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龍の血筋と冥神の役目

通路の崩壊が始まり、うまく進むことができない4人。


すると、いきなりショートが巻き起こって・・・!?


⚠︎最後の方、血の描写があります。

「崩れる・・・逃げろ!」

コンクリートの破片が頭上から降り注ぐ。

時々、スイカほどもある塊が、私たちを震わせる。

冷静に避けているほどの落ち着きは、誰にもなかった。

「霊巫女の覚醒?双子の本領?何それっ・・・!」

私は先ほどから頭の中でぐるぐると回っているワードを口に出さずにはいられなかった。

「説明は後・・・くそ、ここは何階なんだ?」

いなりくんが周りを見渡し、崩れていく道を文字通り命がけで駆け抜けていく。

グラグラと通路そのものが揺れ、バランス感覚が崩れていく。

傾く天井、バリバリと裂けている壁。

「というか・・・コンクリートで死ぬ前に、ショートで死ぬ!」

アイリちゃんが切羽詰まった声を上げた。

振り返ると、スイリくんとアイリちゃんの服が不穏な光を帯び始めていた。

「そうか。2人は、霊力が規格外だから俺たちより先にショートが起こる!」

「たっ確かに。」

「技を放てば、その反動で一気に崩れるぞ!」

アイリちゃんはスイリくんを抱き抱えたまま言っている。

「その前に・・・桜が・・・!」

「え?私がなんて?」

その瞬間だった。

じんわりと首筋が暖かくなってくる。

「あれ?」

首の熱が跳ね上がり、熱々の鉄を首に流されたかのような激痛と熱が走る。

顔が歪んでいくのがわかる。

「な、なんで、こんなとこでショート。」

「くっそ、遅かったか・・・!桜!」

その直後、いなりくんの尻尾からハラハラと毛が舞い落ちた。

「俺にも・・・!」

「まずい・・・吾輩もショートが酷くなって!」

アイリちゃんの顔が熱のせいか真っ赤になっている。

崩壊の音が大きくなっていく。

現実を突きつけるかのように、視界の多くが灰色になっている。

「くっそ・・・通路が崩れる!」

いなりくんの声が震える。

「人魚を殺めた代償なのか、これは?」

アイリちゃんの顔が歪む。

いなりくんの方を見たいけど・・・指一本動かせない今は無理だ。

終わり、そんな言葉しか浮かばなかった時だ。

「保力!」

力強い声が聞こえてきた。

・・・うん、忘れるわけがない。

絶望の中に、希望が一筋見えた。

青みがかったバリアがドーム状に私たちを覆う。

そして、異常なほどの熱が引いていく。

強張っていた体がわずかに動く。

コンクリートの崩れもだんだんと収まる。

「・・・この声。」

アイリちゃんは、安堵と悔しさの混ざった複雑な表情。

「はあ・・・何をしていると思えば。」

「蓮華!」

やっと姿を現した、声の主・・・蓮華先輩は呆れたような目でいなりくんをみた。

けれど、いなりくんは嬉しそうに目を輝かせる。

「完全に終わったと思ったよ〜」

「おい!ついてくるな!」

狭いバリアの中で、いなりくんは先輩を追いかけ始める。

「迷惑だな。」

アイリちゃんはそう呟いてため息をつく。

そっか・・・そういえば、アイリちゃんは警察と敵対していたんだったな。

「バリアは脆い!暴れるな、完全なものではなく一時的なものだ!」

先輩がそう言ったところで、いなりくんは動きを止めた。

「確かに脆そうで弱々しいね。」

「命の恩人にその態度はなんだ。」

言い返すいなりくんには、いつもの余裕が戻りつつある。

「ああ、もう狐のことは無視する。3人とも、大きな怪我は?」

「・・・ない。」

ぶっきらぼうにアイリちゃんは答える。

顔の赤みは、まだ完全には抜けていない。

先輩の視線がこちらに向く。

「私もない・・・のかな?」

「なんだその頼りない返事は。」

「桜、首に針を刺されて・・・まあ、今は大丈夫そうだけどね。」

いなりくんがすかさず代弁をする。

「スイリは?」

「・・・大したことはない。気絶をしているだけだ。そのうち目は覚める。」

アイリちゃんは先輩から目を逸らす。

2人の不仲は相変わらず変わらなかった。

けど、それすら『日常』を思わせ、冷静を引き戻してくれた。

「一旦、このバリアの中だけ霊力を安定させている。・・・どうする?時間はかかるが、もっとちゃんとしたバリアを貼って時雨を呼ぶか?」

「それ以外に安定した方法は?」

「・・・今思いつく限りはない。」

「なら・・・やるしかないね。」

いなりくんはそう言った。

先輩は、バリアの外に向かって杖を突き出す。

「保力!」

杖の先に、霊力が集まっていく。

霊力が限界まで膨らむと、一気に弾けてバリアの外壁を補強する。

でも、その外側では崩壊が続いていた。

音も光も飲み込まれ、通路が完全に崩壊する。

あたりは真っ暗になり、不気味な雰囲気を醸し出している。

さっきまで猛烈に熱かった首が、今度は氷を押し付けられたかのように冷え切っていた。

「ねえ、どれぐらいかかる?」

いなりくんが不意に口を開く。

「10分だ!無駄口を叩くな!」

本気の怒り。

いなりくんは、その言葉に素直に口を閉じた。

「スイリ・・・」

アイリちゃんは祈るように呼びかける。

そして、ふと前を見るとうっすらと青いバリアが見え始める。

「よし、もう少しだ・・・・!」

冷え切っていた体に体温が戻る。

やっと、『生きている』と思える。

真っ暗。ここにいる生命は私たちだけ。

「いなり・・・時雨を!」

先輩はそう言って杖を下ろす。

いなりくんはそれを見てほっとした表情を浮かべると、すぐに表情を締まらせる。

大きく息を吸う。

「死を司る者よ、深淵より来たれ!冥神、この世界に降りたてよ!」

その呼びかけと共に、地面に『霊』の印が書き込まれ、突風が吹いた。


ぴしっ


ひび割れるような音がした。

「な、何・・・?」

私が声を漏らすと同時に、先輩が再び顔色を変えて杖を握る。

「もういいと思ったが、まだ完全ではなかったか・・・!」

再び杖を突き出して、ひび割れた部分の修復をし始める。

そして、霊の印を中心に人影が浮かぶ。

「死を呼び、与えられし者。汝が霊と死の力を持つものか・・・」

いなりくんにそっくりだけどちょっとだけ低い、落ち着いた声。

「な、なんで・・・?」

アイリちゃんは驚きのあまり、声がほとんど出ていない。

溢れんばかりに目を見開いたまま体が硬直する。

「・・・お兄ちゃん、どうしたの?」

完全に、姿が浮かんだ。

時雨くんはにっこりと笑うといなりくんに言った。

柔らかい雰囲気に反して、纏う空気は『神』そのもの。

「お、お兄ちゃん・・・?」

アイリちゃんは信じられないものを見るように、何度も瞬きを繰り返す。。

時雨くんはアイリちゃんの方を見る。

「・・・?どこかでみたことのあるような・・・?」

少し首を傾げる時雨くん。

しかし、すぐにいなりくんの方へ向き直る。

「えーっと、通路にいたけど霊力が反応し合って、通路が崩壊してこんなとこまで来ちゃった、ってとこかな?」

「その通り!蓮華が今保力のバリアを張ってくれてるんだ。」

「へぇ〜、僕が来ても大丈夫なんだね。」

そう言った、時雨くんの表情にドキッと胸が高鳴った。

一瞬だけ、蓮華先輩のことを『警戒すべきもの』を見る目で見た。

見間違いじゃない、そう見ていた。

「じゃあ、早く・・・戻っちゃおっか。」

時雨くんはネックレスの鈴を3回鳴らす。

「人間界へ!」

空間を歪ませ、螺旋が現れる。

「じゃあね。お兄ちゃん、桜ちゃん、蓮華さん!」

「時雨くんは、来ないの?」

「僕は自力で帰ることができますから。」

小さく手を振る時雨くん。

後ろから、螺旋に引っ張られる。

私は迷うことなく、飛び込んだ。

続けて、みんな螺旋に飛び込んでくる気配を感じながら、意識は薄れていった。

___________________________________________________

「さて、と。」

全員が渦に飲まれ、1人になった時雨はそう言った。

深くかぶっていたフードをとる。

いなりにそっくりな顔が出てくる。

耳にはクローバーの宝石がついたピアスが揺れている。

「蓮華さんだっけ・・・?調べなきゃ。僕の・・・役目だ。」

時雨は、震える指先と心を落ち着けるためそう言った。

(怖いけど・・・調べるものは調べないと。僕は、冥神だから。)

そして、時雨は螺旋が浮かんでいた場所に目をやる。

「みんな、今頃は・・・誰の過去を見ているのかな?」

そう言うと、ふっと静かに笑いを漏らした。

___________________________________________________

「ま、待て。姫様は僕(やつがれ)が守る・・・!」

「何を言っている、菡萏(かんたん)。其方は冥界を追放された身であろう。何を言っておる。」

降りしきる土砂降りの雨。

騎馬兵と弓を構えた兵士が一つの大屋敷を包囲していた。

その群の最前では、龍のツノが生え、龍の尾が生えた子供が蹲(うずくま)っていた。

群青色の着物がところどころ紅色に染まっている。

右目からは絶えることなく、鮮血が流れている。

必死に左手を突き出し、水晶を出そうとする。

しかし、できたのはほんのビー玉。

ふん、と大将らしき人物は侮辱を込めて、鼻で笑う。

「それで何ができよう。追放され、折角(せっかく)人間界の大屋敷の守護につけたのによう。なんと悲しき。」

冷酷な眼差しが菡萏を見下ろす。

「くっ・・・!」

そのビー玉を、一本の鋭い矢が破壊した。

「姫も哀れなこと。霊力があったあまり、こんな半端者を守護につけてしまい。忌々しき龍の子は処刑されるしかないのによう。」

「な、にが・・・!僕は龍の子だが、そんな、一族追われる身にしたのはそっち・・・!」

「懺悔をすれば命だけは助けてやる。姫もだ。どうだ?いい言葉ではないか?」

「嘘だ!」

大将の言葉を切り裂くかのような大声で菡萏は叫んだ。

腹の傷が痛み、より体を丸める。

「母さんは僕も助けてもらえると信じて、懺悔をして・・・殺された!」

大将の目の色が変わった。

「菡萏がそれを知っているとは・・・もういい、やれ。」

「ははっ!」

一斉に無数の弦が弾ける音が響いた。

菡萏の小さな体に、矢の雨が降り注いだ。


同時刻。

屋敷の奥でも、同じ悲劇が行われていた。

上等な着物を纏った小柄な少女が身を丸めていた。

彼女もまた、怪我をしており出血がひどい。

「吐け!なぜお前がその莫大な霊力を持っている!」

「知らぬ知らぬ!妾(わらわ)は何も知らぬ!霊力とはなんじゃ!」

怯える少女の鼻先に、兵士の持つ弓矢の先端が突きつけられた。

矢のさきが銀色に光る。

「ほら、お前の父さんも母さんも死んだ。乳母も妹も死んだ。さあ、次はお前だ。」

「知らぬ!知らぬ!」

彼女の大きな瞳から、とめどない涙がたたみを濡らしていく。

本当に、姫は何も知らないのだ。

「あの龍の子も死んだぞ。」

「っ・・・・!」

姫の目が恐怖で見開かれた。

姫の細い希望は、打ち砕かれた。

「もういいっ・・・殺すなら殺せ!早く・・・妾を!」

菡萏が死んだ事実が、生きる気力を全て奪った。

そして・・・少女の身にもまた、おびただしい数の矢が降り注いだのだった。


平安時代、春の最初の冷たい夜のことだった。

こんにちはみりぐらむです!

ごめんなさい。

忙しくて投稿できていませんでした。


『菡萏』。『姫』。

一体、誰の過去なんでしょうね・・・?

過去が見えた理由は、いなりの過去と同じ原理です!

⭐︎苺大福と少年を読むとよくわかるかも!

さて、時雨が蓮華へ抱いた違和感とはなんでしょうね?


次話も良ければお読みください!

『面白いな〜』『続き気になるな〜と思っていただけたら!

評価・ブクマお願いします!

レビュー感想もお待ちしています!


これからも頑張っていきます!!



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