巻き戻される記憶
うるるとアイリは何かの違和感を感じる。
いい方向に向かっていたはずが・・・・!?
そして、蓮華にも“あの声“が。
背の高い男、短い髪の少女の正体とは・・・・?
謎が深まり、ヒントの見つかる今話、開幕。
「おかしい、んだよな・・・なんだこの気分。」
自分が今まで感じてこなかった気持ちにうるるは顔を顰める。
大事なことを埋められている、そんな感覚がする。
確かに、自分とは真反対の大事な存在がいた気がするのに・・・・いない。
「いやっでも、あたしはずっと一人で仕事を・・・」
うるるはそう言ったところで思った。
・・・幽霊の存在を信じ始めたのは、いつだっけ?
霊力に気付いたのはいつだったのか。
冥界への行き方は誰が教えてくれたのか。
「どうだっけな・・・数年前のことだしな。」
この込み上げてくる考えにうるるは頭をひねる。
「あれだけしっかりしてた桜が、あれだけ取り乱すなんて・・・嘘には聞こえなかった。“いなり“っていう存在が・・・本当に、あったのか?この世界に。」
うるるは頭に触れる。
しかし、何も思い出せることはなかった。
その時だった。
〜♪
スマホから着信音が鳴り響く。
うるるは慌ててスマホを手に取る。
「・・・うるるか?」
「えっはい。うるるです。・・・あっお仕事ですか?」
「ああ。冥界の大富豪を少し、な。お前の力だったら十分だろう・・・」
『いまそれどころじゃないんだよ!』と言いたくなる衝動を抑え、作り笑いを浮かべて言った。
「はい、すぐ行きます。」
そして、うるるは『もう何も言わせまい』と電話を切る。
「・・・まあ、この世界の記憶しかあたしにはないしな。」
考えたい。いますぐに、このことを。
しかし、その気持ちを振り払い、ライフルを担いだ。
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「うむむ・・・やはり、警察野郎の言ってることは本当なのか?」
アイリは蓮華の部屋で静かに頭を捻っていた。
蓮華に協力を頼まれた。
しかし、アイリは条件付きで許可した。
『涼しいエアコンの効いた部屋に連れて行け、』という条件だ。
蓮華の不在中、アイリは冷風に吹かれながら考える。
蓮華いわく“桜“と“いなり“がいたようなのだが・・・全くわからない。
「ほんと、警察の勘違いじゃないのか?」
しかし、自分が知ってる限り、よっぽど焦っていないとあんな情けない表情をするはずがない。
ただでさえ、あのプライドの高い蓮華が。
「まあな・・・でも、確かにおかしい部分はあるな。」
人魚との戦闘は、自分で人魚をボコボコにして勝手に帰ってきたと思っていた。
しかし、記憶がぼんやりとしていて定かではないのは確かだ。
「うーむ・・・あ!そうだ、幽霊警察の持ち物を見れば・・・!」
アイリは立ち上がり、蓮華の机の引き出しに手をかける。
『姉さん、ダメだよ・・・人のもの、それ。』
頭の中にふと聞いたことのある少年の声が響いた。
ふと振り返るが、誰もいない。
「おかしいな・・・今、姉さんっつったか?いや、吾輩は一人っ子だ。・・・多分。」
アイリはこのことで自分の記憶が一歳信用できなくなった。
この声・・・命をかけて、守ったはずなのに忘れてしまっている。
「吾輩、おかしいのか・・・?」
そう言いながら遠慮なく引き出しを開ける。
しかし、引き出しの中には変な枝が一本だった。
「な、なんだこれ。」
不気味な白い枝。
折れてしまいそう、だが小さいのにえらく重い。
触るとひんやりしており、少し霊力を帯びているのがわかる。
アイリは何も言わずに枝をそっとしまい、引き出しをしめた。
「幽霊警察・・・絶対に何かおかしいな。」
アイリはその枝のことを忘れようと、引き出しに背を向けた。
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「うるるさん!うるるさん!」
・・・嫌な予感がする。
放課後、私は全速力で古民家へと走っていた。
朝、起きた時からおかしいとは思っていた。
この時期に・・・桜の花びらは落ちていないはず。
なのに、ところどころにピンク色の桜の花びらが。
「うるるさん!」
「おお、どうしたどうした。そんな勢いで。」
うるるさんは目を丸くしている。
・・・あの時と同じ反応。
頭がクラクラする。
「うるるさん・・・私が焦っている理由、わかりますか?」
「ん、いや・・・忘れていたらごめんだけど・・・わからない。」
「じゃあ・・・・いなりくんは?」
「ごめん、さっきから何を言ってる?」
うるるさんは私を見た。
・・・やっぱり、忘れられている!
いい方向に向いているような気がしていたけど、一気にどん底に突き落とされた私は膝から崩れ落ちた。
一通り、説明をするとうるるさんは数回瞬いた。
「いやっわかった。わかったけどな・・・記憶がないし・・・そもそも、“元の世界“の記憶と
8月の記憶?そんなの、知らないんだけどあたし・・・」
「そんなっ!」
けど、いくら言ってもダメなのは痛いほどわかっている。
昨日までもそうだったから。
「・・・また、きます。」
「お、おう・・・」
私はそう告げて、階段を登る。
・・・うるるさんに頼ると、記憶が消えてしまう。多分、一週間刻みに。
頼らずに・・・自分で考えなきゃ!
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同時刻。
蓮華とアイリも同じようなやり取りをしていた。
「吾輩にそんなこと言われても・・・警察、ほんと頭がおかしいな。おかしいレベルすら超えてしまっている。」
アイリはやれやれ、と肩をすくめる。
しかし、その堂々とした態度に反して蓮華は細い声で答えた。
「・・・もういい、すまなかった。」
そして、帰路を辿る。
その背中を見ながら、アイリはなぜか申し訳なさを感じたのだった。
淡々と足を進める蓮華。
表情は変わらなかったが、相当ショックを受けた。
今まで、協力していたはずが・・・一週間立つと全て、忘れている。
桜と同じような状況だ。
すると。
コマッテルンダネ
「・・・は?」
急に頭に響いてきた声に、蓮華は足を止める。
慌てて止めたせいで、一瞬前のめりになり、転びそうになる。
すぐにバランスを戻すと、目を閉じた。
ホントウニ、アナタタチサンニンハタイヘンナコト
(・・・どういうことだ?誰だ?)
マダイエナイネ、モドレルマデハ
戻れる、とはどういうことなのか。
しかし、蓮華にはそんなことを考える余裕すらなかった。
(なんのために俺に声をかけた?)
アマリニモ、コマッテルヨウダカラヒントアゲル。ダイジョウブ、カンタンナセカイノコンランダカラ。
この声いわく、“簡単な“世界の混乱らしい。
せっかくなら全てを教えてくれ、と思いながらも蓮華は脳内に集中する。
カッコヨクイウト・・・マキモドシノイツツメノヨル。オモイデノバショニツドイシモノ、イシガツウジル。
『巻き戻しの五つ目の夜。思い出の場所に集いし者、意思が通じる』
とその声は云った。
(そうなのか・・・。)
ガンバッテネ
最後にそう言うと、その声は消えた。
(・・・おい!)
蓮華は何度もそう呼びかけるが、返事が返ってくることはなかった。
「巻き戻しがこれか・・・5日目の夜・・・思い出の場所ってどこなんだ?」
蓮華はそう言うと、ハッとしたかのように家への帰り道を走った。
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「よいしょ、これでもう誰も迷わないかな。」
とある空間。
異端な雰囲気を放つ薄暗い部屋で、一人の少女はそう言った。
「うん、よくできたねぇ。あの馬鹿どもにはわからないか、この混乱。まあ、抜け出せなかったらこっちが困るから・・・手伝ってくれて、助かるよ。」
少女は振り返る。
薄暗いので、顔はよく見えない。
詳しくはわからないが・・・背の高い男だと言うことは知っている。
「うん・・・必要なこと、だもんね。私だって・・・やりたい、ことだしね。」
少女は、その男に言った。
にまっと笑った勢いで短い髪が跳ねた。




