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親の本棚。  作者: 萬田ぷぷっぴどぅ


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父の本棚・2


 芥川龍之介は自殺したので良くない人だからその本を読む価値はなく、太宰治は奥さんでもない人と心中した人なのでその本はロクなもんではなく、宮沢賢治の書いてる本は漫画みたいだから読むに値せず、だから揃えたという武者小路実篤全集は一度も開かれた形跡は無かった。


 父はぎりぎり召集令状が来ない年齢だった。


 終戦記念日なんかにあるテレビを見ながら父はよく言っていた。


「あと2年戦争やってくれてればなあ……」


 自分が戦場に行けば勝てると思ったのか、


 それとも戦争で死にたかったのか。


 休日も、定年退職してからも、趣味もなく、ただ酒を呑むかテレビを見るかしていない父にとって今現在生きているとはどういうことだったのか。


 たとえ毎日食べる物がなく辛い日々だったとしても。


 たとえ誰かを殺さなくてはならない毎日だったとしても。


 たとえ餓死したのだとしても、誰かに撃たれて死んだのだとしても。


 空の骨壺と共に自宅に帰り、「お国のために死にました」と言われることが父の理想だったのかもしれない。


 飢えの辛さや戦場の悲惨さを、父が想像できていたのかわからない。


 それをもってしても「お国のために死ぬ」ことが父の理想だったのかわからない。


 休日は布団の中で寝っ転がって、夜は酒を呑んでテレビを見て。


 自分のことと、自分の母親と自分の兄弟のことしか考えられなかった父。


 買ってすぐに『武者小路実篤全集』を読んでいれば、少しは考えも変わったのであろうか。

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