桜の好きな雰囲気
いなりと蓮華は体調を崩してしまう。
どうしようもない寂しさを感じていた桜。
そんな桜を救ったのは、まさかのF。
平和が訪れた、と思っていたら・・・!?
第31話・・・開幕。
「・・・。」
肩に疲労と、あまり良くない気分を乗せながらベットに顔を埋める。
とてつもなく疲れた。
先輩は、戻っていくにつれて顔色が良くなっていった。
けど、完全復帰という訳には行かなかったみたい。
いなりくんはベッドの上。
私が倒れた時と同じように、いなりくんをベッドに寝かせた。
「・・・どうしたら。」
そう呟いた途端、なんだか体の感覚が戻ってきたような気がする。
喉が渇いた。やけにお腹がすいた。
「Gさんいないし、どうしよう・・・。」
台所に行ったら何かわかるかも、と思ってベッドから立ち上がる。
掛け布団もシーツもぐしゃぐしゃなのは見ていないことにして、部屋から出る。
一回に降りるついでに、先輩の部屋をノックする。
「先輩?桜です。」
「佐倉さん。狐は?」
「・・・まだ、眠っています。」
「そうか・・・。」
「先輩、お腹すきません?よければ、一緒に台所見に行きませんか?」
ご飯を食べたら多分、元気が出る・・・はず!
「・・・空いていない。」
少し間を置いてから帰ってきたのは、そんな返事だった。
「そうですか・・・。」
もう一回誘おうとした。
けど、なんだかそれを声にできない自分がいた。
とりあえず・・・台所に行こう。
そう思って、一階へ降りて台所行きの廊下へ向かった。
1人で歩く道は、なんだかすごく寂しかった。
「えーーっと・・・ここ、右だっけ?」
分かれ道で少し迷う。
先輩が覚えてくれたから、いなりくんが励ましてくれたから今まで成り立ってきたんだな、と感じる。
「あら、桜ちゃん?」
後ろからのんびりとした声が聞こえてきた。
警戒する必要ないのに、警戒をしながらすぐに振り返る。
やっぱり・・・Fさんだ。
「Fさん。」
「こんにちは、桜ちゃん。」
Fさんの手元を見ると、たくさんの水を組んだ桶を持っていた。
「なんですか、それ。」
「これ?料理に使うのよ〜。」
その言葉に、一瞬耳を疑った。
・・・料理!?
「Gさんが、死んじゃったから・・・ですか?」
「ええ。私が作らないと、ダメな気がして・・・お腹減ったしね。」
うふふ、と笑うFさん。
「てっ・・・手伝います!」
「あら、いいのよ?」
考えてもないことが口から出た。
お手伝い・・・いつぶりかな?
なぜか『めんどくさい』という気持ちはない。
心のどこかで、手伝いたい自分がいたんだろうな。
「手伝わせてください!」
この言葉は口任せに言っていない。
本心から出た・・・言葉、だ。
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私はFさんが謎に持っていたエプロンをつけた。
偶然なことに桜柄だ。
「桜ちゃんには、桜が似合うわねえ。」
「自分ではそう思わないんですけど・・・。」
春の代表とも言える花、桜。
なんで自分の名前が『さ』と『く』と『ら』だけでできているのかが不思議。
・・・不釣り合い。
「髪の色だって、綺麗じゃない。」
「・・・これですか。」
自分の髪を一房手にとる。
昔、私の家は外国人の家系だった・・・・・・らしい。
そのうち、だんだん日本人が多くなってきた。
それの隔世遺伝で、ほんの少しだけど髪の毛が赤がかっている。
「綺麗だわ・・・。」
「ただの隔世遺伝です。」
「そんな現実的なこと言わないの!よし!作るよ!」
と、チェック柄のエプロンひもをギュッと結んでやる気を出すFさん。
その背中を見て、なんだか元気が出た。
「・・・手伝えることがあったら、なんでも言ってください。」
「わかったわ!」
今日、作るのは野菜炒め。
「あら、こんな風になっているのね・・・。」
「昨日、Gさんが作っているところを見ました。すごいですよね。」
「胡椒とか、ペッパーミルだし・・・。」
棚に置いてある、ずらっと並んだ調味料のうち、一つを手に取るFさん。
昨日、詳しく見れなかったから新発見が盛りだくさんだ。
「よし!適当で行くわよ!」
腕まくり・・・服ないけど、腕まくりをするFさん。
「はい!」
自分を奮い立たせるために、普段よりも大きく返事をした。
そしたら、なんだか元気が出てきた。
___________________________________________________「つっ・・・・疲れた〜!」
エプロンを脱ぎ捨て、再びベッドに顔を埋める。
さっきとは違う、身体的な疲れが体を襲ってくる。
料理でこんなに疲れるなんて聞いてないよ!
といっても、料理で疲れたわけではない。
料理中にやってしまった、こぼれた小麦粉の掃除に疲れたのだ。
料理はほとんどしていない。
・・・あのやる気はなんだったんだよ〜!
いや、自分から掃除をやるって言ったよ?
だけどあんなに落ちないなんて・・・!
床の隙間に入り込んだ粉を恨む。
もうパンが食べれなくなってしまいそう・・・。
「先輩、お腹減ったかな・・・?」
お腹が減らない、ということは・・・やっぱり何か具合が悪いのかな?
そう思ってると、部屋のドアがかすかに動いた。
こん、こんとノックされる。
「先輩!?」
「俺!俺いなり!」
先輩のことを考えていたからか、先輩の名が口から飛び出た。
「入っていいよ?」
ガラッとドアが開く。
わずかに開いた隙間から、黄土色の尻尾が顔を覗かせている。
さらにドアが開くと、今度は顔が見えた。
「いなりくん、体調は?」
「うん。まだ、耳は悪いけどね・・・。」
いなりくんは自分の狐耳を指差す。
「そっちで聞こえてんの!?」
いなりくんには、2組の耳がある。
人間の耳と、狐耳。
「いや、どっちも聞こえる。だけど、普通よりは聞こえやすいかも。狐耳があった方が。」
やっぱり、あの日和という男の子はいなりくんなんだと思う。
今の言葉を聞くに、いなりくんには元々『狐耳』がなかった。
「そうか・・・。」
「ん?なんか言った?」
「なんでもない。というか、急にどうしたの?体調、完璧に戻っていないならまだ大人しくしといたら?」
「その・・・ありがとな。」
「うん。お互い様だよ!前、運んでくれたでしょ?」
「運んだのは蓮華!」
「ああ、そっか・・・。でも、ありがとうね!」
いなりくんは私の言葉を聞くと、満足そうに笑った。
「耳、また聞こえないようにならないでよ?」
「おっけおっけ!あ、蓮華は?」
「先輩は部屋にいる。先輩もなんだか体調が悪いみたい。」
「そう・・・。」
すると、またまたドアがノックされた。
「はい、桜です。」
「入ってもいいか?」
ハッとした。
先輩の声だ。
体調が戻ったなら・・・状況はいい方に向いている!
「いいですよ!」
ドアが開く。
先輩は、部屋の中に入ってくると真っ先にいなりくんの目を覗き込んだ。
「ちょっ・・・先輩!?」
「なんだよ、蓮華。」
「俺の名前、わかるか?」
「天羽蓮華!」
「ハッカーといえば?」
「ウルフ!」
「殺し屋は?」
「うるる!本名壬生 朱音!」
次々と質問を投げかけていく先輩。
「な、何をしていたんですか・・・?」
一通りの質問が終わったところで私は先輩に声をかけた。
いなりくんはげっそりとしている。
最後の方には、いなりくんに『自分が誰だかわかるか?』と聞いていた。
「耳が聞こえないのは脳に障害が起きている可能性が高い。記憶に障害があったらまずいからな。」
「俺は自分が誰だかわかるから!」
いなりくんは迷惑そうな顔をする。
けど・・・いなりくん、『幸』って言ってたよね・・・。
過去の記憶が表に出て来ていたのかな、あの時。
「俺は大丈夫だから!」
「そうか・・・。」
「あ、先輩も体調はどうですか?お腹空きましたか?」
「・・・腹は減ったが、何か食べるものがあるのか?」
「あります!」
私の勢いにいなりくんが少しだけ後ろに下がる。
「じ、G死んじゃったけど?」
「Fさんが作ってくれました!」
「へ〜。ちなみに何?」
「野菜炒め!」
「ほほう、蓮華の反応が楽しみだねぇ。」
いなりくんは先輩の隣へ移動すると、人差し指で先輩の頬をつっつく。
「野菜くらいは食べれ・・・。」
そこまで言ったところで、先輩の声が止まった。
「先輩、もしかして・・・。」
「・・・人参が無理だったこと忘れてた。」
その言葉にいなりくんが大笑いする。
下手にいなりくんのことを叩けなくなった先輩は、苦虫を噛み潰したかのような顔をする。
「いなりくん、煽らない!」
「狐、だまれ。」
今にも先輩はいなりくんに殴りかかっちゃいそうな勢いだ。
「ほらほら!下に行こ!」
なんとか笑ういなりくんを落ち着かせ、先輩の背中を押す。
いつもの雰囲気が戻ってきた。
その感じに、私は喜びを隠せないでいた。
この時の私はまだ気づいていなかった。
いなりくんの体調は、まだ全然優れていなかったことを・・・。
ここまで読んでくれてありがとうございます!
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