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完全体の霊巫女

いなりにおぶわれ、向かった先に会ったのは廃屋で・・・?


そして、3人は元の世界に戻れるのか?


蓮華に再び、“あの声“が訪れる。

「まってっ走らないでっちょっ!」

半強制的におぶわれた私。

のんびりゆっくり行くんだろう、と思ったらまさかの全力ダッシュ。

「きついきついきついきつい!」

「大丈夫だ!ほら頭かがめろ!」

そして、見たこともないような荒れた道をわざわざ行くいなりくん。

頭スレスレにある太い枝をなんとか避けると、再び全速力で走っている。

そしてそれについて行く先輩。

誰も何も突っ込まないの〜!!

心の中で密かに叫ぶ。

「はいはい!飛ぶからバランスくずすなよっ!」

「待って待って心の準備がああっ」

私の言葉を待たずして飛び上がるいなりくん。

小高い石垣を一瞬で越える。

前、いなりくんを抱えたことはあったけど・・・よくあの体重で支えられているな私を!

「よし!蓮華、行く場所は同じみたいだね。」

このスピードの中、全く震えていない声を出すいなりくん。

先輩は無言で頷く。

「もうちょっとか・・・よし!近道しよう!蓮華、場所は同じだから・・・離れるね。」

・・・嫌な予感がする。

その予感は、当たってしまった。

突然、道じゃないのぼれそうにない山の壁の方に体を向ける。

そして、再び飛ぶと安定している木の枝に着地する。

「待って待って怖いって!」

「怖くない!俺を信じて!」

信じてるよ!信じてるけど怖いんだって!

そしてぴょんぴょんと枝から枝へ。

器用に飛び移っていくいなりくん。

「うわっ!」

すると、いなりくんはいきなり足を滑らせたのだ。

「今わざとじゃないっけ!?」

わざと滑らせたように見えた。

心臓が縮むのがわかる。

いなりくんの肩を一層強く握った。

けど、途中で急に落下は止まる。

「・・・へ?」

「なーんてね!」

いなりくんは振り返る。

そして、私も振り返ると・・・尻尾が綺麗に枝に巻き付いていたのだ。

「・・・覚えとけよこいつ。」

思わず乙女らしからぬ言葉が口から飛び出る。

・・・まあ、元から乙女なんかじゃないからセーフだな。

「こっわ!」

笑いながらいなりくんは体勢を整え、枝から飛び降りる。

そして、普通の道をしばらくいくと柵が見えてきた。

「よし、降りていいよ。」

柵があり、中は全く見えない。

けど、一部だけ空いている場所があった。

そこにいなりくんが近づくと、光が現れる。

「・・・遅かったな。」

先輩がすでに待っていた。

「ええ、蓮華早くない?」

「そっちが遅いだけだろ。」

二人はそんな会話を交わしながら、歩き始める。

姿が見えなくならないよう、私は必死に二人の背中を追った。

そして、柵の中に会ったのは小さな小屋だった。

そしてその隣には、つたで覆われ切った『何か』があった。

「いなりくん!ちょっとついてきて。」

私はいなりくんの手を引いて、その『何か』の元へ行く。

ツタを掻き分ける。

それは・・・ただの、石だった。

「石か・・・。」

「石だな・・・。」

先輩もそう言う。

「じゃあ・・・あの廃屋。あそこだよ、多分だけど。」

いなりくんと先輩は再びあの小屋へ向かう。

そして、いざ前に立つと、その古さがより伝わってきた。

蜘蛛の巣。

折れている木の板に、上からぶら下がっている変な紐。

そしてボロボロになったよくわからない箱。

「ここなんですか、本当に・・・。」

「そうだ。間違い、ない。」

先輩の目が悔しげに光っていた。

「じゃあ、行くよ!」

いなりくんは、私と先輩の手をバシッと取る。

そして、その廃屋の古いひび割れた木の扉を開けたのだった。




❀*.゜




「へ・・・?戻って、来れた・・・?」

光に包まれた、と思った瞬間私たちは稲荷神社へとほっぽり出されたのだった。

状況が飲めていないのか、いなりくんはキョロキョロと首を振りまくっている。

寒さは消え、少し暑いくらい。

「って、ことは・・・」

「戻って来れたみたいだな。」

・・・や、やったあぁ!

戻って・・・来れた、やっと!

「ってことは、うるるさんもウルフさんもアイリちゃんもスイリくんもいて・・・」

「全員、俺たちのことを覚えている。」

その、いなりくんの言葉にうんうんと頷く。

「は〜!長かったけど・・・よかった!」

「別世界に飛んだ日の0時。俺たちがあの世界にいたのは、ほんの数時間だったってことか。」

「感覚が狂うね。」

「もう・・・人形屋敷に、あの世界。私たちだけ365日じゃないですね。」

そう言って、はあとため息をついた。

もうちょっと休日があっても良くないか、これ。

「ていうかそれなら、二人は明日から学校じゃん。」

いなりくんのちょっとした爆弾的発言に目を見開く。

・・・学校だっ!!

「・・・それじゃっまた明日ですっ!!」

「俺も。」

スイリくんを助けた時と同じような焦りを覚えた。

やっばい、11時30分近くまで寝ていたとはいえ、やばい。

そして、私は家のドアをそっと開いた。



ꕤ*.゜




「・・・なんだったんだ、結局。」

蓮華は自室のベットに寝転ぶ。

異世界に連れ去られた、と思うと戻ってきた。

そして最大の謎。

あの声はなんだったのか。

結局、その正体は分からずじまいだった。

その時だった。


モドレタヨウダネ。


「は!?」

蓮華はガバッと起き上がる。

最大の謎の声が再び自分の目の前・・・いや、耳に現れたのだ。


(は?)


フフ、オドロイテイルヨウダネ。


(お前は一体誰だ。このことをどこまで知ってる。)


蓮華は厳しい表情でそう尋ねた。

少し間が空いた後、声はこう答えた。


コレハ、ナマエノナイゲンショウ。セカイノコンラン。


(世界の混乱・・・?どういうことだ。)


アナタタチハ、イッセンヲコエタ。


(一線を、超える・・・?)


謎は次々と増えていく。


ソウ。アナタタチニタズサワルレイリョクガ、ボウチョウヲハジメタ。


その言葉に蓮華は自分の体を見下ろす。

『膨張を始めた』という割には、違和感をない。

しかし、急にその声は笑い始める。


フフフ、バカネ


(・・・は?)


ボウチョウハジブンデハワカラナイ。


(・・・は?)


唐突な『ばか』という言葉に、蓮華はやや驚く。


ボウチョウニハゲンインガアル。アナタモカンヅイテイルンジャナイノ?


その言葉に、蓮華の脳裏にとあることがよぎる。

その言葉は否定できなかった。


ズボシ、ネ。デモアナタトイナリハホトンドカンケイナイハナシ。


(まさか。)


ソノトオリ。レイミコノカクセイガハジマッテイル。


霊巫女の覚醒の始まり。

昔から現代まで、恐れられてきた共通のものだ。


コノセカイモレイリョクノカタマリニスギナイ。


この声の言う通り、この世界は大昔、とある神が作り出した世界・・・霊力の塊の一つだ。

そして、その霊力の塊と膨大な霊力がぶつかり合うと・・・人魚の時の通路のように、ボロボロと崩壊が始まる。

今まで、いついかがなような時もそんなことは起こらなかった。

神が作っただけあって、この世界は“完全体“に近いからだ。  


(・・・言いたいことは大体わかる。続けて言え。)


レイミコガ、“カンゼンカクセイ“ヲハジメルト・・・コノセカイハ、オワリヲムカエル。


(だろうな。それが、どうした?)


シンパイシテルンデスヨ。ワタシハ、アナタノショウタイヲシッテイル。


(どこでそれを!?)


明かしてこなかった過去。

思い出したくもない、暗闇の過去。


サァ、カノジョヲアイスルココロガアルナラ・・・カノジョノタメヲオモイ、コノママデイサセルノデスヨ。


(なぁ、何者だ。どうしてそんなことまで知っている。)


アナタタチヲノロウ、モノデスヨ。マア、ソノウチワカリマス。


そこまで言ったところで、頭の中に『ブチッ』という切断音が鳴り響いた。

心臓が高くなり始める。

頬を汗が伝う。


「力を使う時が来るなら・・・使ってやる。姫と狐の呪いを・・・切る。」

『僕(やつがれ)』だった時代。

力を使う決心は、もうできていた。




ꕀ️꙳♡̴⟡




「終わりましたよ。」

少女はそう、男に声をかけた。

「うん、ありがとう。いい出来だったねえ。」

「ありがとうございます。」

少女は微笑む。

「よりにもよって、彼に龍の子がついているとは・・・ツイてないよね。」

やれやれ、と男は言った。

微笑んでいた少女の顔が厳しい表情に変化する。

「それにしても・・・困りましたね。今回の混乱で、彼女、『桜』が完全体の霊巫女ということが判明しましたよ。」

「ねぇ。それにしても、彼女。どこかで見たことがあるような・・・まあいい。桜には注意をして、計画は続ける。それでどうだ?幸。」

少女・・・『幸』は頷いて、こう答えた。

「はい!禍麟様!」











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