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その人は美しい。

「おい!!誰なんだよ!!」

いなりくんが噛み付くように叫ぶ。

その、青い髪を持つ美しい人は一筋の風をまとって急に現れた。

白いまつ毛。透き通るような肌。触っただけで折れてしまいそうなくらい、儚げで細い指。

水の精霊がいるならこんな感じなんだろう。

でも、人というより・・・・『幽霊』。いなりくんや心くんに似た雰囲気がする。

「大丈夫・・・お歌はちょっとだけだった。」

鈴を転がしたかのような声だ。何から何まで美しい。

「幽霊警察だ。」

先輩はまだ顔色が悪いが、シャン、と立ってその人に言った。

「大丈夫です・・・。問題ありません・・・。」

「いなりくん!守護霊さん!お願いします、守ってください!」

全ての望みをそこに賭けた。

声が震えた。叫びながら、自分でも無茶苦茶だとおもってる。

「・・・何、それ。今更願い事?笑っちゃうわ。」

女の子が私を見下す。シャボン玉が一気に膨れ上がる。

これを食らったら・・・死ぬ!!

終わる、そう思った時だった。

パキン

何かが折れる・・・いや、割れる音がした。

気づくと、背負っていた一円玉が消えていた。

「うるさいんだけど。シャボン玉が割れる音じゃなくて子守唄流してよ!」

聞き慣れた声。毎日、毎日窓際から聞こえてきた声。時々イラつき、そして安心する声。

「いなりくん・・・?」

いなりくんはそっと振り返る。

「桜。ごめん、遅くなっちゃった。」

いなりくんはそっと瞬きをする。あの黄金の瞳が、もっと輝いて本物の金のように輝く。

強い。いつもの軽い調子ではなく、いなりくんは本気だ。

「あ、ありがとう。」

いなりくんはちょっと顔を顰める。まだ蓮華先輩の言っていた『音』がなっているんだろう。

「へぇ。」

その子が目を細める。

「まだその狐、動けるんだ。もう少しで『桜』ちゃんかな?も潰れそうだったのに。」

残念だわ、とその子は続けた。

「俺は別に壊されてもいい。」

「いなりくん・・・。」

「ただし、」

いなりくんはその剣を一振りし、シャボン玉を一気に切った。

「桜を壊すのは許さない。桜に触れた時点でお前はアウトだ。」

いなりくんはいつもの笑い方じゃない、怖い笑いをした。

「ど、どっちも壊してやるわよっ」

「そっか。」

いなりくんはより深く笑う。」

「じゃあ、壊される前にお前を壊すね?」

いなりくんは剣を構える・・・消えた!?

と思ったら、一瞬であの子の前に移動していた。ちょっと遅れて裏世界の生ぬるい空気が吹く。

「っ・・・・!」

あの子も負けてはいない。すぐさま後ろへ下がり、大量のシャボン玉を展開させる。

その中の数個をその子は盾にした。

でも、今のいなりくんには効かない。

「邪魔だよ??屋根まで飛ぶ前にここで割れちゃいな?」

一閃。

キイン。

金属が触れ合う音がした。バチン、バチンと一つずつ泡が弾け飛んでいく。

「桜、よく銃でこのシャボン玉?を捌けたね!!」

いなりくんは力でどんどん泡を切り裂いていく。

そっか!銃だと一発一つしか割れないけど、剣だと振り抜けば3、4個は壊せる!

「ちょっと、何それ。」

女の子の声がほんの少しだけ弱くなる。

「さっきまで倒れてたくせに。もうすぐ、もうすぐで殺せるところだったのに。」

「さっきより今を見たほうがいいよ??」

気づくといなりくんはその女の子に思いっきり剣を振り翳していた。

あと少し、というところで大量のシャボン玉に防がれてしまう。

そして、女の子は大量のシャボン玉を展開させる。

「ふふん、お前が意識をとりもどしたとしても強さは変わらないわよ!!」

「いなりくん!」

私は立ち上がる。しかし、

「桜、下がってて。」

「でも!」

「いいから!!」

短い一言。でも、とても強く、それだけで体がこわばって動けなくなる。

「まもる、からさ?」

すると、いなりくんにぶつかろうとしていたシャボン玉が全て弾けた。

ばん!バリン!

「ったく、狐。お前がまた気絶したら佐倉さんが狙われるのがわかんねぇのか?」

蓮華先輩だ。その大きな杖でシャボン玉を全て割ったらしい。

「蓮華先輩!?」

息は荒い、顔色も悪い。でも、さっき無理して戦おうとした時よりは遥かに強気だ。

「まだ、終わっていない。」

蓮華先輩はこめかみを抑える。

「まだ、うるさいけど・・・慣れた。音ぐらいなれる。」

「強がりは、やめなよ。」

「強がってんのはそっちだろ。」

蓮華先輩は杖を大きく振る。女の子はギリギリで避けたが、いなりくんの剣がすぐに襲いかかってくる。

その刃は頬にあたり、赤い傷がつく。

「あと、もうすぐだよ。お前が倒されるまで。」

いなりくんの元々大きいしっぽがブワッと膨れ上がる。

私も、やらなきゃ。

残っている力で銃を持ち上げ、2人にまとわりつく邪魔なシャボン玉を撃つ。

いなりくんの周りにあるシャボン玉を撃ったらいなりくんにも当たってしまう・・・!

私がそう思っているのに蓮華先輩は気がついたのか、いなりくんの周りにあるシャボン玉を吹き飛ばし、一掃する。いなりくんから離れたシャボン玉を狙い、とにかく撃つ。

女の子は下がり、カバンを開けてまたシャボン玉を展開させようとするが、バランスを崩して倒れる。

「もらった〜〜〜!」

いなりくんが大きく剣を振りかぶる。すると、

キキイイイィィィイイィィィン

う、うるさい!!

カバンの中から音が溢れてきた。

私は思わず耳を塞ぐ。でも、それでも聞こえてくる。頭がトンカチで殴られているように痛い。

「お、終わらないわよ!!」

いなりくんは剣を落とし、うずくまる。しっぽがシュン、と細くなる。

蓮華先輩は体が硬直しているのか、杖を落とし金縛りにあったかのように手も足も止まっている。

こ、こんなうるさい音を聞きながらあの人たちは戦っていたの・・・!?

そう考えるとバケモノだ。多分だけど、あの2人には今、私が聞いている音よりももっとひどい音が聞こえているんだろう。

「う・・うるさいって。」

いなりくんはなんとか剣を拾い、再び構える。

「はぁ、これでも立ち上がるの?そろそろ限界でしょ?」

女の子は立ち上がり、シャボン玉をこれ以上なく増やし、展開させる。

ブワッと私たちに襲いかかってくる。

「桜!撃て!蓮華を守って!!」

「わ、わかった!」

とりあえず撃つ。耳を塞いでも聞こえるのなら撃つほうがいい!!

シャボン玉は割れていくけど、防げずに当たってしまう物も多い。

蓮華先輩も動いているが、動きが鈍い。

けれど、三人で1つ、また1つとシャボン玉を減らしていく。

そのすきに、いなりくんが一気に距離を詰める。

でも。

「甘い。」

その女の子はシャボン玉を大量展開させ、その隙に離れる。

このままじゃ・・・終わらない!

その子は右手を上に突き出すと大量のオウタ・・・・歪んだ霊力を右手に集中させた。

「佐倉さん!とりあえず離れて!」

「桜!蓮華に従って!こいつ、残っているオウタを全部、」

いなりくんはそう言ってからその子の右手に目をやる。

「シャボン玉に集中させる気だ!!」

私は下がろうとするが、さっき割り損ねたシャボン玉に通せんぼさせられる。

「逃がさせない!」

裏世界に空はない。けれど、その空いっぱいにシャボン玉が広がる。

七色に光って綺麗なはずなのに。

・・・気持ち悪い。

「割ってやる・・・」

いなりくんはその体を起こそうとするが音のせいなのか動けていない。先輩はその子の近くに行き、鋭い一撃を喰らわせようとする。しかし、

ぐにゃり。

その子の体を杖はすり抜けた。

「残念。」

その歪んだ巨大シャボン玉から溢れ出たシャボン玉が蓮華先輩に直撃し、吹っ飛ばされる。

「どうし、てだ・・・。」

「もう、私は決めたのよ・・・」

その子は左手も上にあげてシャボン玉を支える。

「お前たちを殺す!殺せるなら、私も死んでいい!!」

「まさか・・・。こいつ、オウタに占領されてる!!意識が、こいつ自身の意識が消えている!!」

オウタってのは恐ろしい。いなりくんのこの一言で再び感じた。

その子の目はもう、どこも見ていない。白目がなくなり、どこが瞳でどこがどうこうなのかもわからなくなるくらいに黒に覆われる。

「さようなら。」

そう言い、私たちに巨大シャボン玉を飛ばした。

いなりくんは私の方へ走ってきて私を庇うような形で前へ立ちはだかる。

来る・・・!

ゴゴゴ、と不穏な風が吹く。

シャボン玉がそっと私たちに飛んでくる。

・・・死ぬ!

その時だった。

カン、と。澄んだ音が響いた。

目の前に巨大な鏡が浮かんでいた。何もなかった空間に、突然。

銀色で。淡く輝く鏡。

次の瞬間。

ドォォォン!!

爆音。

「っ何が起きた!?」

蓮華先輩が立ち上がる。

爆音に夢中になっていたけど、音が消えている。体も自由に動くようになった。

「俺はわからない!!ただ、あの爆音はシャボン玉が鏡に当たった音だ!」

鏡の方を見ると、シャボン玉が消えていた。代わりに黒い物体がある。

・・・なんだあれ。

そう思った瞬間。その黒い物体が鏡に反射。その子へ吹き飛ぶ。

そのまま、一直線に。

「・・・は?」

一瞬困惑したかのような表情をした。そして、その子が避けるまもなく直撃。

少女の体が吹き飛び、地面に叩きつけられてそのまま動かなくなる。

そのばを沈黙が包んだ。

「何・・・今の・・・?」

いなりくんも蓮華先輩も呆然とする。私の質問に答えてはくれない。

その時。誰かが現れた。

「おい!!誰なんだよ!!」

いなりくんが噛み付くように叫ぶ。

その、青い髪を持つ人はふわり、と風を吹かせて現れた。

白いまつ毛、透き通るような肌。触っただけで折れてしまいそうなくらい、儚げで細い指。

水の精霊がいるならこんな感じなんだろう。

でも、人というより・・・・『幽霊』。いなりくんや心くんに似た雰囲気がする。

「大丈夫・・・お歌はちょっとだけだった。」

鈴を転がしたかのような声だ。何から何まで美しい。

「幽霊警察だ。」

先輩はまだ顔色が悪いが、シャン、と立ってその人に言った。

「大丈夫です・・・。問題ありません・・・。」

その人はそう云うと、倒れている『その子』のおでこに指を当てた。

黒い、モヤのようなものがその子の指に吸い取られていく。

「さようなら・・・。」

「ちょっおい!」

いなりくんが呼びかけるがその、不思議な人は裏世界の闇の中へ去っていった。

「な、なんだったんだろう・・・。」

「佐倉さんも、狐も生きていて良かったな。こいつは俺が幽霊警察に突き出しておく。」

蓮華先輩はその子の体を縄でぐるぐる巻きにしてシャボン玉をさっきから出していたカバンは何か、お札を貼って袋の中に入れた。

「い、いなりくん?」

いなりくんは何故か空を睨んでいた。

「いや。なんでもない・・・。」

いなりくんは、やっぱり謎が深い。

それにしても、みんな生きていて、よかった・・・!

「さ、桜??なんで泣いてんの??」

「泣いてなんかいないし!」

「さては怖かったな〜?」

「うるさい。」

私はそう言っていなりくんの足を踏んづける。

蓮華先輩はちょっと遠くから『狐が悪い』と頷く。

___________________________________________________

「心くん!」

「なんですか・・?」

私は放課後、小学校に寄り道をしていた。いい報告ができる、からだ。

「稲荷神社にいこ!」

そう言って私は真くんの手を引く。

「桜!!きたね〜〜!」

稲荷神社の裏にはすでに蓮華先輩もいなりくんんもいた。

「連れてきました!心くん!」

「な、何か見つかったんですか!」

心くんの顔がパアッと明るくなる。

「ああ。」

そういうと、蓮華先輩はポケットから小瓶を取り出した。

あのあと、蓮華先輩はそのまま幽霊警察本部へ行った。

心くんの心臓を奪った理由は『オウタ』を作るための儀式に必要だったらしい。

あの子は『オウタ』を使っていない、と上層部に言われたそうだ。

どこからどこへ見てもオウタだったのに、オウタの痕跡がなかったそうだ。

しかし、いくらオウタを使っていないとはいえ、罪は罪だ。

ちゃーんと、逮捕されたらしい。

やっぱり、あの人はなんだったんだろう・・・。

「こ、これは・・・?」

「情報部に徹夜で調査をしてもらった。心・・・いや、陽太ようた。それがお前の本当の名前だ。」

「陽太・・・?」

「これを開けてみろ。」

蓮華先輩は小瓶を心くんにわたした。心くんは、小瓶を開ける。すると満足そうに顔を上げた。

「思い出しました!ちゃんと、この中に僕の思い出は入っていたみたいです・・・・。」

心くんの目に涙が滲む。

「陽太、これで成仏できそうか?」

「はい・・・!蓮華さん、桜さん、そして、いなりさん!ありがとう、ございました・・・!」

心くんはそっと微笑んだ。体がだんだん泡になって崩れていっている。

あのシャボン玉とは違う、純粋で綺麗、何一つ汚れていない、泡だ。

そのうち、心くんの体は完全に崩壊した。心くんは、成仏のできなかった『地縛霊』から成仏ができて、これから冥界で暮らす『幽霊』になったのだ・・・。

「ところで、先輩。あれはなんだったんですか?小瓶。」

「あれは情報部に頼んで作ってもらった陽太の記憶だ。あれを開けたら、記憶が蘇る。」

「大麻じゃん!」

「失敬な。違う。」

いなりくんの頭を軽く叩く。

「これで、心臓は終わりかっ」

私はうーん、と背伸びをする。結局、メモ買えなかったな・・・。

「何はともあれ、蓮華も桜も元気だね!」

「ああ。良かった。」


本当に、大変で楽しい心臓探しだった・・・。今頃、心くんは虹の橋を渡っているかな・・・?

これにて、稲荷神社の守護霊、信じることになっちゃいました!?編(心臓編)は終わりになります。

ここまで小説を続けられたことに自分でも驚いています!!

次の編も読んでくれると感謝です!

ここまで読んでくださってありがとうございました!!面白い、よかったと思ってくださったら評価お願いします!励みになります!

毎日投稿4日目!!

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