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意識の外側

うるるとウルフの隠れ家へ尋ねた桜たち。


その時、桜たちは心臓探しであった“あの人“を思い出して・・・!?



幽霊警察が助けなかった理由とは?


「うるるさーん!桜です!」

こんこん、と古民家のドアをノックする。

先輩といなりくんは私の後ろにいる。

「オウタカクシ・・・どうして、俺たちの目の前に急に?というか、幽霊警察はなぜ助けなかった・・・?」

古民家へ訪ねる理由。それは・・・人形屋敷についてと、オウタカクシについて、だ。

「オウタカクシ・・・・本当に、俺は聞いたことないな。」

いなりくんは瞬きを数回する。

その時、古民家のドアが開いて、うるるさんがひょっこりと顔を覗かせる。

「よ!桜!いなり!蓮華!」

「壬生〜!」

「いなりは呼び捨てするな。」

いなりくんの冗談を、うるるさんが即却下する。

「なんで!前いいって言ってくれたじゃん!」

「さあ、覚えてないな〜。」

「絶対覚えてるじゃん!」

「さ、入って。」

「無視すんな!」

うるるさんはいなりくんのことを無視して、私たちを古民家へと招き入れた。

いつも通り、五右衛門風呂の蓋をそっと開ける。

「それにしても・・・・人形屋敷?に連れて行かれていたなんてな。」

人形屋敷については、電話で簡単に説明をしている。

「あたしは世界の末端にも、人形屋敷にも行ってないからな〜。海のことについては、ウルフから何度か聞いたけど。」

その長い長い階段を下りながら、うるるさんはそう言った。

「人形屋敷の主は、人形に霊力で命を吹き込めるから・・・厄介なんだ。」

「主って・・・名前、わからないのか?」

「うん。純情って名乗っていたけど・・・その、『純情』の体も彼女が作った人形でね。」

超能力チートすぎだろ。」

そう言いながら、ガチャリとドアを開けてくれる。

久々に入るから、モニターの光が眩しく感じる。

「よ、桜、いなり、天羽。」

パーカの袖から、ちょっぴり指先を出して手を振ってくれるウルフさん。

「人形屋敷の件だが・・・。」

初っ端から先輩はウルフさんへ人形屋敷の話を畳み掛ける。

「・・・長くなるのは覚悟する。どんな経緯で、どんなところで目が覚め、どんな出来事があったのか。知る限り教えろ。」

ウルフさんは珍しく目を合わせてくれた。

___________________________________________________

「・・・という訳で。」

先輩が話し終えた。

途中、何度かいなりくんと私が口を挟んだ。

途中あたりで、うるるさんは飽きたようなのかライフルを磨いていた。

「覚悟していたが・・・30分、よく同じ話をし続けられたな。」

ウルフさんは眉をひそめ、呆れたように言った。

パソコンのモニターには、私たちが話した情報が打ち出されていた。

もちろん、いなりくんが影に取り憑かれたということは言っていない。

“影が現れた“と、少し話に輪郭はなかったけど・・・話した。

「おおよその情報はわかった。・・・どうして誰1人連れ去られた時の状況を覚えていないんだ!?」

ウルフさんが軽く机を叩く。

「桜はともかく・・・天羽といなりは覚えていないのか!?百歩譲って、天羽もいいとしよう。いなり!お前は幽霊だろ!少しぐらい覚えておけ!」

いなりくんはわざとらしく、しゅんとしたそぶりを見せる。

「え〜。なんで俺は許してくんないの?」

「お前は幽霊だろというか、守護霊だろ!覚えておくものは覚えておけ!」

「んなこと言われても・・・ウルフだって忘れるものは忘れてるでしょ?」

「・・・・・・・。」

どうして・・・黙っているんだろう。

そう思ったけど、すぐに理由を思い出した。

うるるさんとお寿司を食べに行った時。

うるるさんは、私に教えてくれた。

ウルフさんと、うるるさんが出会った時のこと。

ウルフさんは・・・『記憶喪失』だったんだ。

『忘れる』だったら、思い出せる。

でも、『記憶喪失』だったら、何かの引き金が引かれないともう思い出せない。

「・・・さあな、忘れるのは人の勝手だろ。」

ウルフさんの声が少し震えた。

いつも強気に振る舞っているのは、弱気な自分を隠すため。

「・・・ずるいね。自分勝手だ。」

いなりくんはいつもの調子で煽っているように見えるけど・・・何かを察したのか、それ以外の言葉は発さなかった。

「で、本題に戻る。」

ウルフさんはこの気まずい雰囲気に耐えられなかったのか、椅子をくるりと回して画面に向き直す。

「純情・・・今、簡単に調べてみる。」

メモ機能のバツマークにカーソルを移動し、バツをそのまま押す。

そして、ウルフさんはどこかの検索サイトを開いて色々なものをうち始める。

「うるる。」

「何、ウルフ。」

ライフルに目を向けていたうるるさんが、ウルフさんの方に顔を上げる。

「隠し事、あるだろ。」

その言葉を言った瞬間、うるるさんの顔が真っ青になる。

「な、なんのこと・・・?」

「隠し事ももう把握してある。」

ウルフさんは簡単にそう言った。

ウルフさんはなんでも特定してしまうから・・・・ちょっと怖いな。

「隠し事に思い当たるものを全て検索したところ・・・オウタカクシ。」

「げげっ!?」

うるるさんの青かった顔は、今度は真っ白になる。

「オアシスのサーバートラップを破壊し、確認したところ・・・ボスが2人、このあたりに紛れ込んでいるようだな。」

「・・・大正解。」

「見つけたら気をつけろ・・・まだ子供だが、戦闘能力は過去一とも称されるからな。」

「うるるさんは・・・過去一ではないんですか?」

冥界あっちの話だからね。あたしの仕事はどっちの世界でも関係ないけど、一応あたしは人間。」

うるるさんはライフルをケースにしまっている。

「ウルフ、どうやって隠し事を特定した?」

「うるる。お前は大体、嘘が『ド』のつくド下手くそだ。」

「ひっど!!」

うるるさんはソファーに腰をかける。

「・・・ウルフ、お前は相変わらず異常な知能だな。」

「どんなもんでも特定できるからな。あ、情報部には言っておいてくれ。サーバーのロックが簡単に解除できてしまった、とな。」

「悪いが・・・断る。俺がお前を見逃している時点で、幽霊警察としては大問題だからな。」

「わかっている。」

ウルフさんは淡々とそう続けた。

「・・・出てこないな、しかし。」

すぐにそう呟いた。

「ウルフでも出てこないの!?」

うるるさんは相当驚いたみたいだ。

「ああ。色々と確認してみたが・・・やはり、出てこない。」

「純情・・・何ものだ?」

そして、ウルフさんは開いていた画面を閉じる。

「じゃあ、もう一つの要件を聞くとする。」

ウルフさんは椅子を半回転。

「お前たちも知っているんだろ?オウタカクシがこの地に降り立っていること。」

「・・・ああ。」

「天羽にしてはおとなしいな。すんなり、知っていることを認めるなんて。」

「ウルフから逃げられるとは思っていないからな。」

「で、オウタカクシはどこにいるんだ?」

「わ、私の家で暮らしてます。」

ど、どうしよう。

まさかうちに入ってきてバトル始めたり・・・なんて、ことはない・・・よね?

「そんな顔しなくていいって〜桜!私も、ウルフも戦う気はそんなにないし。」

・・・前、殺し合い始まるって言っていたよね!?

「電話した時・・・」

「ああ、あれはネット上の『殺し合い』。お互いのサーバーの潰し合い、というところかな?」

・・・びっくりしたあ!

心臓が一度だけ跳ね上がった。

「どうして、ここにいるんだ?」

ウルフさんからの問いに、先輩はアイリちゃんとスイリくんに出会った時の話をした。

「監視部・・・といえば、あの2人と幹部の2人、計4人のみが属する部・・・のはずだ。」

「確か・・・鏡花って言ってた。」

いなりくんがそう言うと、ウルフさんは聞き直した。

「・・・鏡花?」

「すまない、説明し忘れていた。」

怪訝な顔をするウルフさんに、先輩は謝る。

「鏡花、という人に2人は追い出されたみたいです。」

私はウルフさんに向けてそう言った。

「知ってるの?ウルフは、『鏡花』。」

「初耳だ。オウタカクシの人間の名前、一人一人確かめていたらキリがないから、あの2人の名前だけ調べた。」

「オアシス、結構防御硬いからね〜。」

うるるさんはクッションを抱えて返事をする。

そういえば・・・アイリちゃんがお札を展開させて、人形屋敷の時助けてくれたあの状況。

似た状況にいたような気がする・・・。

「・・・なんだっけ。」

考えていると、心の声が表に出てしまった。

「どうしたの?桜!」

いなりくんが私の顔をまじまじと覗き込む。

「アイリちゃんが助けてくれた時あったじゃん。」

「うん。」

「あの状況・・・似たような時、あったなって。それが思い出せなくって・・・。」

「海の世界の末端の時は、聞いた限りそんな状況の時はなかったな・・・。」

「あたしも知らない。」

「・・・あ!思い出したかも!」

真っ黒でぐるぐるしていた頭が、ライトで照らされたかのように閃く。

「心くんって覚えてる?」

「ああ、あの陽太か。心臓のない。」

「覚えてるよ?」

ウルフさんとうるるさんは首を傾げ、いなりくんと先輩は『覚えている』と言った。

「あのとき、シャボン玉のオウタ使っていた子がいて・・・。そして、その子が捨て身で最後の技を出そうとした時。」

そこまで言ったら、いなりくんが大きな声で『あーー!』と言った。

「うるさい、狐。」

先輩がそう言うけど、いなりくんは無視して話し始める。

「オウタを吸い取った・・・人がいた!」

「確か・・・その前に、大きな鏡を展開させていたな。」

「待って待って!あたしとウルフは知らないんだから、一から説明して!」

「・・・またぁ?長くなるよ?」

「別によし!」

ウルフさんはそう返事をして、キーボードに手を置く。

「・・・文句言うなよ!」

いなりくんはそう言い返した。

___________________________________________________

「ってわけで。」

いなりくんは話し疲れたのか、うるるさんのとなり、ソファーに腰を下ろす。

「・・・長くないか?」

「文句言うなって言ったでしょ!」

「・・・言ったっけ?」

ウルフさんは本当に覚えていないのか、首を傾げた。

「もーーーー!せっかくこっちは話してあげたのに!」

「天羽、桜。これで間違いないか?」

「あ!無視すんな!」

いなりくんは人差し指をウルフさんに突きつけ、抗議をする。

しかし、ウルフさんは引き続き無視する。

画面を見る。

・・・確かに、これで間違いない。

「話を聞く限り・・・オウタカクシの一味としか考えられないな。」

「ずっと聴きたかったんですけど・・・オウタカクシって何人ぐらいいるんですか?」

「さあ。全貌が大きすぎてまだ解明できていない。さっきも言っただろ。『一人一人確かめていたらキリがない』、と。」

「幽霊警察の推理上だと・・・オウタを実際に消すのが、数百人。情報部が数十人。証拠消しが300人くらい。大体・・・数百人〜1000人くらいと考えるのが妥当だな。」

「多いですね・・・。どうして、入るんですか?」

その人数の多さに、私は驚きを隠せずにいた。

そんなに多くの人・・・幽霊が、『違法組織』に入っているなんて。

「・・・おおよそが、オウタに恨みを持つものだな。」

「オウタへの恨み・・・?」

いなりくんはそう言いながらウルフさんの背中へ飛びつく。

でも、すぐに手で追い払われてしまう。

「離れろ、いなり。えーと・・・オウタは呪術。それは2人ともわかるな?」

その言葉に、いなりくんと私は首を縦に振る。

「呪術ということは、人でも幽霊でも殺せる、ということだ。」

使いになったばっかりの時、いなりくんにオウタのことを教えてもらったのを覚えている。

「そして、その呪術で人や幽霊の命をあれこれする輩がいる。」

「それで・・・入った・・・ということですか?」

「ああ。」

ウルフさんはそう短く返事をした。

「じゃあアイリちゃんたちは、どうしてオウタカクシに入ったのかな・・・?」

「入った?知らないのか、桜。」

ウルフさんが目を丸くして、モニターそっちのけでこちらを振り返る。

「え!?なんですか?!」

驚いたあまりに、声が大きくなる。

「そういえば・・・ゴタゴタしていて狐にも佐倉さんにも説明をしていなかったな。」

「もー!ちゃんとしてよ、蓮華!」

「・・・イラっとくるな。」

先輩は、いなりくんを睨む。

しかし、効果なしとわかると先輩は口を開いた。

「あの2人は・・・オウタカクシの創設者であり、ボスだ。」

「ぼぼぼぼボス!?」

「その様子だと・・・本当に、知らないみたいだな。」

ウルフさんはまじまじと私の顔を見つめる。

「は、はひい・・・。」

驚きのあまり、情けない声しか出てこない。

隣を見ると、いなりくんも口をポカーンと開けっぱなしにしている。

「創設者って・・・何歳なんですか!?」

「確か・・・9歳だ。」

「9!?」

私よりも年下だ・・・。

「そんな子たちが、殺しているの・・・?」

「・・・それが冥界の現状としか言えない。」

ウルフさんはそう言った。

先輩がバツが悪いのか俯く。

「設立者・・・・あの2人の親がやっていた仕事ってオウタ関連だったのかな?」

いなりくんは言う。

「だろうな。」

先輩は短く言った。

「あと・・・アイリちゃんとスイリくんが、『あの件』について調べなきゃって家で言っていたんですけど・・・。」

「ウルフ、隠れがばれたんじゃない?」

「不吉な。たとえオウタカクシでも、ここのセキュリティは突破されないぞ。」

ウルフさんはいなりくんの頭を軽く叩いた。

いなりくんは大袈裟に痛がる。

「あの件・・・か。この村でしか、できないこと・・・か?」

「わからないです。」

なんにせよ、下手に首を突っ込むのはダメだと思う。

そうわかっていたのに。

不思議なことに、人間という生き物は人の秘密に対する好奇心が抑えられないみたいだ。

「帰ったら聞いてみます!」

そう言って、今日はもう隠れ家から出て行くことにした。

___________________________________________________

「ぜえ、ぜえ・・・この階段ながい〜〜〜!」

いなりくんが階段を登りながら悲鳴を上げる。

「狐、これぐらい耐えろ。」

先輩は涼しい顔で言う。

正直言って、私も限界だ。

足がガクガクしている。

「あと、どれぐらいですかね・・・。」

「さあな。」

先輩はサラッと返事をする。

いなりくんより化け物かも。この人。

「・・・そういえば、聞き忘れてない?」

ふといなりくんが立ち止まった。

そのせいで、私はいなりくんにぶつかってしまう。

「も〜!急に立ち止まらないでよ!」

「ごめん、でも気になって・・・。」

「何が、だ?」

「どうして、幽霊警察は助けなかったんだろう、あの2人のこと。」

「何か、都合が悪かったのかと思っていたのだが・・・。」

先輩は、『確かに。具体的にはわからないな』と言った。

「うーーん。都合じゃないとすると、警察の人たちは2人の親御さんに会いたくなかったのかな・・・?」

「会いたくないって・・・そうだとすると、どうしてだろう。」

いなりくんは首を傾げる。

「たとえば、人がいなかったとか、何か、警察の人と親御さんにやましいことがあったりとか・・・あと、遠かったとかかな?」

「距離の問題はないと思う。霊力で大抵の体力は補えるからな。」

「疲れないっていうこと・・・?」

そして、先輩も少しだけ首を傾けた。

「・・・そういえば。上司が行きたがらなかった地域があったな。」

「どこ!?」

いなりくんは先輩に飛びついた。」

「俺もよくは知らないが・・・『漂流域ひょうりゅういき』。」

「それって、確か何もない場所・・・。」

いなりくんも納得したように、首を縦に振ってそう言う。

「何もないって・・・どゆことだ?」

「簡単に言えば・・・簡単に言えないんだけど。意識されていない場所って言ったら簡単かな?」

「意識の外側・・・何それ!?」

そもそも、世界に意識なんてあるの!?と心の中で悲鳴をあげていた。

「狐の説明の仕方が悪い。」

先輩はため息をついた。

「まず、『冥界』は昔に、超越冥神と呼ばれる、初代冥神が創り上げた世界だ。」

「・・・なんとか納得できます。」

「そして、そこから何兆年も経っていくうちに、整備される場所と整備されない場所が出てきた。」

「整備される場所が、『地界』、『天界』。整備されない場所が・・・『漂流域』。」

「整備されなかったら・・・意識が、無くなるんですか?」

「うん。良いことをしたら天界。悪いことをしたら地界。けど・・・漂流域には、人間の生まれ変わりは現れない。」

「最初に生まれた漂流域人は、自然発生だった。そして、整備されなかったがために、仕組みというものが存在しなかった。だからなのか、治安がいつまで経っても悪い。・・・説明って難しいな。」

先輩はそこまで言って、頭を掻く。

「漂流域を避けるために、幽霊警察はアイリとスイリの叫びを無視した。・・・点と、点が繋がったようだね。」

いなりくんはそう言った。

みりぐらむです!

今回は週一投稿となってしまいました・・・( ; ; )

アイリ、スイリ・・・まだまだ謎の多い人物 (幽霊?)ですね。


ここまで読んでくれてありがとうございます!

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