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泉の向こうで待つのは人魚

アイリとスイリが失踪してから2日。


ウルフが特定したのは、とあるものが写った写真。


その一枚の写真から、謎がゆっくりと紐解かれていって・・・!?


救出の始まる、第47話開幕。

⚠︎血の描写、骨の折れる描写あります。

「・・・まだ?今日も・・・見つから、ないの?」

口の中がカラカラに乾いている。

「・・・ああ。急かさないでくれ、こっちは敵組織を探してやるのに手一杯だ。」

その言葉に、ハッとする。

土曜日。

ウルフさんの元へ、アイリちゃんたちの跡を探しに訪ねていた。

「・・・なあ、こんなことウルフにやらせんなよ。」

ふと声が聞こえてきて、そちらを向くと、うるるさんがやや不機嫌そうな顔をしていた。

「・・・しょうがないじゃん。」

いなりくんがボソリと言った。

「狐。いい加減にしろ。たとえ見つからなかったとしても・・・信頼関係は築けていない。そして、あの2人ならなんとか切り抜けているだろう。」

「けど!ここまでいないってことは・・・何かあったってことだよ!」

「とは言ってもだがな!ウルフと2人は敵関係だ!そんなことをやらせるとは・・・鬼だなお前は!」

2人の言い争いがエスカレートしてきた、その時だった。

「うるさい。」

鶴の一声、とはこのことなんだと思う。

ウルフさんが静かにそう言ったのだ。

「俺が好きでやってることだ。別に・・・敵とかは気にしていない。」

「でも!ウルフ!あんたは・・・・」

「たとえ敵だとしても・・・生きていることに変わりはない。もしもここで終わってしまったら・・・少し、味足りないし。もう少しオアシスの奴らとも喧嘩をしたいよ。」

ウルフさんはうるるさんの言葉をも拒否する。

そして、ウルフさんはこう言った。

「ごめんけど・・・口出し、しないでもらえる?」

うるるさんはもう何も言わなかった。

何もなかったかのように、いなりくんは静かになっている。

「・・・ここまで。ここまで、たどり着いたんだ。」

キーボードを叩く音が部屋に鳴り渡ること数分。

ウルフさんはとある画面を出した。

「これって・・・人魚?」

画面いっぱい映り込んだその写真は、池と尾鰭が映り込んでいた。

一瞬、魚かと思った。

けれど違う。

周りの木と比べたら・・・魚なんてものじゃない!

人間の女性ぐらいの大きさがある。

そして・・・色がおかしい。

真っ黒だ。

「これは歌泉なのか?ウルフ。どうやら、周りの木の配置が違うようだが・・・。」

「ああ。天羽の言う通り、これは歌泉“そのまま“の画像ではない。

「そのままではない・・・?どう言うこと?」

いなりくんはウルフさんを問い詰める。

「これは・・・歌泉と繋がった地界の泉だ。」

その言葉に、先輩は目を見開く。

「繋がったって・・・・歌泉の主は地界と人間界をつなげていたということなのか?」

先輩の表情から、焦りが見て取れる。

「そんなにまずいことなんですか?」

「まずいことどころか・・・大罪だぞ!」

「とある場所を経由して、地界へ生きた人間を送り・・・霊力を搾り取る。」

いなりくんが一言そう言った。

「あたしも知らないな・・・そこまでは。」

一応人間のうるるさんは、数回またたく。

「昔行われていた、『生き霊搾りの儀式』だ。だいぶ前に、廃止された。・・・冥界と人間界のサイクルがうまく行かないからだ。」

「もしかして、あの泉は・・・儀式を行うために地界と繋がっていた門!?神隠しって・・・そう言うこと!?」

全てが繋がり、思わず声が裏返る。

先輩はそう言うことだ、と頷いた。

「俺の推測だけど・・・儀式を行っていたのは歌泉の主の『落神』。おそらく、その落神の姿は人魚の形をしている。」

いなりくんは人魚の尾鰭の写った画面を睨みつける。

「俺も同感だ。こまるが聴いた歌とは・・・人魚の歌?」

先輩は、横目でいなりくんを見る。

「でも・・・儀式をどうして人魚は行ったんだろう?」

「生きた人間は超希少。だから・・・高い値がつく。」

「結局、人間も幽霊も金目当て、ってことか・・・。」

うるるさんはため息をつく。

「オウタは・・・誘拐のために使ったんだろうな。基本、一匹の幽霊であそこまでのことはできない。」

「じゃあ、今すぐにあの2人を助けに行かなきゃ・・・!」

「いや。今は無理だ。」

先輩は、首を横に振る。

「ど、どうしてですか?こうしているうちに、2人は・・・。」

「2人は地界の近くに連れて行かれてしまっている可能性がある。だが・・・“地界“に足を踏み入れたのではなく、まだ通路の途中だろう。」

「通路の途中・・・?」

ん?なんだか、心当たりがある気がするぞ。

「桜は通ったことあるよ!」

いなりくんが尻尾をゆらりゆらりと振る。

「桜、覚えていないのか・・・?あれほどの経験だぞ。」

「んーっと・・・もしかして、世界の末端から天界に繋がる門?」

「そ!世界を繋ぐ門と門の間には空間があって・・・そこに2人がいるって、蓮華は言いたかったんでしょ?」

「俺が言いたかったのはお前が言った説明だ!」

先輩は、悔しそうに言った。

「2人は霊力が強く、いきなり地界に顔を出すと・・・幽霊警察にバレる。だから・・・通路で準備をしているんだ。2人の霊力を消すか減らすかの。そして・・・通路を通れる時間帯は、霊力の高まる・・・夜、真夜中だ。」

「昼の今は・・・霊力が、足りないっていう・・・ことですか?」

手が震える。

2人が、どんな目に遭っているのかわからないのに・・・何もできない。

最悪の状況だ。

「ああ。だから今は・・・待機、だ。」

「・・・今日の夜、行きましょう。泉に。」

「だが・・・ショートの問題はどうするんだ?」

「あ。」

先輩の言葉にハッとする。

2人は行けたとしても・・・私たちは行けるかどうか。

「そんなの簡単だろ。」

ふとウルフさんが口を開いた。

「霊力のあるものにショートはつきものだろ・・・。」

「だから、無くせばいいんだよ。無くせば。」

ウルフさんは淡々と言うが、全く理解ができない。

「無くせばって・・・霊力をか!?それは難しくないか!?」

「だから、さっき言っただろう。霊力を消すか減らすか、って。」

「え!?できるんですか!?」

私はついつい大声を上げてしまった。

恥ずかしくなり、小さくなる。

「ああ。通路の中なら・・・通路の霊力で動く部分を弱めれば霊力の高まりは抑えられるが・・・・。」

そこで何かに気付いたのか、先輩は言葉を切った。

「そう言うことか!!ウルフ!」

「なるほど!ウルフにしちゃあよくやるね!」

「やかましいわいなり!」

ウルフさんいなりくんに噛みつくかのように言う。

「でも・・・それならどうして2人は行けたんだ?そういうことなら、今夜は行けるだろうが・・・。」

先輩がそう言うと、いなりくんは口を開く。

「さあ・・・。あの夜は俺たちにショートが確実に起こってから、2人が行ったもんな・・・。」

意思疎通をしているかのように、三人はやり取りをしている。

すると、ふとうるるさんが声をかけてくる。

「で?桜はわかったの?」

「まっまあ・・・。」

うるるさんの問いに、返事をするとうるるさんはがっくりと項垂れた。

「まじかー、あたしにはさっぱりだわ。脳筋には・・・殺し屋くらいがちょうどいいのかもね。」

うるるさんは自身のライフルケースに目を向ける。

それにいたたまれなくなり、私は説明をすることを決断する。

「あ、あの・・・ショートが起こる原因って、霊力と霊力が反応し合うことなんですよ。通路の霊力・・・すなわち、歌泉の霊力さえ抑えられたら、私も行くことができるんですよ!」

うん。我ながらいい説明ができたぞ・・・。

「うんうん・・・・。」

うるるさんは何度も頷いている。

そして、頭の動きを止めるとこう言った。

「なあ・・・ショートってなんだ?」

___________________________________________________

「触るな!汚い手で!吾輩はオウタカクシの・・・!」

「ふふ、かわいいわね。でも・・・今はオウタカクシとかは関係ない。私の奴隷だもの。」

その言葉と同時に、アイリの体に一気に傷が入る。

四方八方に血が吹き飛ぶ。

しかし、アイリは痛がるそぶりを見せない。

しかし・・・本当は、相当の痛みを感じていた。

この通路につれてこられてから2日。

外には見せずとも、アイリの心と体はボロボロになっていた。

「くそ魚めが・・・!」

「魚?私はお美しい人魚でしょ?人魚様、とお呼びなさい?」

「・・・んなこと呼べるかよ!吾輩は吾輩しか信じない!この残酷な魚!」

「・・・少し、お口が過ぎたようね。あなたこそ、犯罪者の頂点でしょう?」

人魚はその赤い瞳をカッと見開く。

再び、アイリの体に傷がつけられる。

今度は指が2本吹き飛んだ。

しかし、秒で再生する。

人魚はアイリに触れていない。

人魚の手下の魚によって、傷がつけられているのだ。

「く・・・そが・・・!」

アイリは相変わらず痛がる様子を見せない。

それどころか、さらに人魚を睨んで見せたのだ。

「あらあら、かわいいわね・・・。」

人魚はそう言うものの、少しも感情なんてこもっていなかった。

「は、犯罪者なんか・・・!」

「一体、あなたはその小さな小さなおててで何人の命を奪ってきたのでしょう。」

漆黒の鱗がついた華奢な手で、人魚はアイリの手を触る。

ゴリゴリと音が鳴り響き、骨が砕けていく。

「・・・さあね。」

アイリはそっぽを向く。

「あら、これ以上逆らったら・・・怖いわよ?私なら、あなたの首をいつでも吹き飛ばせてしまうもの。」

アイリは悔しかった。

縄と手錠で、完全に身動きが取れないからだ。

いくら強いとはいえ、力は9歳。

正直言って、アイリの強さは道具の力だったのだ。

アイリが誇るのは俊敏力、動体視力、体力だ。

しかし・・・残念ながら、この場ではどれも活かせそうにない。

「じゃあ、またくるわ・・・私のかわいい、奴隷さん。あなたにはその体の霊力をお金にしてもらうわ!」

人魚はそう吐き捨ててから、尾鰭で空間を叩きつけて鉄格子を開け、右へ曲がっていった。

黒い髪の毛が、不気味になびいた。

「次の部屋は・・・可哀想な人間か。」

アイリはやれやれ、とため息をつく。

これまでに何十回、あの憎ましき魚に傷をつけられたか。

あの夜、アイリは桜と会ったことの動揺で、集中力を欠いていた。

そのためか・・・注意力がなく、まんまと人魚に沈められてしまった。

今まで、アイリが指示を飛ばしてスイリと戦っていた。

だからか、スイリの抵抗はほぼほぼ人魚に当たらなかった。

そして2人揃って・・・通路に連れてこられたのだ。

「で、吾輩とスイリは身を割かれ、気絶した隙に縄でぐるぐる巻きか・・・情けない。」

アイリは1人反省をする。

「・・・元はと言えば、元はと言えばあの人間が悪いんだ!」

あの人間とは・・・桜のことである。

「あの時。あの時来なければ・・・オウタも消せて、こんな目には!」

そう言って、1人ハッとする。


(・・・吾輩、弱気になっている?)


そう考えると、自然とアイリの目から涙が溢れていたのだった。

「どうして?吾輩、泣いているのか?」

アイリは泣き虫だ。

昔っから泣き虫だ。

「・・・ほんっと、情けない。」

自分への侮辱を最大に込めて、吐き捨てた。


「〜だってよ。」

「え!?まじか!?するのか、生贄に!」

何気ない看守(看守と言っても、人魚の手下の大きめの魚。)の会話に、アイリはやけに嫌な予感がした。

「あの、霊力の無駄に高い子供だってよ!儀式じゃなく・・・商売繁盛を願っての生贄だって!」

「人魚様、毎回の如くいい判断を下されるな・・・。で?2人いるけど、どっちなんだ?」

「姉の方だってよ!」

その言葉に、ヘナヘナとアイリは膝から崩れ落ちる。

「・・・まあ、元々ないような命なんだもな。」

視界にはコンクリートの灰色しか映らない。

「こんなことに使われて・・・当然だ。」

看守の言葉が、アイリの精神にとどめをさしたのだった。

___________________________________________________

「いよいよ・・・。」

目の前には、月を反射した泉。

先輩とうるるさんは、2人とも冥界での用事があるみたい。

珍しく、私といなりくんだけだ。

いなりくんは顔をひょこっと出して顔を映す。

「俺イケメーン!」

「ちょっとふざけないで。」

「・・・・すんません。」

しゅん、としっぽがしぼんだ。

「ここに・・・飛び込むの?」

「もちろん。」

「・・・本当に濡れないんでしょうね。」

服の替えは持ってきていない。

邪魔になるからだ。

・・・まあ、持ってきていて濡れても着替える暇なんてないだろうけど。

「飛び込んでから、すぐに通路に転送されるって・・・ウルフが。」

「・・・ほんとかな。」

すると急に、焦りと緊張から心臓が大きく鳴り始める。

「・・・ねえ。今から・・・戦うの?」

「もちろん。・・・その覚悟、あってきているんでしょ?」

「もちろん・・・だけど、慣れないなって。」

いまだに影との戦闘の時もかなり緊張する。

手に目をやる。

黒い銃。

だいぶ手に馴染んできた。

「じゃあ・・・いくよ。」

いなりくんは私の手を握った。

「いざとなったら・・・俺が。俺が助けてやるから!」

不敵に笑うその顔は、不覚にもカッコよく見えた。

・・・ムカつくことに、この狐まあまあ顔整っているんだよな!!

「いくよ!3!2!1!」

「「0!」」

『ゼロ』の掛け声が揃って、顔を見合わせる。

同時に地を蹴って泉に飛び込んだ。








こんにちは!!みりぐらむです!

今回、どうでしたか・・・・?

アイリが見せていた強さと、中身の弱さ。

ウルフの特定した写真から始まる謎解き・・・どうでしたか?

書いていて、すごく楽しかったです✨


次話も読んでいただけたらまっっっじで嬉しいです!

ブクマ・評価・感想・レビュー、是非ともお願いしたいです!

誤字があったら遠慮なく報告お願いします(╹◡╹)

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