表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
失格貴族の王国再建記  作者: 風水
第一幕: 失格貴族の魔導技術

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/3

第二話:貴族失格

第二話:貴族失格


その日の夜。


体調が回復した僕は、白髪交じりの厳しい顔つきの父親のガンドルフ・ゼフォードに屋敷の中庭へと呼び出された。


月明かりに照らされた中庭は少し肌寒い。


僕の後ろでは、アンナが自分の手をぎゅっと握りしめて、心配そうに僕のことを見守っていた。


僕の前に立つ父親は、冷たい目を向けてくる。


「我がゼフォード家の者なら、目の前にある標的を破壊することなど造作もないはずだ」


父親が指さした先には、僕から四メートルほど離れた場所に、鉄の鎧を着せられた木製のかかしが立っていた。


「先日は何もできずに倒れ、熱を出してしまったから見逃したが……今日が最後だと思いなさい」


ここで結果を出さなければ、僕は本当にこの家を追放されてしまう。


けれど、普通の火炎魔法なんて僕には使えない。


だから僕は、自分の知識を使った方法を試すことにした。


そのために、ひとつ確認しておきたいことがあった。


「父上、道具を使ってもいいですか?」


科学の力を応用するなら、あらかじめ用意しておきたい装置や道具がある。


しかし、父親は冷たく突き放した。


「ならん。魔法の力で的を破壊するのだ。皆と同じように杖を使いなさい。杖を」


父親から手渡されたのは、この世界で一般的な、木製の古びた魔法の杖だった。


これじゃただの木の棒だ。


道具を使ったアプローチが禁止されたことに、僕はしょんぼりと肩を落とした。


でも、やるしかない。


「……よし、やれるだけやってみよう」


僕は杖を握り、かかしに向き直る。


狙うのは、高熱の弾丸だ。


僕は手のひらの上に魔力を集中させ、周囲の空気を強引に一点へと超圧縮していった。


ギチギチと空間が軋む音が響き始める。


気体を急激に圧縮すると温度が跳ね上がる。


僕は魔力の壁で空気を限界まで押しつぶし、極限の断熱圧縮を引き起こした。


次の瞬間、僕の掌の上でそれが産声をあげる。


大気圏に突入する流星と同じ、極限の断熱圧縮がもたらす超高温。


空気の原子から電子が剥がれ、青白く、太陽のように激しく明滅するプラズマの球が完成した。


「わぁ、きれい!」


後ろで見守っていたアンナが、思わずといった風に歓声をあげる。


「できた……! これがプラズマの弾……!」


僕自身、その完成度に胸を躍らせた。


あとは、この圧倒的なエネルギーの塊を、あのかかしに向けて放つだけだ。


僕は震える手で、その光球を前方の標的に向けて押し出そうとした。


しかし、手を離したその時だった。


数万度の超高温と超高圧を閉じ込めていた、見えない壁が消えてしまう。


――ポンッ!


悲しい破裂音とともに、プラズマ球は前方に飛ぶことなく、その場で破裂して四散した。


ゆるやかな熱風が僕の顔を撫でて、周囲の冷たい大気に一瞬で熱を奪われ、ただの激しいぬるい突風へと戻っていく。


当然、標的には傷一つついていない。


鉄の鎧は、月光を浴びて冷たく光ったままだ。


「あ、あれ……?」


アンナがおろおろと悲しそうな顔になり、戸惑ったように僕と標的を交互に見つめている。


弾そのものは作れても、それを形に留めて撃ち出す銃がなければ、ただの手元での不発に終わる。


(……なるほど。ほぼ、予想通りの結果か)


そして正面からは、父親の冷酷な足音が近づいてきた。


次の日の朝。


荷物をまとめられた僕とアンナは、すでに馬車に乗せられていた。


見送りに立った父親、ガンドルフ・ゼフォードは、少し眉間にしわを寄せ、苦しそうな顔で僕を見つめている。


「昨夜の光球だけなら評価できるが、一度従妹の家で学びなおせ。お前は今日からゼフォードの人間ではない。二度と名乗るな」


父親は厳しい目を向けて僕にはっきりとそう言うと、後ろを向いた。


「……だが、リエットの元で学びなおせ。それが最後の機会だ。私の期待を裏切るな、息子よ」


それが、父親の不器用な決断だった。


完全な追放ではなく、まだチャンスは残されたのだ。


動き出した馬車の窓から、遠ざかる屋敷を眺める。


隣では、アンナがまだ不安そうに僕の顔をのぞき込んでいた。


「巻き添えにしちゃってごめんね、アンナ。次は大丈夫だから」


そう言って僕はアンナにほほ笑んだ。


「その為には……魔法だけじゃ駄目か」


ぽつりと、僕は声に出した。


手元でプラズマを作れても、撃ち出す銃身がなければ拡散してしまう。


純粋な魔法の才能だけでは、あの標的は壊せない。


なら、道具を作ろう。


前世の知識があれば、最低限の魔力を効率よく運用する『銃』だって設計できるはずだ。


分解と合成ができるなら、材料さえあれば作るのだって難しくない。


まずは小型化だ。


手のひらに収まる試作品なら、三日で作れる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ