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陶器と海とマリオネット

「先輩、もう寝ちゃいますか?」

「・・・そうだな。夕食も食べれそうにはないな。」

先輩はひどいいなりくんの部屋を見る。

先輩の部屋にあった箒でなんとか大まかな破片は集めたけど・・・。

現状はほとんど変わっていない。

「そういえば先輩、なんでいなりくんと争っているのがわかったんですか?」

「霊力の暴走具合だ。なんとなく、感じとれた。」

さすが幽霊警察。

「そういえば、お風呂まだだった・・・。」

「先入るか?」

「先輩、入ったんですか?」

「ああ。だが、これだったらな・・・。」

血まみれな服の裾を摘む先輩。

確かに、これでベッドには寝てくないな。

「ですよね・・・。」

うんうん、と頷く。

「じゃあ、先どうぞ。」

「いいのか?」

先輩は部屋の外へ出る。

「はい。あ、私って寝る時どうしますか・・・?いなりくん、いるんですけど。」

「どかせばいいだろ。」

すごいスピードで返事が来た。

質問との間がない。

「いなりくんは、どうすれば・・・。」

「意識が戻っていたら廊下で雑魚寝でもさせとけ。」

「でも・・・。」

「幽霊だ。回復は早い。影が取れたから、なおさらだがな。」

先輩の言うこともごもっともだ。

でも、雑魚寝って・・・。

自然と顔に苦笑いが浮かんでくる。

それに、先輩が『なんだ』と怪しい目で見てくる。

「じゃっじゃあ、お風呂、いってらっしゃい!」

そそくさっと先輩の背後へ回ると、背中を押す。

「・・・大丈夫か?」

「なんでもないですっ⭐︎」

先輩は首を傾げながらも、本日二度目の風呂へ向かった。

いなりくん、暴れたけど記憶はあるのかな・・・?

そこで私は問題に直面した。

蝕まれた記憶があってもなくても大変だ!!

記憶がなかったら、部屋が荒れていることに気づいてから質問攻めに遭う!

本当のことを言うまで離してくれなさそう・・・。

本当のことを言ったらきっと、気まずい雰囲気がしばらく続きそうな気がする。

もしもあったら・・・。

とにかく、気まずい。

地獄の雰囲気だ。

「どうすりゃいいんだっ!」

頭を抱える。

とりあえず、意識が戻っていたら・・・。

聞いてみよう、怪しまれない程度に!!

と、誓った。

小さく、胸元でガッツポーズをする。


ガチャリ


戦っている時とは違う、手の震えと恐怖感がある。

「いなりくん・・・?」

その声に、反応はない。

顔を覗き込むと、すやすやと寝息を立てて眠っている。

まだ寝ちゃっているのか・・・。

その時。

ぴくり、と瞼が動いたのだ。

「いなりくん!?」

我を忘れ、大声を出してしまう。

ゆっくりと、その瞳が開いていく。

「さ、桜・・・・?」

「せ、先輩!あ、お風呂か。」

さっき、『怪しまれない程度』を誓ったはずなのにあたふたとしてしまう。

「いなりくん、私は誰だと思う?」

「佐倉、桜じゃないの・・・?なんでそんなに俺に最近質問してくるんだよ・・・。蓮華も桜も。」

ジトっとした目で見られて、一瞬ドキッとした。

けど、それと同時に安心感もある。

ちゃんと、元に戻ってくれた。“元の“いなりくんだ!

「よかったぁ・・・。」

「・・・?」

くるりと回って、机に突っ伏する。

「そういえば・・・。」

その声に私は突っ伏していた顔をあげる。

「俺の部屋じゃないのか・・・?」

不思議そうな顔であちらこちらを見渡すいなりくん。

「あ、そうなの。私の部屋。」

「なっなんで!?」

ガバッと飛び起きるいなりくん。

「戻らなきゃじゃん!事情は後で聞くから!」

その言葉に脳より体の方が早く反応した。

ドアノブを掴もうとしていた手を軽く払いのけて、腕を掴む。

その腰に手を回して、ドアから離れさせる。

「うぐっ・・・!」

腰に手を回した時、つい強く回し過ぎてしまった。

「あ、ごめん・・・。」

腕を掴むては緩めずに、腰に回す手だけ少し軽くする。

軽くした・・・というか、まだ力は強いままだ。

けど、苦しくはなくなったはず!

「な、なんでよ・・・桜!」

「ごめんっ!今は理由はいえないっ!」

ぷくーっと頬を膨らませるいなりくん。

ジタバタっと足を動かす。

けど、その足を軽く私の足で踏む。

「ねえ!なんで部屋に戻っちゃいけないの!?」

「それは・・・。」

もうすでに怪しまれているけど!

口ごもってはいけないぞ!自分!

「お化けが出るの!」

「お・・・ばけ!?」

いなりくんが、目を丸くする。

「お化けって俺のこと!?」

「いや、よくない幽霊が・・・。」

「蓮華に払ってもらわなきゃ!」

「いや、そういう霊じゃなくって・・・御伽話の幽霊っていうか・・・。」

結局、ゴニョゴニョと口篭ってしまった。

その悔しさから、ついつい手の力が強くなってしまう。

それに気づいたいなりくんが、一生懸命抜け出そうとジタバタする。

「本当に!離してよ!」

「やーだ!」

「こっちがやーだだよ!」

「いやこっちが!」

と、いい争いをする。

脇に通した尻尾がぶるんぶるんと振られて、その尻尾の先が微かに首元に当たる。

これがすっごくくすぐったい!

ちょっ・・・。

いなりくんのジタバタよりも・・・こっちの方が強力だ!

「くすぐったい・・・!」

しまった。

つい、本音が漏れてしまった。

もしかしたら、聞こえていなかったり・・・。

と、微かな希望を抱く。

けど、そんな希望もものの秒で打ち砕かれてしまった。

「ほっほーう?俺のしっぽがくすぐったいんだねー?」

ぴたり、と尻尾の動きが止まる。

しかし、すぐに先ほどの倍、私の首にしっぽが触れる。

「あひゃひゃ、くすぐったいって!やめて・・・ひゃひゃっひゃひゃひゃ!!」

幽霊の声みたいな笑い声が喉の奥底から出てきた。


ガチャリ


その音に、いなりくんのしっぽも私の笑いも止まった。

ドアノブが捻られていく・・・。

何か、恐ろしいものでもいたら!?

いなりくんをまた蝕まれたら冗談じゃない!

腰に回した手の力を強めて、ベッドの方へ下がっていく。

いざとなったら・・・この、窓からいなりくんを突き飛ばす!

ちらり、と横目で窓の位置を確認する。

影は憎しみから生まれてくるものだから、精神的に弱っていなかったら蝕んでこない!

と、確定論のない論でチャレンジする自分。

肉体的に弱っても・・・霊力でどうにかなる!

無駄に覚悟を決める。


キイイィーィ


古びたドアが悲鳴を上げながらゆっくりと開く。

ドアの先の姿は・・・まだ見えない!

「悪霊退散!去れ去れ!」

たった今思いついた適当な言葉を放つ。

その言葉に、ドアを開ける動きが止まった。

・・・よっしゃ!効果あり!?

すると、いなりくんの申し訳なさそうな声が聞こえてきた。

「あの・・・桜?わかっていないみたいだからいうけど・・・蓮華。」

「へ?」

間抜けな声が出た。

「お前ら、何をいちゃいちゃしている?」

腰に回した私の手をじろっと見る先輩。

その言葉にハッとした。

「あ、ごめんなさいっ!」

そして、突き飛ばしてしまう。

いなりくん、今度は先輩の体にぶつかる。

「いだっ!」

先輩が思いっきりぶつかられた体を丸める。

いなりくんも、おでこを打ってしまったみたいだ。

「あっ・・・ごめん!って、いなりくん頭!」

「大丈夫だ。」

「か・・・」

『影は取り除けたんですよね!』

と言おうとしたところで気づいた。

これは質問攻めへの最短コースの発言だ!!

「ぶつかるのは正直どうでもいい。さっきは何をしていた?」

その言葉に、再びハッとする。

っ・・・!

忘れようとしたけど、腕に伝わるジンジンとした痺れが細かいことも忘れさせてくれない。

「いやっそのっいやっ。」

ゴニョゴニョといいごもる。

これはこれで恐怖!

今日は、三回も別の恐怖を感じてしまった。

「言い訳は後で聞く。狐、記憶は?」

「だから、覚えているって!」

と言った後に、『ほんのちょっとさっきの記憶はないけど⭐︎』と小声で付け加えた。

「たくっ・・・。」

先輩は、ちらりと横目でアイコンタクトを送ってくれる。

『記憶がない、ということは下手なことしていないだろうな?』

という圧を感じた。

うう、目は口ほどにものを言うって・・・こう言うことだったのか!?

先輩は、ベッドに腰掛けたいなりくんの方へ歩いていく。

「ねえ、蓮華。桜も頭ぶつけたんじゃない?」

「どうしてだ?」

「さっきから俺の部屋に戻らせてくれないんだもん。」

いなりくんは先輩の後ろにいる私を指差す。

ひっ・・・。

ギロり、と睨まれてしまう。

「ねえ、なんで俺行っちゃいけないの?俺なんかした?」

不思議そうに首を傾げるいなりくん。

やめてええっ!そんなこと言われたら、お説教(先輩からの)が長くなる!

すううっと、息を必要以上に吸う。

「ゴホゴホっ!」

吸い過ぎて、むせてしまった。

「ほら、咳もしてるし・・・俺、戻るね?」

待て待て待てえい!

そう言う意味じゃないんだってば!

「狐はいかない方がいい。」

「どうして?蓮華まで、頭打っちゃった〜?」

「たったついさっきまで俺たちは影と争っていた。」

「あっちょ・・・先輩?」

その言葉に、先輩が振り返る。

再び、目が言葉を放っている。

『大丈夫だ、任せろ』かな?

「影・・・?どう言うこと?」

一気にいなりくんの顔が変わった。

いなりくんの本来の敵、『影』。

裏世界のないこの世界の末端では、現れるはずがない。

「ああ。詳しい調査は後でするが・・・おおよそ、この屋敷の主が生み出したんだろうな。」

先輩は、ぐるっと部屋を見渡す。

「まあ、そういう感じだろうね。予想はついていたよ。」

「予想って!?ど、どういうこと!?」

何も知らされていないよ〜!

「桜はなーんにも知らないのぉ〜?」

煽り口調で言ういなりくん。

いつもだったらイラッとくるけど・・・なんだか、『元に戻った』と言う証みたいでイラつかない。

「う、うん・・・。」

「部屋、佐倉さんと狐も見たんだろ?いろんな部屋。」

「み、見ました。でも、大したものはなかったような・・・。」

そこで、思い出した。

やけに人形の部屋が多いこの屋敷。

その中には、“陶器“の人形もあった。

「世界の末端の陶器の魚!」

「やあっとわかったかあ・・・。」

はあ、とため息をつくいなりくん。

なんだか今度はイラッとした。

「じゃあ、あの魚は純情が送ってきたということですか!?」

「確証は持てないが・・・そうだろうな。」

「俺も蓮華と同じ。世界の末端にマリオ人形ネットを送り出すことができるなら、影をここに連れ出すことも可能になるんんじゃないか。」

いなりくんは顎に手を当てる。

「純情が、犯人探しをさせて何がしたいのかはまだわからないが・・・今は、この屋敷から脱出することが最優先だな。」

「はい。」

「うん。・・・ねえ、俺が自分の部屋を身ちゃいけないのは、影との争いで荒れているから?」

「「あ。」」

先輩と私の声が重なった。

そういえば、『影と戦った』みたいなことを先輩が言ってから、話がそれて・・・。

「じゃあ、俺見るだけ見ていい?」

「だめ!」

「だめだ。」

「なんでよおお・・・!」

いなりくんの悲痛な声。

「じゃあ、俺はどこで寝れば・・・。」

「俺の部屋の床にでも寝とけ。」

「寒い!」

「毛布貸す!」

「おっしゃ!」

どうにかこうにか、先輩がいなしてくれた!

ありがたい!

「あ・・・私は、お風呂に・・・。」

と、小さな声で言ってその場を立ち去った。

そして、お風呂に入ってからそのまま寝る・・・訳にはいけなかった。

純情が影を生み出したというのは・・・多分、先輩の嘘だ。

本当のことを話し合わないと・・・!

そう思いながら、タオルを抱えて浴室へと向かった。

こんにちは!みりぐらむです(╹◡╹)

ここまで続けられて感謝!

読んでくれている人にとにかく感謝!


今回、どうでしたか?

いなりが元に戻ってくれましたね・・・!

果たして、影の理由とはなんなんでしょう?


面白い、と思っていただけたらブクマ・評価・感想ぜひお願いします!

次話も読んでくださったり・・・(願)

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