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親の本棚。  作者: 萬田ぷぷっぴどぅ


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8/8

夫の本棚。


 夫の本棚は無い。独身の頃から無かったし、実家にあった彼の部屋にも本棚は無かった。


 本棚を持たない夫は本を買わない。


 読まないから買わないのではない。本は図書館で借りる物という認識なのだ。


 実際夫は図書館の貸出期間2週間の間に決まって3冊本を読む。


 積んでばかりいる私よりよほど読書家である。


 好きな作家とか好きな本とか、手元に置いておきたくならないのかと聞いたら、「そういうのないなあ」と呑気に言った。


 好きだから本を読んでいる、というより、なんとなく読んでいるらしい。


 面白かった、と思ってもすぐに忘れる夫は、同じ本を何回も借りてくることがある。もう一度読みたくて、ではなく、「なーんかこの話知ってるなあと思ったら、読んだことあったよ」と全部読み終わってから笑っている。


 夫が子供の頃、親の方針で家にテレビはなかったそうだ。だから自然と本を読むようになったという。


 夫の両親もかなりの読書家だが、やはり義実家に本棚は無い。


 町の図書館の本はたいがい読んでしまったそうで、仕方なく古本屋で本を買っては、また売りに行っていた。


 家の中には、今読んでいる本しかなかった。


 夫はあらゆるものを定価では買わない。


 家も、車も、服も。安くなった中古で済ます。


 夫曰く、


「新品も 買った瞬間 中古品」


 夫が新品で手に入れたものは、私だけだ。型落ちだったんで。


 好きな作家も好きなジャンルも無しに、表紙とタイトルだけでなんとなく夫は本を選んで来る。


 読む本がなんでもいいんだったら、私が積読している本でも良さそうなものだが、


「好みが違う」


 と生意気なことを抜かす。


 なんとなく本を読んでるだけの人間が、こだわって、読みたい気持ちが先行して、時間と気力がなく仕方なく次々本を積み上げている私に対して


「なんか違う。そそられない」


 などと抜かすことが許せない。


 だが私も、夫が借りてきたラノベとか巷で人気の有名作家の本などには全く食指が動かないので、おあいこというものだろう。


 そんな人気の本なのだからさぞかし面白かったのだろうとあらすじと感想を聞いてみる。


「なんかね、……う~ん……、言いたいことはなんとなくわかるんだけど、こう……、なんか、ね?ああ、そういう考えもあるかもしれないねえっていう……」


 本を読む人は頭が良いんだと思っていた。なぜなら親も先生も読書をひたすら勧めてくるからだ。


 履歴書には『趣味・旅と読書』とか書いておけばなんとなく賢いイメージで見られた時代を生きていた。


 本を読んでいる人は博識なのだと思っていた。


 本を読んでいる人は語彙力が素晴らしいのだと思っていた。


「俺が読んでるのってそんな、賢くなるとかの本じゃないから」


 賢くなる本ならない本ってなんだ。やっぱり『本を読む人』は賢い人であらねばならないのか。賢い人だから本を読むのか。何冊読んだら賢い人なのか。



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