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親の本棚。  作者: 萬田ぷぷっぴどぅ


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5/8

子供の本棚。


 子供部屋の本棚は夫の手作りだ。


 窓の無い壁一面に、地震対策も兼ねて天井からぴったりサイズに作ってもらった。


 下の方は絵本や図鑑など、大きめの本が入るサイズで、中から上に行くほど奥行きは小さくなり、新書版の本や漫画の単行本、一番上には小説の文庫本が入るサイズに作ってもらった。


 作ってもらった当時子供たちはまだ幼稚園で、持っている本もおばあちゃんたちに買ってもらった絵本ぐらい。彼らの手が届く一番下にずらりと並べていたが、真ん中や上の方の棚はまだまだ隙間がいっぱいだった。それでもミニカーやぬいぐるみなど、好きなおもちゃをインテリアのように飾ってはいたが。


 壁一面の本棚を好きな本で埋めるのも時間の問題だろうと親としては楽しみだった。シャーロック・ホームズとかハマるかな?まずは江戸川乱歩かな?それとも今どきの子はハリーポッターとかから読み始めたりするのかな。とはいえやはり最初は漫画かな?ワンピースとかコナンとか、長いシリーズものをずらりと集めたりするのかな。お母さんとしてはフィフティーンラブとか読んで欲しいんだけどな。


 親の過干渉は本棚をも圧迫する。


 子供に読ませたい=自分が読みたい漫画を欲望のまま集め出し、結局本棚は私の好みで埋まり始めた。


 子供が読める漫画ならまだいい。


 ついに欲望の緒が切れた私は、過去に捨ててしまった大好きだったBL本たちを古本屋を駆けずり回って集め始めた。


 だがぎりぎりの道徳心が新書版や漫画ではなく、文庫版のBL小説を集めさせた。


 子供たちの手が届かない、一番上における文庫本。


 あの時、自分と一緒に存在を消そうとした文庫本。


 知らない間に続編が次々と出ていて、20巻以上にもなっていたBLの文庫本。


 ずらりと並ぶ紫色に近い濃ゆいピンク色の背表紙に、育児に疲れ果てた私はほんの少し心を弾ませていた。


 得てして子供は親と好みが合わないものである。


 自分とて親の揃えた『世界名作シリーズ』に見向きもしなかったくせに、漫画なら読むんじゃないかと何故思えたのか今となっては不思議に思う。


 自分も好きだし世間的にも名作だし、子供も絶対喜ぶに違いないと思って揃えたスポーツ漫画もバトル漫画も囲碁将棋漫画も、子供たちは見向きもしなかった。


「なんか違う」のひと言で、1巻だけ読み終えて終わった。


 世は異世界転生チート祭りだった。


 だから油断していたのもある。


 気がつけば子供などすぐに親の身長など抜き去るものである。


 それでも、親の買った本になど子供は見向きもしないだろうと高をくくっていた。


 実際、リビングに積んである私の本も手には取らない。漫画であっても小説であっても見向きもしない。


 だからたとえ子供部屋にある本であろうと読んではいないだろうと確信していた。


 子供たちは社会人となった。


 社会人となった子供から初めて母の日のプレゼントをもらった。


 積読甚だしい私にぴったりの、可愛い猫のブックカバーと栞だった。


「どの本にかけるのか知らんけど」


 ほほ笑んで渡してくれたブックカバーは単行本サイズだった。


 私の積読はほとんどがハードカバーや新書サイズ。


 文庫といえば子供部屋にあるBL本のみなのだけれど。


 

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