第二の犠牲者。第三の犠牲者。
やはり、様子のおかしい蓮華。
いなりは完全復帰し、完全にいつも通り(?)で周りの雰囲気を盛り上げている。
そんな中、第二の犠牲者が・・・!?
果たして、いなりの症状は完治するのか!?
「・・・ああ。」
いなりくんに急かされて、先輩は階段を一歩降りた。
それを見ると、いなりくんは全力で一番下へ。
しかし、なぜか先輩の足が一歩だけで止まってしまった。
「先輩?」
声をかけるけど、返事が返ってきそうな気配はない。
「・・・まだ、いなりくんが心配なんですか?」
続けるけど、先輩の様子は一切変わらない。
声に出さなくてもわかる。
先輩の頭の中は、きっと『責任』でいっぱいなんだと思う。
「頭をぶつけてから1週間は油断ができない。」
ぼそっとそう言う先輩。
絞り出したかのような声だ。
「もしかしたら・・・と思ってしまう。」
「大丈夫です!いなりくんは幽霊ですし!」
どうにか元気を出させよう!と張り切るけど・・・。
先輩の暗い雰囲気に呑まれて、私の声が震えてしまう。
「2人〜?早くきて〜?」
下を見ると、心配そうな目をしたいなりくんが私たちをよんでいた。
「今行く!」
先輩の横を通り過ぎて、一番下へ降りて行った。
後ろからとん、とんとゆっくりと階段を下る足音。
どうにか、下にはきてくれそうだ。
「ご飯は?」
「Fさんが持ってきてくれるって言ってたと思うけど。」
いなりくんの秘密を秘めたかのような目で見つめられる。
「・・・。」
その目に見つめられると、なぜか胸が詰まるような苦しい感覚になる。
・・・どうしてだろう。
ウルフさんに見られても、そんな感覚はしない。
まあ、ウルフさんがこっちを見ることすら少ないからね!
すると、ドアが開く音と共に美味しそうな匂いが流れ出てきた。
「この匂いは!」
いなりくんは尻尾をフリフリ、匂いの方へ飛びついていった。
微笑ましいと共に、不思議さが訪れてきた。
幸、とは誰か。いなりくんは何をしていたのか。
傷は治癒するはずの幽霊にどうしてそこまで執着・・というか、心配をするのか。
心配をすることを『ダメだ』って思っているわけじゃないんだけど・・・。
ちらり、と横目で先輩を見る。
普通な様子に見える先輩。だけど、その顔色は悪いし、明らかに様子が悪い。
こんな先輩・・・見たことない。
すると、次々とドアが開く音があちらこちらから聞こえてきた。
・・・いい匂いに釣られてきたのかな?
それぞれが席につき、Fさんといなりくんが持ってきてくれた野菜炒めを食べた。
美味しそう・・・・。
いつの間にか、お腹が減っていた。
しかし、食べたいはずなのに手と口が動いてくれない。
噛んで、食べて、口に入れて、また噛んで。
その簡単なサイクルを、なんだか今日はできなかった。
横の先輩を見ると、苦手なニンジンを避けずに掃除機のように食べていた。
味も何もわからない。
そんな顔だった。
それに影響したのか、鼻が詰まったかのように美味しそうな野菜炒めは味がしなかった。
そしてもっと食欲がなくなった。
いつの間にか、『美味しそう』と言う感情は、幸福感と一緒になくなっていたのだ。
それからはもうあっという間だった。
自分が何をしたかなんて、細かいことは覚えていない。
お風呂場で転びかけたのは覚えている。
よくわからない、歯痒い気持ち。
自分がどうすればいいのか、がわからない。
あの2人のために、何をすれば・・・。
それをずっと考えていた。
そして、ベッドに入った。
寝られそうになかったのに、気づくといつの間にか深い眠りに落ちていた・・・。
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「し、死んでるっ!!」
そんな叫び声が廊下から聞こえてきた。
・・・まだ寝たい・・・。
と、目を擦っていると、さっきの叫び声のヤバさに気がついた。
・・・悲鳴!?
ベッドから跳ね起きる。
慌てて着替え、寝癖は手で押さえつけてどうにかすると、悲鳴の方向へ向かった。
その悲鳴は、Dさんのものだった。
私が行った時にはすでに、全員集まっていた。
マネキンの陶器の白い肌が廊下に集まっている。
そして、その部屋は・・・。
札を見ると、Aと書いていた。
「桜、寝癖どうしたの?」
振り返ると、そこにはいなりくん。
「今、それ聞く時じゃないだろ。」
今度は左から声。
見ると、そこには先輩。
「先輩、顔色良くなっていますね!」
血色がかなり良くなっている気がする。
「・・・まぁ、な。」
先輩はそういうと、部屋の中に一歩足を踏み入れた。
続けて、いなりくんも。
『死んでいる』という、Dさんの悲鳴からすると・・・。
Aさん、死んじゃっているのかな・・・。
すると、前にいたBさんが道を開けてくれた。
「ほら、前行け。」
ぶっきらぼうに背中を押されて、部屋の中に入れられる。
「うわっとっとっとっと・・・・。」
急に押されたのでつまずいて、転びそうになる。
止まって振り返ると、Bさんはこう言った。
「さっさと解決してくんね?こっちまで怖いんだけど。ま、頑張れば?」
「・・・応援、ってことですか?」
「いやっそんなわけじゃっ!」
今までの恨みを込めて。
皮肉を言ってみた。
「冗談ですよ!」
にっと笑って見せる。
Bさんは私の顔を見ると、背中を向けて去っていった。
そして、私はBさんの背中が見えなくなると、いなりくんたちの視線の先に目をやった。
「・・・桜もきたんだね。」
「うん。」
そこには、倒れたマネキンの姿が。
そう、この部屋の主Aさんだ。
「目覚めちゃって・・いるんですか?」
「間違いなく、やられている。」
先輩はしゃがんで、あたりに散らばった本に目をやる。
「抵抗した形跡ありか・・・。」
「動き出したんだね、犯人。」
後・・・3人。
のんびりしてなんかいられない。
このまま、推理が進まずに終わらせられたら・・・。
肌に鳥肌が立つのを感じる。
「殴打ですか。」
すん、と済ました声が後ろから聞こえてきた。
そこにはCさんの姿が。
「入るな、と言っただろ。」
Cさんの姿を確認した先輩は、眉をひそめた。
「なんで入っちゃいけないんですか?」
「捜査の進み具合を知られるのは厄介だ。情報一つ漏らしてはいけない。」
と、先輩。
「それは犯人『だった』場合でしょう?なら、私は犯人ではないので入ってもいいでしょう?」
小さな子供みたいな屁理屈を言うCさん。
そう言う事じゃないんだってば!
とついつい、叫びそうになってしまった。
「で、殴打というのは?」
「頭を見ればわかるでしょう。」
Cさんは倒れているAさんの頭を指差した。
マネキンの頭部は、何かで殴られたようにボコボコに凹んでいた。
特に大きな凹みの周りに、中小の凹み。
「もう気づいている。」
先輩は、もう気づいていたようだ。
・・・私は気づけなかったけど!
「で、早く出てくれないかな?C。」
いなりくんはわかりやすく不機嫌な顔をする。
「ええ、出ますよ?」
思っていたより素直に、Cさんはドアの前まで歩いていく。
少し戸を開けたところで、Cさんは足と手を止めた。
「・・・なんだ?出ていくんじゃないのか?」
そのひそめた眉を、さらにひそめる先輩。
「これだけ言ってからにします。」
首だけこちらを向くCさん。
不気味に、首だけがフクロウのように180度回転している。
とても怖い光景だ。
マネキンだからできること・・・だろう。
隣のいなりくんが、息を呑んだのがわかる。
「Gさんの死因は、刺殺です。」
「え・・・!」
私は目を見開いた。
バタン
ドアの閉まる音だけが響き、部屋は静寂に包まれた。
先輩は一瞬、Cさんを追いかけようとした。
けど、地面に目をやった途端、追いかけるのをやめた。
視線の方を見ると、角が丸くなった本。
表紙がぐちゃぐちゃだ。
「これで、殴ったみたいだね。」
いなりくんはその本を指差す。
表紙には英語で『I regret it. Everything in life.』と、タイトルらしきものが書かれている。
「なんて書いてるんでしょうね・・・。」
「英語で、『悔いだ。人生の全てが。』と書かれている。」
先輩は、私にそう教えてくれた。
しゃがんで、本の隅々まで観察した後。
「とりあえず、」
先輩は立ち上がった。
「話を聞くしかないな。」
その言葉に、私といなりくんは同時に頷いた。
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「ちょっ!なんであたしが連れてこられなきゃいけないの!」
半無理やり・・・いや、無理やりいなりくんに連れてこられたBさんはそうボヤいた。
まあ、無理もない。
いなりくんはBさんの腕を握って離さなかった。
・・・いや、離れなかった。
そんなBさんを哀れな目で見つめる先輩。
「全員、揃いましたね・・・。」
「ちょっと待て。」
私の声に被せるように、Hさんの声が広がった。
「俺は警察だ。捜査対象から外れてもいいんじゃないか。」
少し間をおいた後、『まあ、ダメでもしょうがないが』と付け加えた。
「無理です。警察、と言う嘘をついた犯人という事も考えられます。」
先輩はそう言って、Hさんの言葉をバッサリと切る。
「で、何をしていたの?あ、A・・・じゃなくてBから何をしていたか教えてくれる?」
いなりくんはBさんの顔に人差し指を突きつける。
「私は、寝ていたわ。ほら、寝不足はブサイクの始まりじゃない〜?」
「こういう時、『寝ていた』だけでいい。最後の方は悪口だ。」
前の土曜日、午前1時に寝た私としては耳が痛い・・・!
「私は、部屋に置いていた本を読んでいましたね。」
「その時、怪しい物音とか悲鳴は聞いていないか?」
「さあ・・・。集中していたんでね。」
集中しすぎるなよ!!と、心の中で突っ込む。
「後、昨日の晩はすごかったですよ?」
「すごかったって・・・何がですか?」
「風ですよ。窓がガタガタとなって・・・まあ、あの音なら若干の音は聞こえないでしょうしね。」
「風の音を聞いた人は他にいるか?」
「あ、私が聞きました。」
そこで手を挙げたのはFさん。
「料理用に水を汲みに行った時、すごい風だったわ。なんとか水は運べたけど。」
「なら、風は本当、という事なのか・・・。」
腕をくむHさん。
その醸し出すオーラは、間違いなく本物の警察官だ。
ただ・・・犯人だったら?
でもきっと、犯人はこんな風格出せるわけない!
「俺は・・・。」
そこで口ごもるDさん。
「なんだ?早く言え。」
先輩の目が、一気に『犯人を見る目』に変わる。
「疑われたくないから、言いたくないんだが・・・。みんなが寝静まった後、俺は、Aと会っていた。」
その言葉に、その場の全員が驚いた。
「Aさんと最後に会った人物、ってこと?」
いなりくんはDさんに尋ねる。
「ああ。多分、だがな。」
「で?殺したんですか?」
「C、口を挟むな。」
先輩はCさんを一睨み。
先輩が出す雰囲気も、Hさんとは少し違うけど『警察』のオーラだ。
その風格に、Cさんは何も言い返せなくなる。
そこで思い出した。
前、先輩はCさんと揉めた時・・・ちょっぴり不利、だったよね?
確かそこを、Hさんが止めてくれたはず。
今の光景をもう一度思い出す。
・・・警察、だ。
先輩の本気がひしひしと伝わってくる。
いつか、知りたいな。
いなりくんの秘密も、先輩が警察になった理由も。
「俺は、Aと会った時に話したことは職業についてだけだ。」
「なんで、そんな話を?」
Hさんがそういった。
「アイドル、って言っていただろ?心配だったんだよ。食っていけるのか。娘も、アイドルだったんだが・・・。」
そこで、Dさんは口を止めた。
一瞬だけ、その場の空気が変わった。
「ダンスも歌も下手、ということですぐに終わっちまったよ。」
・・・あの、一瞬の空気。
似たような空気を吸ったことがあるな、と思ったら親戚のお葬式の時だ。
人が死んでしまった時特有の、あの空気。
不気味さを感じるほど、しんとした。
そして、なぜか何よりも澄んだ空気。
だけど・・・『終わった』なら、きっとやめたっていうことだね。
・・・そういうことに、しておこう。
「そうなのか。風には気づかなかったのか?」
「ああ、なんだか不気味な音がしていたよ。ヒューヒュー、とね。」
「風の音だろ。」
先輩はそう言って、次のEさんに話を聞く。
「私は自室に戻ってレシピを書いていたわ。」
「レシピ・・・?」
いなりくんが首を傾げた。
「ああ、この屋敷が終わるまで、私が料理を作ろうと思っていたのよ。」
「そのレシピ、確認させてもらえないか。」
「いいわよ、ちょっと待ってね。」
Fさんは少し席を外すと、すぐに戻ってきた。
「汚い字だけど・・。」
少し恥ずかしがりながら、レシピを私に渡してくれる。
「おおう・・・。」
『汚い字』とはどんな字だ?
と、私は一瞬汚い字というものを忘れてしまった。
そう、レシピに書かれた字はすごく綺麗だったのだ。
そして、ポイントや要点などをきっかりとまとめている。
「これは、Aを殺した後には・・・書けないな。D、他に人が起きている気配はなかったか?」
「いや、なかった。」
と、Dさん。
「ならFさんは候補から外れて良くない?」
「いや、まだ断定はできない。」
そこで声を出したのはHさん。
「Dさんが、今のところ一番怪しい、と俺は踏んでいる。」
その言葉にDさんは俯く。
「だが、まだわからない。」
「『証拠』が見つかるまで捜索。それが、警察の仕事だからな。」
Hさんは先輩をチラリ、と見ると。
『いいこと言うじゃねえか。』
とほめた。
Eさんも、Hさんも、あの夜は寝ていたようだ。
「Dにはみんな気を張っておけ。」
先輩はいつも以上に重い声色でそう告げた。
「・・・怪しまれているのは、わかっていますよ。」
悲しそうな、悔しそうな声でDさんはそう言った。
そして、その場はそれで解散となった。
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「うーん、お腹、減らないなあ・・・。」
びよーん、と背伸びをする。
夜ご飯は食べないかな、いや、やっぱり食べようかな・・・?
「そうだ!」
いなりくんに聞いてみればいい!
いなりくんが食べるんだったら食べることにしよう!
「いなりくーん?」
「・・・なんだ?」
「ご飯、食べる?お腹減ってない?」
「・・・なんでそれを今。」
「いや、Fさんが作ってくれているけど・・お腹減っていないし。」
いつもより声が低い。
そして、威圧感がある。
いつもの能天気ないなりくんの声とは、全く違う!!!!
少し怖くなり、後退りをする。
・・・どうしちゃったの、いなりくん!
すると、急にドアが開いた。
そして、私はそのドアから伸びてきた手で腕を掴まれると、部屋の中へ引き摺り込まれた。
「いなりくん!?」
右手に剣を握ったいなりくんは、何やら様子がおかしい。
一瞬、返送した犯人がいなりくんに変装して悪いことを企んでいるのかと思った。
でも、違う。
いなりくんだ。紛れもなく、いなりくんだ。
「いなりくん、どうしちゃったの?私だよ、桜だよ!」
気持ちを盛り上げようと、明るい声で言う。
しかし、いなりくんの様子は一切変わらない。
すると。
がんっ
私の横に、何かが通った。
恐る恐る、『それ』を見ると、それは銀色に光る刃だった。
こんにちわ( ; ; )みりぐらむです。
最近忙しく、投稿がバチクソに遅れております・・・。
なので!
毎週土曜日に投稿することにしようと思います!!
流石に一週間に一度は投稿できるはずです!!
がんばります!!
さて、話を変えましょう。
今回、どうでしたか?
最後、いなりが豹変してしまいます。
書いていて、めっっちゃゾクゾクしました!
ちなみに、第三の犠牲者とはいなりのことです。
記憶が混乱しているいなりは、桜に何をしちゃうんでしょうね!
面白い、と思っていただけたらブクマ・評価・感想お願いします!
また次話でお会いしましょう!




