第三話:銀髪の綺麗なお姉さん、リエット
第三話:銀髪の綺麗なお姉さん、リエット
【前半:リエットの家に到着】
「ようこそ。長旅お疲れさま、エクス君」
馬車を降りた僕を迎えたのは、美しい銀髪をショートボブにした、一回り年上の綺麗なお姉さんだった。
知的な眼鏡をかけたその女性は、僕を見て優しく微笑む。
「初めまして。僕はエクスです」
「知ってるわ。おじさまから手紙も届いてるもの」
リエットはふわりと笑う。
「私はリエット。今日からここがあなたのお家よ」
「……お世話になります」
僕が小さく一礼すると、後ろに控えていたこの家の使用人が、怪訝そうな顔で口を開いた。
「リエット様、本当にその方を置くのですか? ゼフォード家を追放された方ですよね。魔法も使えない失格貴族など――」
「その話はやめなさい」
リエットはぴしゃりと言った。
いつの間にか笑みを消し、眼鏡の奥の瞳で使用人をまっすぐに見つめている。
「ですが……」
「この家では私の家族です。そんな風に言うのは、もうおしまい」
リエットはそう言って使用人を下がらせると、再び僕に向き直ってふわりと微笑んだ。
「そんなに固くならなくていいのよ。ここでは私が面倒を見るんだからね。さあ、まずはゆっくり休みましょう?」
そう言いながら、リエットは自然な手つきで僕の荷物を持とうとした。
「えっ、自分で持ちます」
「だめ、エクス君には重いでしょ。家族にそんなことさせないもの 」
隣でアンナが目を潤ませる。
「リエット様……」
「アンナちゃんも頑張ったわね。二人ともまずは温かいご飯にしましょう」
その言葉に、僕は少しだけ昔を思い出した。
――お腹空いてるでしょう?
病院帰りの僕に、姉はいつも同じことを言っていた。
【中盤:追放された理由と世界の説明】
食事の後。
庭のベンチに座りながら、リエットは小さくため息をついた。
「おじさまも相変わらず厳しいのね」
「僕が結果を出せなかったのが悪いんです」
「でも家名まで取り上げる必要はないと思うの」
アンナが悔しそうに拳を握る。
「エクス様は頑張っていたのに……」
リエットは静かに首を振った。
「この国の貴族はね、魔法で価値を証明する世界なの」
「そこまで徹底するものなんですか?」
「ええ。魔法は戦争にも使うし、魔物退治にも使うから領地を守る貴族の実力。だから強い魔法を持つ家ほど地位が高いの」
「なるほど……」
「逆に魔法を使えない子は、家の名に傷を付けると思われてしまうのね」
リエットは少し悲しそうな顔をした。
「だから、追放される子も珍しくないのよ」
アンナがうつむく。
「エクス様は悪くないのに……」
「私はそう思うわ」
リエットは即座に言った。
「だって昨日の話を聞いたもの。光る球を作ったんでしょう?」
「失敗しましたけどね」
「失敗したから何?」
リエットは不思議そうに首を傾げる。
「挑戦して失敗するのは普通のことじゃない?」
その言葉に、僕は少しだけ目を見開いた。
本当に姉と同じことを言う。
【後半:新たな目標】
その夜。
部屋に案内された僕は、窓際の机に向かっていた。
紙の上には、銃身らしき図面が並んでいる。
「エクス君、まだ起きてるの?」
リエットが温かいミルクを持って入ってきた。
「少し考え事を」
「また難しい顔してる」
リエットは机の上を覗き込む。
「これは何?」
「道具です」
「道具?」
「魔法を遠くまで飛ばすための」
リエットはぱちぱちと瞬きを繰り返した。
「魔法を飛ばす道具なんて聞いたことないわ」
「僕も聞いたことありません」
「じゃあ、失敗するかもしれないわよ?」
「そうですね」
僕は笑った。
「でも、やってみる価値はあります」
リエットもつられて笑う。
「ふふっ。それなら応援するわ」
「ありがとうございます」
「その代わり、夜更かしは禁止」
「はい」
「返事だけじゃなくて、本当に寝るのよ?」
その口調に、また姉の姿が重なった。
僕は思わず小さく笑う。
そして、机の上の設計図へ視線を落とした。
――三日。
三日あれば試作品は完成する。
今度こそ、失敗しない。




