦は、僕の目の前にある見えない膜にぶつかった。
そして、そこだけ酸素がないために燃焼を続けることができず、四方に飛散して一瞬で消えてしまった。
炎が収まっても、僕はケロっとしてその場に立っている。
「今度は僕の番ですね」
僕は右手のハンドガンを、バイツに向けてそっと上げた。
「なっ!」
「嘘だ!」
デバット卿が驚きの声を上げ、バイツも目を見開いて後ずさりする。
怯えるバイツに対して、僕は優しく声をかけた。
「大丈夫です、当てませんから」
カチャ、と銃のトリガーを引いた。
僕が放ったのは、内部に超高圧の空気を閉じ込めた空気の重りだ。
撃ち出した弾が着弾した瞬間に維持を止めれば、溜まった圧力が一気に弾けて周囲を吹き飛ばす。
この空気圧縮砲は、文字通りの目に見えない空気爆弾だった。
見えない爆弾は、バイツの顔のすぐ横をガゥゥゥン……と凄まじい轟音を上げて通り過ぎた。
そして、彼の背後にある分厚い城壁に衝突した瞬間。
ズズゥゥゥゥン……!
大量の爆風と土煙を上げて、完全に城壁の上半分が粉々に消し飛ばされ、がれきへと変わった。
「あ……ぁ……」
圧倒的なプレッシャーと、すぐ横を通り過ぎた破壊の衝撃を肌で体感したバイツは、恐怖でその場にガタガタと膝をついた。
もう杖を握る力すら残っていないようだった。
クリスタは目を見開いたまま、呆然とエクスを見つめていた。
見ていた貴族一同は、静まり返ったあとに大騒ぎを始めた。
「竜の吐息だ!」
「ありえない! あんな魔法があるものか!」
唖然とした表情の女王アイリーンも、その圧倒的な破壊に驚きを隠せない様子で呟いた。
「これは……伝承にある、魔法を極めた者しか使えないドラゴンブレスそのものではないか」
父親のガンドルフは、自分の記憶にある出来事を思い出していた。
「あのときの光球の違和感……そういうことか。だからまともにリエットの場所で学びなおせと言ったのに……」
ガンドルフは完全に勘違いをして、とんでもない英才教育を受けさせてしまったと頭を抱えている。
一方で、すべてを分かっているリエット姉さんは「やっちゃったかぁ……」と顔に手を当てて苦笑いしていた。
「……うーん、空気砲も出力調整がまだみたいだなぁ。構造を優先したから、二十パーセントなのにちょっと強すぎるか」
こうして、決闘は終わり、誰もが納得する結末を迎えたのだった。




