表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
41/50

吾輩はお前が嫌いだ

新編 『真夜中の人魚たちの唄』開幕。

「お、オウタカクシ・・・?」

戸惑いを隠せない私を、その『アイリ』ちゃんは満足そうに笑う。

「驚きか!人間!その反応、待ってたぞ!」

「姉さん、相変わらず性格の悪い・・・。」

胸を張るアイリちゃんを、スイリくんはジトーっと睨む。

「俺はどこかで聞いたような・・・。」

いなりくんは顎に手を当てて考え込む。

「オウタカクシ・・・政府非公認、オウタを消すためには手段を選ばない・・・極悪組織。」

「!?」

こんなに、小さい子たちが・・・?

2人とも、見る限り8歳くらいにしか見えない。

「言い方の悪い。社会のゴミを掃除したと言ってくれ。」

アイリちゃんは、手と手でゴミをはわくようなジェスチャーをする。

「幽霊警察の中では問題組織とされている。・・・俺の前に出てきていいのか?」

先輩はしゃがんで、目線をアイリちゃんに合わせる。

「大丈夫だ!心配無用。吾輩は絶対に捕まることがない!」

「・・・どうしてそんな自信が?」

いなりくんはそっと言う。

「吾輩は・・・強いからだ!」

「とんでもない、自画自賛。」

いなりくんは呆れたように言った。

「僕も正直イラつくけど・・・事実だからしょうがない。」

「オウタを使っている相手をねじ伏せるくらいの力があるからな。」

「その通り!吾輩はあの憎ましき呪術を恐れない!」

「姉さん、言っておくけど・・・僕もね。」

スイリくんがぼそっと呟く。

「ここで逮捕準備をすると、俺が殺されるだけだからやめておこう。」

「幽霊警察、勘のいいやつだ。」

褒めているのに・・・アイリちゃんの目は全く笑っていなかった。

むしろ、先輩のことを睨んでいるように見える。

「吾輩は少し、お前に言いたいことがある!』

「俺に・・・?」

先輩は不思議そうな顔をする。

「吾輩はお前のことが嫌いだ!」

そのハキハキした物言いに、その場の誰もが言い返せなかった。

スイリくんを見ると、大きく頷いていた。

「なんで?」

いなりくんはギロっとアイリちゃんを睨む。

しかし、その睨みにアイリちゃんは全く動じない。

「吾輩・・・いや、吾輩とスイリは幽霊警察のせいで両親を失った!」

「幽霊警察のせい・・・?どういうことだ。天界、地界および人間界。全ての民間人に対して、幽霊警察は殺生を行わない。」

先輩はゆっくりとそう言った。

わかりやすく言うためにゆっくり言ったとは思うけど・・・先輩の動揺も、何割か理由にあったと思う。

「天界・・・?地界・・・?」

「人間界で死んだら、冥界で生まれる。それは知ってるでしょ?」

「うん。」

「人間界で善人だった場合、天界。悪人だった場合、地界へ送られる。天界と地界の差は、厳しいか自由かだな。地界では、知らないうちに人間界での罪を償わされている。」

「・・・そうなんだ。」

その時、アイリちゃんが急に叫んだ。

「幽霊警察は・・・吾輩たちの両親が苦しめられているのを見て見ぬふりをした!」

気づくと、アイリちゃんの目には涙が浮かんでいた。

地面を小さな足で踏み込む。

セミロングの髪が、ふわりと揺れる。

「吾輩の家は貧乏だった!両親は・・・そのせいで、怪しい仕事に手を染めてしまった。」

アイリちゃんの声からハリがなくなっていく。

「そして、闇にのまれた両親は・・・幽霊警察に助けを求めた!」

アイリちゃんは先輩につかみかかる。

しゃがんでいたせいで、アイリちゃんにも楽々襟元を掴まれてしまった。

先輩はそれに目を丸くするけど、全く逃げようとはせずに、アイリちゃんの話に耳を傾けていた。

「“警察“なら怪しい仕事をしていた幽霊ぐらい、助けてやれよ!悪いのはあっちなんだから!」

「・・・俺は、何も知らない。」

「嘘だ!嘘だ!」

泣きじゃくるアイリちゃんは『嘘』と言い続ける。

けど、先輩は本当に何も知らない顔をしている。

「・・・そして?」

「怪しい仕事の野郎が、警察に助けを求めたことに気づきやがった!そのまま、両親は・・・殺された!吾輩と、スイリの目の前で!」

「・・・幽霊警察は、信じていなかっただけなんじゃないか?」

先輩は、幽霊警察の悪事に驚きを隠せていない。

「いや違う!幽霊警察に吾輩は何度も・・・いや、何十回も助けを求めた!しかし、『イタズラ電話はおやめください』。その台詞セリフを言われて、あとは通話が切れた音が鳴るだけだ!」

「・・・。」

スイリくんはアイリちゃんをじっと見つめている。

スイリくんは平常心を装っているけど、その顔からは隠せようのない悲しさを物語っていた。

「お前らが早く着いていさえすれば!両親は死なずに済んだ!」

ヒックヒックと息をするアイリちゃん。

その目は赤く腫れていた。

しかし、先ほどよりは少し落ち着いたようだ。

「落ち着いたようなので、言うが・・・全ての幽霊警察がそうなわけではない。」

「・・・嘘だ。」

しかし、アイリちゃんの勢いは失せている。

『嘘だと思っていない』のに、『嘘だ』と言っている。

「・・・とりあえず、うるるさんに電話しなきゃ。」

人形屋敷に連れて行かれたあの時から、時間は一切進んでいない。

自分の周りにカバンなどがある。

10円玉を取り出して、稲荷神社の公衆電話へ。

プルルル、と数回なってすぐにガチャリ、と電話にでる音がした。

「うるるさん?」

「・・・急にどうした?」

うるるさんは最初は喋らなかったけど、電話の相手が私だと気づいたみたい。

「オウタカクシ・・・の子が居るんですけど。」

「オウタカクシ!?・・・ごめんけど、それ絶対うちに連れてくるな。」

「ど、どうしてですか?」

「ウルフとオウタカクシのパソコン部・・・通常、『オアシス』はネット上では超有名な、ハッカー同士。ウルフのあれは天性なんだけど・・・大人数の、天才ハッカーに襲われたらね。今はもう、トラップ仕掛けて相手にしていないんらしいんだけど、一回ウルフのサーバー全滅させられたことがあってね。」

「一触即発ってことですか?」

「そりゃもちろん!連れてきたら・・・殺し合い始まっちゃう。」

・・・非公認組織と、殺し屋。

混ぜるな危険、だ!

「とりあえず、切りますから!」

そろそろ切れてしまう。

とにかく、と受話器を受話器置きへ置いた。

「で?姉さん、これからどうすんの?」

「どうするって・・・本部へ戻らないのか?」

「いやその・・・ちょっt・・・。」

アイリちゃんはスイリくんの言葉に、凍りつく。

先輩の襟を離して、固まる。

「早く言え。」

いなりくんがアイリちゃんを覗き込む。

「あの〜、鏡花きょうかにちょっと・・・追い出されちゃって・・・・。」

「追い出された!?」

「本部をか!?」

先輩といなりくんが同時に目を見開く。

「姉さんったら、オウタがないからって監視部の仕事を疎かにしていたんだ。だから、鏡花に追い出されたってわけ。僕は何もしていないのに!」

スイリくんは不満そうだ。

「・・・見逃すつもりではない。さっきの話を聞いて・・・・逮捕はしばらく見ていないことにしてやる。」

「よっしゃ!」

先ほどとは一転、アイリちゃんは飛び跳ねて喜んだ。

「居場所の問題。姉さん、外で暮らすつもり?」

「そうだな・・・。」

アイリちゃんはそう言って、ぐるりと辺りを見まわした。

「お前、家あるよな!」

「私!?」

急に、アイリちゃんが指を私に指した。

「あるかどうかを聞いている!」

「あ、あるけど・・・?」

「なら泊めろ!」

「は・・・?」

「桜、受け入れたら?この子達、幽霊だから誰にも見えないし。」

「・・・確かに。ご飯とかは?いつまでいるの?」

「鏡花に許しを得るまでだ!飯は・・・まあ、どうにかする!」

「なら、いいけど?」

「なら決まりだな!」

アイリちゃんはスイリくんの背中をバンバンと叩く。

「姉さん・・・迷惑かけないでよ?」

スイリくんはそう言って、『しばらくお世話になります』と頭を私に下げた。

・・・めんどくさいことになりそうだ。

少し、そんな予感がした。

___________________________________________________

アイリちゃんとスイリくんが家に来てから一週間。

私はちょっと・・・いや、かなり大変だった。

数学の宿題と睨めっこをしながら、2人が来た初日を思い出す


「あっちょっとその引き出しやめて!」

「なんで?」

「姉さん、ダメなもんはダメ。」

「はあ?吾輩はダメということは知らない!なんで開けてはいけないんだ?」

それは机の中に、ウルフさん作成のドローンが入ってるから!

「うっ・・・・それは・・・。」

「言えないようなものを机に入れるな!」


というような会話を数十回。

台風が家の中に来ているみたい。

そんなことを思い出していると、アイリちゃんがふとこんなことを尋ねてきた。

「むう・・・。そういえば、桜はどうして時々、家を開けているんだ?」

「・・・内緒です。」

なぜか、敬語が口から飛び出た。

「桜は秘密が多くないか?」

アイリちゃんは肘で私をつついてくる。

そんなこと言われても、『ウルフさんとうるるさんのところに行っている』なんて言えないよ!!

「人の秘密をそんなに詮索するな、姉さん。」

スイリくんがそう言ったから、アイリちゃんは黙ったけど・・・かなり不満そうだ。

数学の解答欄に一つ答えを書きながら、考え込む。

2人は、どうして幽霊警察から守られなかったんだろう・・・。

カレンダーを見ると、明日は土曜日だ。

用事はないし・・・うるるさんたちのところに、先輩といなりくんを誘って行ってみるか。

・・・もちろん、この2人には内緒で。

「おい!何考えてんだ!吾輩がうるさいから追い出そうとしているのか?」

そう言いながら、アイリちゃんが背伸びをして私の肩をゆさぶってくる。

視界がぐわんぐわんと揺れる。

「姉さん・・・シンプルに桜さんに迷惑。」

スイリくんはそう言って、ため息をつく。

「だいたい、桜さんの私情がどうであれいいじゃないか。僕たちは“あの件“について調べなきゃいけないわけだし。」

「・・・そう、だな。」

アイリちゃんは肩を揺らす手を止めた。

・・・『あの件』ってなんだろ。

その後、しばらく2人は静かだったけど・・・『あの件』というひと言を考えすぎて、数学の宿題は全く進まなかった。



一日遅れてしまった・・・・。


アイリ、スイリ・・・そしてオウタを消す組織『オウタカクシ』。

今後、どんな展開を見せていくのか楽しみですね✨


次話も読んでいただけたら嬉しいです♪

ブクマ・評価・感想・レビュー迷わずお届けください!

もう踊ります。嬉しすぎて。


お知らせ

小説をより多くの方へ届けて行きたく、投稿する時間帯を安定させるために基本午後6時投稿にしていきたいと思います。

土曜日投稿も、早めに投稿するときもです!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ