第十一話:壊死の切除と、人工の臓器
第十一話:壊死の切除と、人工の臓器
次の日から、少女の本格的な治療が始まった。
「リエット姉さん、アンナ。これからは、部屋に入る時は必ずこれを身につけてください。今の彼女は、ほんの小さな汚れや空気の病気でも、命を落とす危険がありますから」
僕は、部屋の小物を分解して作った、肩のあたりまで腕をすっぽりと覆う長い手袋と、口元を覆う白いマスクを二人に手渡した。
「わかったわ。エクス君も無理をしないでね」
リエット姉さんは心配そうに僕の顔をのぞき込み、優しく声をかけてくれた。
「ありがとうございます。アンナ、食事はスープだけでいいよ。できるだけ栄養のあるものだと嬉しいな」
「はい、エクス様。お任せください!」
アンナは力強くうなずき、それから定期的に、栄養がたっぷり詰まった温かいスープを部屋まで献身的に運んでくれるようになった。
二人の支えを受けながら、僕は一人、ベッドの上の少女と向き合い続けた。
少女の血液が綺麗になり、生きるための基本的な体力が安定した段階で、僕は次の段階へと移る。
感染症の元になっている、黒ずんで壊死した手足を切り離す手術だ。
まず、自分で調合した麻酔を骨髄へと慎重に注射し、少女の感覚を完全に遮断する。
これで彼女が痛みを感じることはない。
次に、高熱の反応を魔法で精密に操作した、手術用の鋭いメスを作り出した。
(ここからが、一番集中するところだ……)
僕は手袋をはめた手でメスを握り、ゆっくりと刃を動かしていく。
のちに義手や義足がつけられるよう、将来の形を計算しながら、慎重に骨と肉を切り離して綺麗に縫合していった。
さらに、栄養失調のせいで今にも止まりそうになっている、肝臓や胃腸などの負担を減らす作業に入る。
僕は少女の細胞や体の仕組みを魔力で細かく読み取り、彼女自身の遺伝子構造をもとにした、一時的な補助用の人工臓器をその場で生成した。
これを少女の体内にそっと留置し、拒絶反応が絶対に起きないよう、彼女自身の体の一部として同一の同調率で接続していく。
すべての作業が終わる頃には、夜がすっかり明けていた。
手術の後、少女の体には劇的な変化が現れた。
最大の原因だった壊死した手足が消えたことで、それまで彼女を苦しめていた高熱がすっと下がり、真っ青だった顔色に少しずつ赤みが戻り始めたのだ。
内臓の負荷を僕の作った機械が肩代わりしたことで、彼女の体が持つ、本来の自己治癒力がついに目を覚ました。
「今度こそ、僕は絶対に助けて見せる……」
僕はアンナが持ってきてくれた温かいスープの具を自分の口に運び、エネルギーを補給する。
そして、そのスープの栄養がある汁だけをスプーンですくい、眠り続ける少女の唇をそっと湿らせるようにして、少しずつ、少しずつ喉の奥へと流し込んでいった。
ゆっくりと、けれど確実に、少女の体へ栄養が行き渡っていく。
小さな命の灯火は、もう消えそうに揺れることはなく、確かにその身の中で燃え始めていた。




