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親の本棚。  作者: 萬田ぷぷっぴどぅ


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7/8

学校の本棚。


 教室の中に、数冊の本が並べられた本棚があった。いわゆる学級文庫というやつだ。


 休み時間や自習時間に読めるようにと先生が置いたものだ。


 置かれた本は図書館から持ってきたものなのか、先生が自宅から持ってきたものなのかよく覚えていない。


 どんな本が置いてあったのか、そもそも本にあまり興味のなかった私は覚えていないが、『嵐が丘』があったのは強烈に覚えている。表紙も硬く、分厚い、強烈に読みにくい文字の羅列の本だった。


 ところで我が家には分厚い重い本しかなかった。なぜなら分厚い思い本はインテリっぽく見える抜群のインテリアだったからだ。


 インテリに見えるインテリアの本がある家で育った私は見栄っ張りだった。


 いつ見てもそこにある、誰も手を出さない『嵐が丘』に私は挑戦した。


 その本を手に取ると「読むの!?」と驚かれ、教室で開いていると「すごーい!」と誉めそやされた。


 やぶさかではなかった。


 ヒロインもヒロインの家族もその恋人も名前がカタカナで長かったので覚えられなかったし、時代背景も遠山の金さんとか豊臣秀吉とかと全然違ってまったくちんぷんかんぷんだった。


 まったく何も記憶に残らないまま1ページ1ページ読み進めた。幸い文字は日本語だったので読めないことは無かったのだ。


 だが、何日かけて読んだのかはわからない。本当に全部読んだのかもわからない。私のことなので、真ん中飛ばして最後のページだけ読んで満足したのかもしれない。


 それでも。そんなズルをしてでも。


 クラスメイトに「すごーい」と言われる快感に酔いしれたくて、百科事典や名作全集がある家の子としてのプライドだけを支えに、『嵐が丘』を読んだ。ふりをした。


 正直どんな話だったのか全然覚えていない。


 あのヒロインと恋人は結局結ばれたのか、結ばれなかったのか。なんか丘の上で再会して抱き合ってたような気もするが、『風と共に去りぬ』とごっちゃになってる気がする。『風と共に去りぬ』もよく知らないが。


 たしかに本を読む能力は無かったが、読もうという気合を出させてくれた百科事典や名作全集たちは案外無駄なものでもなかったのかもしれない。


 あの小難しい『嵐が丘』を1行たりとも1ページたりとも読んではいるのだ。たぶん。それだけで小学生には十分な功績であろう。



 『嵐が丘』を手に取った私に担任は驚いた顔をしていた。


「ずいぶん難しい本を読んでるね」


 そして嗤笑した。



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