夜が明けたあとに(前編)
あまりにも長かったので、前後編にしました・・・。
「嘘・・・!」
起きたのは、私が一番最後だったみたい。
いや・・・起こされたのが、一番最後だったの方が正しい、かな?
大広間のテーブルには、全員が集まっていた。
そこで聞いたのは、Fさんの目覚め。
「昨日話した、ばっかりだったのに!」
「・・・。」
いなりくんは何も言わずに、私の肩に手を置いてくれる。
昨日話した、ばっかりなのに。
井戸のところで。
隠し通路のことも、詳しく聞いたのに・・・!
「確認した結果、刺殺。台所の刃物で刺されたみたいです。」
冷静に、何もショックを受けていない声でCさんは言った。
「そんな言い方っ・・・!」
「佐倉さん。」
思わず、Cさんに掴みかかるところだった。
先輩に声をかけられ、ハッとして止まる。
・・・影に取り憑かれた後は、精神が不安定になりやすいんだ。
先輩が昨日言っていたのを思い出す。
「何か、知っていることは?」
Hさんはこちらに顔を向けたまま、言った。
けれど、全員口を揃えて行ったのは、『寝ていたから知らない。』だった。
「・・・・もう。」
それしか言いようがなかった。
握り拳を、机に打ち付ける。
ゴン
じんわりと手に痛みが広がっていく。
・・・痛い、な。
目覚めた三人は、痛かったのかな・・・?
刺殺、撲殺、Gさんは確か・・・刺殺だ。
Gさんが目覚めた時、Cさんが言っていたのを思い出した。
「・・・大丈夫、。」
そっと気遣ってくれるEさん
けど、Eさんもショックだったのかな。
声が重くて暗い。
「A、G、F・・・何か、三人は共通点があるのか?」
蓮華先輩は、空席となった三つの椅子に順番に目を向ける。
「わからない。無差別かもしれない。」
その言葉に、みんなの動きが止まる。
私たち三人は、『永遠の眠り』への恐怖。
マネキンたちは、『次自分が殺されるかも』という恐怖。
それぞれに違う恐怖を感じさせている犯人・・・なおさら、許せない!
「・・・早く、終わらせないと。このゲームを。」
そう、静かな空気の中、いなりくんはそう言った。
「戻ろう。絶対に。」
「ああ。真面目に考えれば・・・わかる話だ。」
先輩の目は、恐怖ではなく自身を映し出していた。
・・・わかったのかな、犯人。
そう思ったら少し、心が軽くなった気がした。
「じゃあ、解散。」
いつも以上に静かな解散となった。
それにしても、犯人は誰なんだろう・・・。
部屋日戻って一旦、今の状況を整理することにした。
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Aさんは・・・3日目に部屋で倒れているのが見つかった。
確か、本が散らばっていて・・・頭が凹んでいた。
本の一つの題名が、『悔いだ。人生の全てが。』という、英語の本。
Fさんは・・・四日目に発見された。
って、どこで発見されたのがわかんない。
死因は、刺殺。
(情報が少ないな・・・大丈夫なのか?あ、そういえば・・・。)
部屋に隠し通路有り。
Gさんは・・・2日目に部屋で発見された。
死因は刺殺。
確か、部屋は荒れていたんだよね。先輩は抵抗したあとだって言ってた。
(これまた、情報の少ない・・・。)
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そうまとめたあとで、絶望した。
情報が少なすぎ、ということだ。
それに頭を抱える。
うーーーーん。
そこで、思い出した。
確かDさんはAさんが死んだ夜に会っていたはず・・・・。
確か、職業について話していた、とかで・・・。
・・・けど、犯人なら自分から言うかなぁ。
『会っていた』
なんて。
「あーーーーー!わっかんないよーーーー!」
考えれば考えるほど、頭がぐるぐると混乱していく。
マネキンたちの性格と、アルファベットが頭の中でワルツをしている。
シャルウィダンス?
・・・じゃなくって!
頭の中で開催されているダンスパーティを無理矢理終わらせる。
けど・・・少しでも考えたら、再開だ!
「あ、そういえば・・・。」
隠し通路のことを知っているのは、私だけだ。
Eさんにこっそり教えられたからで・・・。
あの時、先輩は『いざとなったら』と言っていた。
その『いざとなったら』は、今じゃないのか。
一筋、光が見えた気がした。
「・・・先輩を探さなきゃ。」
解決へ向けての、やることが決まった。
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「桜!桜ってば!ねえ!起きてよ!あーもう!蓮華全然起きない!ドア蹴破って!」
「うるさい。」
「なんで!Bの時はよかったのに?」
「あれは不可抗力だ。お前からの。」
「ちぇ。」
なんだあ・・・?朝から騒がしいなあああ・・・。
眠い目を擦り、起き上がる。
バリバリバリっ!
ドアを開けようとすると、ドアが破られた。
「!?」
「おいいなりやめろ。」
飛んできた木屑からよけ、ベッドにリターンする。
「にゃに!?」
「すまない、佐倉さん・・・。」
ドアの先には、剣を構えたいなりくん。
・・・って剣!?
「先輩、いなりくん剣・・・。」
「ないと落ち着かないそうだ。」
「俺の愛刀だもんね!」
いなりくんはもう一度構えると、軽く振ってみせる。
「おはようございます!・・・わああ!」
ゆらゆらふらふらとあるきながら、部屋を出てしまった。
そのおかげで、無事につまずいてこける。
バッターン!
「いだい・・・。」
眠いせいか、滑舌が死ぬ程悪い。
頭が回らない・・・言葉が出てこない。
どうにかこうにか、立ち上がる。
体がふわふわ浮いているような感覚がする。
「はい。起きて。」
けど・・・ドアを破られたり、コケたりしたからかかなり目が覚めた気がする。
少し、荒めの目覚まし時計だな・・・。
「昨日、佐倉さん大丈夫だった?」
「大丈夫だったって・・・あ!」
思い出した。こんなに眠い理由。
隠し通路のことを先輩に言おうとしたんだけど・・・めんどくさくて、夜に探し回っていたらなかなか見つからなかったんだった。
「大丈夫です!」
「本当か?その割には眠そうだが・・・。」
「はい眠いです!」
「返事はや!」
いなりくんがそう言った。
だって・・・眠いんだもん!
「今日も私が一番最後ですか?」
「いや、今日は一番最初だ。」
「どうしたの?桜。」
何も言わない私を心配したのか、いなりくんが顔を覗き込んでくる。
いや、そうじゃなくて・・・嬉しすぎる。なんだか、すごく嬉しい。
「いや、なんでもない!」
「眠くてコケたかと思ったら、今度は満面の笑み。桜、頭がおかしくなったんじゃ・・・。」
「誰が頭おかしいだよ!」
私はいなりくんに言った。
えへへ、と笑うから、『えへへじゃない!』と言い返す。
「もう・・・このドア、どうするの?」
「・・・今日で、終わりだ。」
「この、人形屋敷ゲームが、やっとね!」
「それって・・・もしかして!」
「そのもしかすると、だよ!」
いなりくんはニヤッと笑う。
先輩も、珍しく今日は口角が上がっている。
「私にも犯人教えてください!」
「「無理。」」
「ええ・・・。」
即拒否られた。
うう・・・何も、口を揃えて言わなくってもいいじゃん!
「な、なんでよ!」
「だって、桜なんか他の人に言っちゃいそうだから。」
「言わない!言わないから!あっちょ、先輩まで縦に顔振らないで!」
いなりくんの言葉に、先輩は小さく顔を振った。
・・・教えてよ〜!
まあ、確かに・・・。
言い分もわからなくはないので、何も言い返せない。
「わかったから!」
「すまない、佐倉さん・・・。」
「大丈夫です!」
全然大丈夫じゃないけどね⭐︎
「じゃあ、いつも通り全員起こしますか?」
「ああ。いなりはB、Cを頼む。佐倉さんはDを。俺はHさん、Eを起こしてくる。」
「おかしいって!」
その言葉に、急にいなりくんの頬が膨らんだ。
「ど、どうしたのいなりくん?」
「なーんで俺が嫌なやつTOP2を起こさなきゃいけないの??というか、俺だけ2人じゃん!」
「しょうがないだろ!」
「じゃあ俺がHを起こすから蓮華が2人を・・・」
「無理。」
いなりくんの言葉を途中で遮る先輩。
「俺はHさんに用がある。警察同士の。」
「俺だって警察みたいなもんだし!」
「どこがだ。お前は守護霊だろ狐。」
いなりくんのほっぺがますます膨らみ、はち切れそうになっている。
あれ。この光景、どこかで・・・。
少し考えたところで、思い出した。
あれは1日目。きたばっかりの頃。
いなりくんが、みかんを口に一杯一杯に入れてハムスターになっていた時だ。
そして、その様子を思い浮かべながら、今の稲荷くんに目を向ける。
・・・うん、瓜二つだ。
「ふっ・・・。」
「あ!桜まで笑ってる!怒るよ?」
「さっさといけ。あの2人は確かに面倒だが、Bに関してはドアがないからな。」
先輩はいなりくんの背中をそっと押す。
いなりくんは、ハムスター顔のままBさん、Cさんの部屋へ走って行った。
「・・・佐倉さん。」
いなりくんの姿がちょうど見えなくなったあたりで、先輩が声をかけてきた。
「隠し通路・・・行ったか?」
一瞬、なんのことかがわからなかった。
けど、すぐにFさんの通路だ、と理解した。
ふるふると首を振る。
「そうか。」
「どうして、ですか・・・?」
「昨日、行ってみようとしたんだが・・・なんだか、足がすくんでな。」
先輩の声が後半に行くにつれて小さくなっていく。
「珍しい、ですね・・・。」
「こんなこと初めてだ。いなりの件から、俺まで揺れ始めている気がする・・・。」
「大丈夫ですよ!いざとなったら私が止めます!」
「・・・そうか。」
先輩は、それだけ言って階段を降り始める。
そして、私は少しぼーっとした後、思い出した。
Dさん起こさなきゃ!!!
「Dさん!起きてください!おはようございますっ!」
「・・・ん?」
部屋の中から、声が聞こえてくる。
「ちょっと、今日も集まってもらいます!」
「またか!?誰が死んだんだ!?」
Dさんの怯えた声が聞こえてくる。
「いや、死んではいません・・・。」
まあ、そうなるのも無理はない。
1日目にGさん。二日目にAさん。三日目にFさん。
こうも毎日、殺人鬼の餌食になる人がいたら、そりゃ不安になるよね・・・。
「そうか・・・。」
Dさんの部屋から、安堵したような声が聞こえる。
「一緒に行きましょう!」
「・・・わかった。」
しばらくすると、Dさんが出てくる。
「すまないな、こんな遠くまで。」
「いえいえ、大丈夫です!」
Aさん、Eさん、Fさん、Gさん、Hさんの部屋は、私たちの部屋のちょうど真下にある。
けど・・・Bさん、Cさん、Dさんの部屋は少し離れた場所にある。
・・・そう考えると、いなりくん災難だな。
そして、Dさんをつれて大広間へ向かう。
「そういえば、Dさん娘さんがいらっしゃるんでしたっけ?」
昨日まとめた時思い出した、Dさんの娘。
あとで何か役に立つかもしれない。
そう考えて、聞いてみた。
「・・・。」
あれ、何かまずいこと言ったかな?
しかし、すぐにDさんは話し始めた。
「うん。アイドルをしていた、と言ったけ?」
「はい。聞きました。」
「・・・そうか。」
それだけ言って、Dさんは何も話さなくなる。
・・・なんか、ごめんなさい・・・。
ドテン!
「Dさん!?」
急に、Dさんがこけてしまった。
「ああ、大丈夫だ・・・。」
「何か、躓いたんですか?」
「いや、そんな感じはしなかった・・・。」
私は、確認のために廊下を確認する。
「ん・・・?」
Dさんが転んだあたりだけ、なんだかテカっているぞ・・・。
そして、いい匂いがする。
なんだ・・・?
甘酸っぱい、“アーモンドの匂い“・・?
「そういえば、昨日の夜ご飯は、アーモンドのスープでしたね。」
「ああ・・・こぼしちまったのか?」
あぶねえな、とDさんは口にする。
それにしても・・・。
「めちゃくちゃこけませんでした!?」
「ああ・・・すっごく痛い。マネキンだったから助かったのか?」
Dさんは、安堵の息を漏らす。
「気をつけてくださいね・・・。」
そして、特に地面に注意しながら大広間に着く。
そこには、すでにBさん・Cさん・Eさんが席に着いていた。
Bさん、Cさんはいつも通り不機嫌なようだ。
「部屋のドアを破るなんて神経どうかしていますよ・・・。」
と、ふとボソリCさんが呟く。
「・・・いなりくん、もしかして。」
そう言うと、いなりくんはそっぽを向いて、ならない口笛を吹き始める。
ピューピューと、普通は口笛はなる。
しかし、いなりくんの口からはシューシューと息が漏れる音だけがする。
その様子に、思わずため息をつく。
「あれ、Hさんは?」
「そういば、蓮華・・・?」
いなりくんと私は、別の方向を向き合っていた顔を合わせる。
「大変だ・・・!」
珍しく取り乱した先輩が廊下から顔を覗かせる。
「Hさんが、死んでいる・・・!」
「「!?」」
やっぱり・・・いない人は、殺されたと考えていいみたいだ。
「どこででですか!?」
「風呂場だ。」
「早く行かなきゃ・・・!」
慌てて、先輩がいる廊下へ駆け出そうとした。
けど、何かが引っかかっている。
「!?」
私が振り返ると、いなりくんがワンピースの裾を掴んでいた。
そしてそのいなりくんは、マネキン達の方を向いていた。
「4人死んでいる。そこで、マネキン達を放置したら?もう1人殺されて、終わり。」
「・・・・!」
「というわけで、全員おいで?」
いなりくんは、『殺人鬼さん、どんまい!』と言いたげな笑みを浮かべた。
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「これだ。」
浴槽内に、Hさんが横たわっている。
外傷はない。
ただ、首の部分が凹んでいる。
「見てわかる通り、絞殺ですかね?」
冷静な声。見なくてもわかる。Cさんだ。
「・・・で?あんたら三人はどうするのよ。」
Bさんがそう言った。
「どうするとはなんだ?」
先輩が眉をひそめる。
「さっきも言ってたけど・・・後1人でおしまいじゃん。」
「大丈夫、『終わり』にはさせない。『終わらせる』から。」
意味深なことを、いなりくんが言った。
「おかしいな。吉川線がない。」
「よし、かわせん・・・?」
聞き慣れない単語に、いなりくんの目が点になる。
・・・無論、私もだ。
「首を絞めて殺される際、首元を引っ掻いてできる線ですか。」
「ああ・・・。」
先輩は、不思議そうにその凹んだ首をまじまじと観察する。
「・・・残らなかっただけじゃないんですか?」
そう言ったのはCさん。
「それもあり得るが・・・犯人が掴んだ跡が残っているくらいだ。残るんじゃないか?」
「・・・あ!Dさん、頭見せてください!」
さっきだいぶ転んだ。
多分、憶測だけど・・・首を絞めた力よりも、頭をぶつけた衝撃の方が強い!
確認する。
「どうだ?」
「・・・跡は残っていないですね。」
「おかしいな・・・だったら、絞殺ではないということか?」
「そうなりますね。」
Cさんがそう言った。
だったら・・・何で、殺されたんだ?
「ところで、どうしてDは転んだの?」
ふといなりくんがDさんに問いかけた。
「昨日のスープがこぼれていたんだよ・・・。」
やれやれ、とDさんは肩をすくめる。
「そうなんですよ!Dさんの部屋の近くから歩いたところにアーモンドのスープがこぼれていて・・・。」
「ちょっと待て。どうしてわかったんだ?」
「え?それは甘酸っぱい感じのアーモンドの匂いがしたからで・・・。」
そこで、先輩の体が震えた。
「・・・ビンゴ。」
小さく、そう呟いた。
「全員、大広間へ戻れ。」
「はい!」
その威厳のある声に、反射的に返事をした。
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どうして、先輩は犯人がわかったんだろう・・・?
床にこぼれたスープ。
刺殺されたFさん、Gさん。
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「犯人が、わかりました。」
次回、『夜が明けたあとに(後編)』夜8時投稿予定。




