起死回生の策
螺旋からなんとか人間界へ戻ってきた桜たち。
しかし、安堵も束の間。スイリが異常な程に静かで・・・!?
絶望的な状況の中、桜が提案した一つの“策“とは・・・?
「う、うーん・・・何を見た?」
大きく伸び上がる。
そして、ぼんやりとした記憶に首を傾げる。
なんか、見たような・・・見てないような。
螺旋に飛び込んだとこまでは覚えてるけど・・・そこから先が、霧がかってよく思い出せない。
隣を見ると、いなりくんが小さな息を立てて眠っている。
「起きたか?」
「わっ、蓮華先輩!」
ひょこっと急に顔を覗き込んだから驚いた!!
「螺旋に飲まれてから稲荷神社へ出てきた。俺も今目覚めたばっかりだ。」
先輩は目を軽く擦った。
・・・そっか。そういえば、夜出かけて一睡もしていない。
そう自覚した時、強烈な睡魔が襲いかかってくる。
「・・・眠いのか?」
「ひゃ、ひゃい・・・」
あくびまじりに答えたせいで、声がふにゃふにゃになる。
「寝てていい。何かあったらまた起こすから。」
先輩はそう言って、稲荷神社のベンチを指差す。
「あ、ありがとうございます・・・ふあああ、」
あくびをしながらベンチへ向かう。
・・・眠い、とにかく眠い。
何もしなくても瞼が落ちてくる・・・
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「わああっ!!」
いなりはそう声を張ると一気に起き上がった。
そして慌てて周りを見渡す。
「あまり大きな声を出すな、迷惑だ。」
いなりは蓮華の方を見る。
硬いコンクリート感触に、『今寝そべっている』という現実がわかる。
「桜は?」
桜が見当たらないのに気づく。
「稲荷神社のベンチで寝ている。・・・どうする?アイリも起こすか?」
「そうだね、起こした方がそのためになるし。」
起き上がりながらいなりは答える。
まだ薄暗く、陽が登っていない静かな時間。
「アイリ、アイリ!」
いなりが何回か名前を呼ぶと、アイリは目を擦る。
「なんだ、吾輩に用か・・・?」
アイリは上半身を持ち上げる。
「稲荷神社だよ!ここは!」
「・・・そうか、吾輩たち渦に!」
「やっと理解したのか。」
理解が少し遅かったアイリに、容赦なく呆れた声を投げかける蓮華。
「ガキンチョは困るよ、ガキンチョは。」
いなりのふざけた声に眉を吊り上げるアイリ。
「お前こそガキンチョだいなり!!」
「はいはい、そうですか。」
「喧嘩はやめとけ・・・まずスイリは?大丈夫なのか?」
アイリは「あ、」と声を漏らすと腕の中のスイリに目をやる。
いなりとの口論のあまり、肝心のスイリを気にかける余裕すら忘れていたのだ。
「大丈夫そうかな?」
いなりは穏やかな顔をしたスイリにそう言った。
「静かだな・・・いや、静かすぎじゃないか?」
蓮華がそう口を開いた。
静かだ、とは思っていたがやけに静かだ。
かれこれ人魚の戦闘中から目を覚ましていない。
落ちてくるコンクリートの轟音にも、螺旋から飛び出した衝撃でも全く目を覚まさなかったのは落ち着いて考えると、「異常」だ。
「・・・スイリ!スイリ!」
そのことに気がついたアイリの顔が真っ青に染まる。
「息は!?息はしているの!?」
いなりがそう言った。
先ほどの軽い調子など微塵もなく、本気の切迫感が声に詰まっている。
アイリはふるふると激しく首を横に振った。
「どうしてだ!?」
「人魚の毒針しか考えられない!」
「強い毒・・・それもまた、オウタの力なのか?」
蓮華の問いに、アイリは食らいつくかのように声を荒げた。
「オウタなら、消滅したはずだ!いや、もしかしたら・・・別のオウタが、別のやつに掛けられていた・・・?」
動揺のあまり言葉を繰り出すスピードがいつもの倍にも跳ね上がっている。
「警察!お前にどうにかできないのか!」
「・・・俺にそんな力はない。」
蓮華は静かにそう言った。
震える手でアイリはスイリの手を握る。
「スイリ、スイリ・・・!」
「どうにかできないの?」
いなりは稲荷神社へ飛び込む。
しかし、見回せば見回すほど“自分にできることは何もない“という事実と無力感が胸を締め付ける。
「違う、違う・・・!」
(何かないか、何か、誰か・・・!)
時雨を再び呼び出すことも考えたが、彼は冥神。
たとえ弟であろうが、そこまで気軽には呼び出すことができない。
本殿、狛犬、海、空、道路、家、鳥居、階段・・・
「ああもう!」
いなりの声が荒々しく夜気を切り裂く。
「いなりくん、どうしたの・・・?」
その声緊迫した声で、桜が目を覚ました。
「スイリが!毒で、息をしていないんだ・・・!」
「え!?どうして・・・?」
桜は目を見開くと、慌ててスイリの元へ行く。
蓮華もアイリもお手上げ状態に桜は頭を抱えた。
その瞬間・・・
桜はこの絶望的な状況を打ち砕く一つの起死回生の糸口を見つけた。
しかし、それを実行するには大きな大きな分厚い壁がある。
アイリが、その方法を素直に引き受けてくれるかどうか・・・。
桜は一瞬迷いを見たが、一刻の猶予もない。桜はすぐに口を開いた。
「一つだけ、方法があるよ!」
___________________________________________________「・・・本当にいいのか?アイリ。」
「ふん!お前に心配される筋合いはない!」
アイリちゃんは先輩から数歩離れ、尖った声を投げかける。
・・・本当に、いいのかな?
オウタカクシの敵・・・いや、正確には『オアシス』の敵の本拠地に来ちゃって。
「うるるがなんて言うか俺は知らないけど・・・とにかく、アイリ。礼儀正しく。」
いなりくんは数歩前のアイリちゃんの背中を見ながら言う。
アイリちゃんは振り返りもせず、吐き捨てるように答えた。
「さあな。」
「アイリ、ここで知ったことは他言無用だ。」
「・・・さあな。」
アイリちゃんは、先輩の警告にもそっけなく答えた。
でも、そんなアイリちゃんの顔にはわかりやすく動揺と焦りが浮かんでいる。
「先に、私たち3人が行くから・・・許可が取れたらアイリちゃんのとこに来る。」
「できるだけ、早くな。」
アイリちゃんはスイリくんを抱く腕の力を強めた。
できるだけ、早くしないと・・・。
そう決心して、私はうるるさんとウルフさんの家・・・あの、古民家の古い扉を開いた。
みりぐらむです!
果たして、スイリは助かるのでしょうか?
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